同窓会
活発な対話が絶えなかった日本同窓会ウェビナー─メンター制度が日本でのキャリアを後押し
JSTおよびさくらサイエンスクラブ(SSC)事務局は、140名を超える世界各地の参加者をウェビナーにお迎えできたことを深く感謝するとともにこのオンラインイベントを円滑に遂行できた日本同窓会幹事の皆様に心よりお祝い申し上げます。”From Exchange to Engagement─Beyond Sakura Science Program: Exploring Higher Studies and Career Opportunities in Japan” (交流から本格的なつながりへ─さくらサイエンスプログラム後の日本での高等教育・キャリア機会の探求」では、40分にわたる質疑応答セッションを実施し、イベントの主催者である幹事らは多くの質問に丁寧に応対しました。これまでで最もインタラクティブなセッションの一つとなり、アンケート回答者からも、「今後も同様のセッションを開催してほしい」という要望が多数寄せられました。
ウェビナーの冒頭でさくらサイエンスプログラム推進本部 伊藤宗太郎副本部長は、JSTが2014年以降、さくらサイエンスプログラム(SSP)を通じて4万3000名を超える有望な若者を日本に招へいしてきたこと、そしてSSPの全参加者がSSPの同窓会組織であるさくらサイエンスクラブ(SSC)の一員であることを強調しました。SSCは、同窓生同士のネットワーク構築を促進するプラットフォームで、同窓生の能力開発に寄与するよう努めています。伊藤副本部長は、「このイベントが日本で将来を築きたいと願うすべての参加者にとって、新たな一歩となることを願っています」と聴衆に呼びかけました。
伊藤宗太郎副本部長
伊藤副本部長の挨拶後、さくらサイエンスクラブ日本同窓会(SSC Japan)の幹事が自己紹介を行い、インド出身のデュティ博士(SSC日本同窓会幹事長、山口大学助教)が最初に登壇しました。Dyuti博士に続き、バングラデシュ出身のNusratさん(SSC日本同窓会副幹事長、大阪大学博士課程)、インドネシア出身のNicoさん(SSC日本同窓会副幹事長、OIST博士課程)、ミャンマー出身のMayさん(大阪大学PhD. Candidate)、ベトナム出身のHaさん(半導体R&Dエンジニア)、インド出身のRahulさん(楽天モバイル サステナビリティ・ストラテジスト)、ミャンマー出身のJuさん(京都大学、同大助教・PhD. Candidate)、インド出身のSahilさん(Review inc. CTO)、中国出身のHuang Weiさん(広島大学博士課程)、そしてベトナム出身のPham Ha Trangさん(早稲田大学 修士課程)が自己紹介を行いました。
Nicoさんがモデレーターを務めた最初のセッションでは、日本を拠点とするメンターがメールを通じて個別相談を行う「さくらメンター制度」についての説明がありました。メンターのチームはSSP同窓生から成り立っており、交流プログラム後に留学、研究、または仕事のために再来日したメンバーで構成されています。同窓生は登録フォームからメンターに相談を申し込むことができます。日本留学全般、研究、仕事、大学の研究文化、就職活動、日常生活など多岐にわたるトピックについて相談を受け付けています。現在、さまざまな国から再来日している8名のメンターが活躍しており、彼らの多様なプロフィールはSSCの公式サイトのメンター専用ページに掲載されています。
三名の同窓生が日本との関わりについて発表したセッションではRahul Marojuさんが司会を務めました。ベトナムで同窓会幹事を務めていたPham Ha Trangさん(2021年SSPに参加)は、どんな機会も過小評価せず、また自分は十分ではないと最初から諦めて挫折しないようにと聴衆を励ましました。「挑戦すれば、チャンスは五分五分です。しかし、すぐに諦めてしまえば、チャンスはゼロです」と、ためらわずに挑戦することの大切さを強調しました。Pham Ha Trangさんは大学四年在学中、卒論の執筆と並行して文部科学省国費外国人留学生制度の奨学金取得に向けた煩雑な準備を重ね、早稲田大学修士課程への道を勝ち取りました。
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Mr. Rahul -
Ms. Pham Ha Trang
現在、京都大学の助教であるJu Yoon Hnin Boさん(PhD. Candidate、2019年SSPに参加)は、競争率の高い文部科学省国費生制度の修士課程学生として採用され、2020年にミャンマーから日本に戻ってきました。研究室での研究環境と支援体制が彼女の再来日を後押ししました。博士課程後期在学中には、同大学の自由電子レーザー(KU-FEL)施設で助教としてのポストを得ることができました。KU-FELは最も広いチューニング範囲を誇り、国内外の研究者が利用しています。Juさんは光学系・検出系システムの運用・保守を担当し、多様なセッティングのサポートを行っています。施設に来訪する研究プロジェクトごとに固有の技術的課題が生じるため、日々柔軟性と問題解決能力が求められる、と強調しました。研究を行うにあたって日本語は全く不要でしたが、これから留学を考えている人には「来日前までに日常生活のため初級~中級レベルの日本語習得が望ましい」と勧めました。
同郷の文部科学省国費留学生であるMay Myat Noeさん(PhD. Candidate、2015年SSPに参加)は、2020年に大阪大学で修士課程を修了し、博士課程に進学しました。Mayさんは研究と就職活動のバランスを取りながら、非常にタイトなスケジュールで双方を両立しなければならなかった当時を振り返りました。日本の「構造化された就職活動システム」の例として、エントリーシートや企業ごとに書き替えなければならない履歴書、SPIテストといった特徴を紹介しました。Mayさんは、幅広く複数の企業に応募することを勧めました。就活フェアやインターンシップに参加することで、視野が広がると語りました。現在の仕事は研究室の同僚や先輩を通じて見つけたため、自身のネットワークを活用することもひとつの方法であると指摘しました。インターンシップに参加することが、本選考への近道になることもあるそうです。英語での面接も選択可能ですが、「強い印象を残すには、会話ができるレベルの日本語力があると良い」と聴衆にアドバイスしました。
最後、Nusratさんが司会を務めた質疑応答セッションでは、幹事全員が聴衆からの様々な質問に答えました。質問は、日本におけるポスドクの機会、必要な日本語レベル、奨学金の種類、学術界と産業界でのキャリア開拓機会、日本企業の採用基準などに集中しました。40分間の活発な質疑応答の後、Nusratさんは参加者全員に感謝の意を表し、さらにアドバイスが必要な場合は、最初のセッションで取り上げた「さくらメンター制度」のフォームを通じて問い合わせができることを同窓生に周知しました。
