同窓会
イベントテーマ「未来の私たち」のもとでベトナム同窓生が前向きな展望を共有
2023年5月27日、Hanoi Daewoo Hotelにて、第三回さくらサイエンスクラブ ベトナム同窓会(SSCV)「Future Us─Motivation and Development未来の私たち─モチベーションと発展」が開催されました。 ベトナム同窓会(SSCV)と科学技術振興機構(JST)共催のもと、会場には77名の参加者が集まりました。 このイベントは、ベトナム、日本、そして世界に広がり築かれている数多くの絆を浮き彫りにしました。 その過程で、さくらサイエンスプログラム (SSP) が交流の手段として重要な役割を果たし、高等教育のさまざまな側面でコラボレーションの加速に貢献してきたことが明らかになりました。 さらに、このイベントに参加した幹事や同窓生メンバーが、未来に変革をもたらす潜在的高度人材であることがわかりました。 このイベントでは、日越大学(JVU)に在籍するベトナム同窓会幹事のMs. Mai Ngan GiangとMr. Vu Nguyen Quang Duyが共同司会を務めました。
第一部 開会・基調講演
さくらサイエンスクラブ ベトナム同窓会(SSCV)のLam Quoc Hiep幹事長が開会の言葉を述べ、ベトナム同窓会の歴史を振り返りました。 初の同窓会は2019年3月にハノイで、第二回目は新型コロナウイルス感染症のため2021年9月にオンラインで開催されました。 Lam Quoc Hiep幹事長は、「未来の私たち─モチベーションと発展」という前向きなイベントテーマを通じて、参加者に将来への野心を持ち、進歩と発展にどのように貢献できるかを考えるよう促しました。 こういった機会を当然のことと思わず、「この機会を利用して己を刷新し、明るい展望のある未来を楽しみにしてほしい」と同窓生に呼びかけました。
会の共催者である科学技術振興機構(JST)からは、さくらサイエンスプログラム推進本部 伊藤宗太郎副本部長が来賓や同窓生を温かく歓迎し、2014年に誕生したSSPの功績を振り返りました。 JSTは世界各地から36,000人の若者を招待し、そのうちベトナムからは2,600人以上の才能ある参加者が日本を訪れています。 伊藤氏は、母国内外で貴重なネットワークを構築する全同窓会グループの自主的活動を賞賛し、クラブのメンバーが日本とのつながりを維持できるよう、ベトナム同窓会を末永く支援していくことを約束しました。
追って、ベトナム語の挨拶で始まるビデオメッセージで日越友好議員連盟事務局次長 武部新衆議院議員が祝辞を述べました。 同氏はまず、両国の外交関係樹立50周年に言及し、特に若者の間での人的交流の重要性を強調し、SSP が提供してきた機会を称賛しました。 同氏は、これらの交流が「両国国民間の相互理解と親善を育んでいる」との明るい見通しを示しました。
在ベトナム日本大使館広報文化センター所長の神谷直子氏は、オンライン会議から一転、同窓生の皆さんと直接対面できるのがたいへん嬉しいと感激の言葉を述べました。 ベトナム政府は「科学・技術・イノベーションを持続可能な発展の原動力として最も重要な政策の一つに掲げている」ため、同窓生がこれらの分野において今後主導的な役割を果たしていくであろう、との期待を表明しました。 最後に、神谷氏は SSP とその同窓生ネットワークであるさくらサイエンスクラブ (SSC) の継続的な発展を祈念しました。
神谷氏のスピーチに続いて、来賓やコーディネーターがステージに招待され、記念撮影が行われました。
「ベトナムの高等教育における日本の貢献」と題した基調講演で、日越大学(VJU)の古田元夫学長は、2009年の設立から2016年の開校までの歩みを詳しく説明し、その成長、挑戦、基本理念、目標、将来計画について語り、同大が「アジアにおけるサステナビリティ・サイエンスの有力な研究大学」となること、そして「ベトナムと日本の友好関係に貢献する人材育成」に専念していることを強調しました。
日越大学は現在、環境工学、ナノテクノロジー、社会基盤、気候変動・開発をはじめとする8種の修士課程プログラムを開講、学士課程では日本学、コンピュータサイエンス、スマート農業とサステナビリティ、シビルエンジニアリング、食品工学と健康、メカトロニクスと日本のものづくり、の6学部を擁しています。
次に古田学長は、20世紀半ばに壊滅的な環境災害を体験した水俣市との協力協定について語りました。 2017年に水俣環境アカデミア研究推進プロジェクトの責任者らが日越大学を訪れた後、同大公共政策プログラムの大学院生が研修生として水俣市に受け入れられました。 この研修プログラムは2018年以降継続され、SSPのもと、2020年には日越大学と水俣高校の間でオンライン交流が実施されました。
日越大学の学生は水俣の歴史と復興への取り組みから学ぶまたとない機会を得ることができました。 学生は、環境災害を克服するための市の取り組み、生態系の働き、水俣湾を活性化するための現在の取り組みを学ぶことで、貴重な洞察を得ることができました。 古田学長は、日本とベトナムの継続的交流を促進する上でさくらサイエンスクラブと同窓生の重要性を強調して話を締めくくりました。
基調講演の後は、日本学生支援機構(JASSO)ベトナム事務所のMs. Vu Minh Hanhが「日本での大学院留学」について詳しいプレゼンテーションを行いました。大学院に受け入れられるためには「指導教員」教授を見つけることが最優先事項であるとMs. Vu Minh Hanhは強調し、直接の連絡、大学院の公式サイト、学術フォーラム、さらには大使館を経由するルートなど、指導教員を探し当てるための手法を提案しました。研究計画を作成し、未来の指導教官となる先生に自分が何を成し遂げたいか、を伝えることが不可欠であることを強調しました。
奨学金の機会に関しMs. Vu Minh Hanhは権威ある文部科学省国費外国人留学制度とJASSO奨学金を紹介し、JASSOが運営する公式ウェブサイトstudyinjapan.go.jpを参加者に提示しました。
続いて、大阪大学接合科学研究所の勝又美穂子准教授が、2014年以来阪大で113人のベトナム人学生の学習を支援してきたSSPへの感謝の意を表しました。
勝又氏は、商人のための学校である懐徳堂とオランダに本拠を置く医学校である適塾に根ざした大阪大学の歴史的ルーツを紹介。日本の九帝大のひとつとして発展し、その後2007年に大阪外国語大学と合併した経緯を解説しました。
大阪北側に位置する 3つのキャンパスには、11 の学部、15 の研究科、25 の研究施設、および大学病院が2院あり、約23,000人の在籍学生のうち留学生が10パーセント以上を占めています。
続いて勝又氏は英語で学べる大学院プログラムの概要について説明しました。日本で大学院を目指す人は、まず志望する研究室・指導教員を特定することが重要であると述べました。大学側はアドミッション支援デスクを用意しており、留学生が指導を受けたいと思う教員へのコンタクトをサポートしています。出願の少なくとも 半年から一年前までに、早めに進めて行くことが重要とのアドバイスがありました。
また、勝又氏はご自身の所属研究所でもある接合科学研究所(JWRI)についても詳細を共有しました。JWRIは、接合と溶接の分野のみに焦点を当てた日本唯一、世界屈指の機関で、材料試験のための最先端設備が備えられています。 JWRIは先頃、ハノイ科学技術大学内にも共同研究拠点を設立し、勝又氏は研究活動がベトナムをはじめASEAN地域にも発展していく見通しがあることを示しました。 勝又氏自身もこちらに所属しており、興味を持った同窓生の訪問を歓迎します、と声をかけてくださいました。
参考
https://ssp.jst.go.jp/report/2014/s_vol12.html
第二部 「同窓生によるシェアリング・セッション」
ティーブレイクの直後には、新ベトナム同窓会幹事の一人、Ms. Minh Hang Duongが登壇し、科学技術の進歩に対するJSTの並外れた貢献に感謝の意を表しました。Ms. Minh Hang Duongはまた、現幹事団が初代幹事団による今までの努力に対して深く感謝していることを強調しました。 Ms. Minh Hang Duongは聴衆を見渡し、将来の幹事候補となり得るエネルギッシュな同窓生が数多く参加していることに注目しました。そして、このような同窓会イベントが幹事団に加わるきっかけとなることに期待を寄せました。
クイズ・セッション
その後、新幹事団は参加者が楽しめるクイズ大会を主催しました。 参加者はスマートフォンでQuizizz.comにログインし、10の問題にチャレンジしました。質問は、日本文化、日越間の歴史トリビア、両国の時差、さくらサイエンスプログラムについての豆知識(「SSPに参加できる最高年齢は何歳ですか?」等)まで多岐にわたりました。最後に幹事団は、参加者に「ベトナム同窓会の会員数は現在何人ですか?」と尋ね、数学的なヒント12𝑥22𝑥112𝑥5が供されました。 参加者は時間切れになる直前まで回答を競い合って計算しました。 スコアが集計され、最高スコアを獲得した 5 人の参加者がステージ上に呼ばれ、賞品を受け取りました。
フォトコンテストの結果発表
クイズ・セッションに続いては、同窓会イベントの一環として開催されたフォトコンテストの受賞者発表が行われました。 JSTさくらサイエンスプログラム推進本部プログラムコーディネーター石原麻里氏が受賞者の名を読み上げました。合計32の応募作品があり、その中からMs. Nguyen Trang Tran; Ms. Ngat Duong; Mr. Quang Duong Minh; Ms. Truc Pham Ngoc Thanh and Mr. Luu Gia Hyの5作品が優秀賞として選ばれました。受賞者は壇上に招かれ、伊藤副本部長から賞品を授与されました。 今回は会場に来られなかったMr. Luu Gia Hyには賞状と賞品を郵送しました。 すべての写真が掲載されているメモリアルビデオはこちらからご覧いただけます。
特別ゲスト講演者
元SSPプログラムコーディネーターでJST調査員でもあるDr. Pham Thi Nuは、日本で学び、働いた経験のある元留学生として、日本での経験について語ってくださいました。 自分の人生の旅を思い出しながら、はじめにアジアユースフェローシップ(AYF)について言及しました。これは、学生が日本で学ぶための7か月集中プログラムです。毎日午前9時から午後4時まで日本語を勉強し、毎日60の進出単語を覚え、3か月という短い期間で初級と中級レベルを完了するという厳しいスケジュールでした。
フェローシップ修了後は横浜国立大学に進学し、物理学を専攻し、工学を学びました。 大野教授の指導の下、「京」プロジェクトに参加する機会に恵まれ、3人のお子さんを育てながら博士号を取得しました。
Dr. Pham Thi Nuはスピーチの締めくくりに、「学ぶ、働く、あるいは新たな経験を積むために日本という国を検討してみてはどうでしょうか」と同窓生に語り掛けました。 また、コミュニケーションをためらわず、失敗を恐れず、そして時間を最大限に活用するよう促しました。
「何度も失敗した後、個人的に失敗はひどいことではない、と気づきました。それは単なる経験です。失敗したとき、そこから多くのことを学ぶことができます。だから、失敗を恐れないでください。」とDr. Pham Thi Nuは同窓生を勇気づけました。
同窓生によるプレゼンテーション
最初の講演者は、日越大学(VJU)1年生のMs. Mai Ngan Giangで、さくらサイエンスプログラムと水俣市に関わる経験について簡単に紹介しました。 新型コロナウイルスのため、SSPのプログラム自体は当時オンラインで実施されましたが、それが問題になったことはありませんでした。持続可能な開発に情熱を注いでいるMs. Mai Ngan Giangにとって ベトナム同窓会との関わりは、大学生活が始まって初の活動であったため、彼女にとって特に重要な意味合いがあり、「私の心の中で非常に重要な位置を占めています」とのことでした。 またMs. Mai Ngan Giangはベトナム同窓会幹事として活動することに対する抱負と意気込みを熱く語りました。
2人目の講演者は、ホーチミン市経済大学3年生でベトナム同窓会新幹事長Mr. Lam Quoc Hiepでした。 Lam Quoc Hiep 幹事長は、SSPの元、金沢工業大学 (KIT) で 7 日間を過ごしました。 日本、ベトナム、インドネシア、シンガポールからの多様な学生グループに与えられた課題は「デザイン的思考」を活用して、パンデミック後の旅行会社の業績回復を支援する案を考えることでした。 四ヶ国の学生から成るグループで文化の違いに直面したLam Quoc Hiep幹事長でしたが金沢工業大学の親切な教員やスタッフとの交流の中で答えを導き出していく心地良さを体感しました。 スピーチの締めくくりに、Lam Quoc Hiep 幹事長はSSP が自身の成長の源になったことに気付き、その気持ちを同窓会イベントのメインテーマ「Motivation and Development」に反映させた、と述べました。SSPのような国際交流プログラムが個人の成長や多文化理解に大いに寄与していることがわかります。
最後に、ニンビン総合病院の IT エンジニアであるMr. Bui Namが、SSP を通じて日本で学んだ経験についてプレゼンテーションを行いました。 彼はまず、日本の医師と協力して小児口蓋裂の治療を行っている自身の職場であるニンビン総合病院について簡潔に紹介しました。この協力体制は新型コロナウイルスにより2020年に中断されてしまいましたが、すぐに再開される予定です。
SSPを通じMr. Bui Namは、インド、インドネシア、マレーシア、ネパール、ブータン、ベトナムなど、さまざまな国のメンバーと協力し、九州大学 TEMDEC 遠隔医療センターで最新の遠隔医療機器について学びました。 これには、遠隔医療システムの設置・設定、内視鏡検査における VR 技術の活用、各国医療専門家との電話会議実施に関する研修が含まれました。
学術活動に加え、広島平和記念資料館や宮島への訪問、郷土料理の作り方を学ぶといった文化活動にも取り組みました。
交流プログラムのインパクトを振り返りMr. Bui Namは英語スキルの向上からはじまり、日本のライフスタイルや仕事文化に触れることができたこと、環境保全や職業倫理に対する理解も深まったことなど、プラスの側面が多かったことを指摘しました。同氏は、このプログラムで得たスキルと知識をニンビン総合病院での業務に応用したいと述べ、機会のある若者にはぜひプログラムへの参加を強く勧める、と締めくくりました。
シェアリング・セッションの後、参加者全員と出席者は隣接する宴会場に移動し、ビュッフェ式の食事とカジュアルな交流を楽しみました。 伊藤副本部長からは閉会の挨拶があり、本イベントが「同窓生全員の絆を強める第一歩となる」と同窓生に呼び掛けました。事務局は新生ベトナム同窓会のさらなる発展を祈念し、同窓会にお越しくださった来賓・基調講演者の皆様、同窓会幹事、全ベトナム同窓生に深く感謝申し上げます。 イベント終了後のメンバーインタビューはこちらからご覧いただけます。