同窓会
台湾同窓会2026年夏季ワークショップ開催成果のご報告
このたび、さくらサイエンスクラブ事務局は台湾同窓会 幹事 許躍薾(YUE-ER HSU)氏より2026年9月5日に開催された夏季ワークショップに関するレポートを受け取りました。和やかな雰囲気の中、有用な発表や議論の場となりました。
さくらサイエンスクラブ台湾同窓会 2026年夏季ワークショップ
主催:さくらサイエンスクラブ台湾同窓会(TSSCA)
テーマ: 持続可能な未来の共創――地域での取り組みから世界の未来へ
開催日:2026年9月5日(土)
会場:国立台湾大学 メインキャンパス
座長:幹事長 宋蕙伶(Hui-Ling Sung)教授
第1セッションの開始に先立ち、TSSCA幹事である国立台湾大学の黃誌川教授と、幹事長である国立台湾師範大学の宋蕙伶教授より、開会の挨拶がありました。
今回の同窓会ワークショップのテーマ設定の背景には、近年、台湾政府がグリーン人材の育成を積極的に推進する中で、ESGがますます重要な課題として注目されていることがあります。そこで、環境および持続可能な発展の分野で活躍する専門家・研究者を招き、それぞれの研究成果や経験を共有していただく機会を設けました。
最初の講演では、金沢大学の落合伸也助教が、まずご自身が所属する金沢大学について紹介し、同大学の優れた研究力や学術的な特色について説明しました。
続いて落合助教は、「放射線は私たちの身の回りに広く存在している」という身近で分かりやすい話題から講演を始め、放射線の検出装置やその操作方法について実演を交えながら紹介しました。落合教授が自ら製作した検出器には参加者の関心が集まり、会場では大きな興味をもって説明を聞く様子が見られました。
さらに、微量の放射性物質が土壌中に取り込まれることを利用し、地下の土壌を層ごとに採取して放射線量の変化を調べることで、その土地の過去の環境状況を推測することができると説明しました。また、土壌中に含まれる微細な磁性粒子の配列方向を観察することで、河川の流れやその起源となる方向を明らかにする研究についても紹介しました。
講演後の討論では、TSSCAの参加者から、こうした河川研究によって斜面の土壌侵食の状況をどのように把握できるのかといった質問が寄せられました。また、過去の地理的変化を明らかにするために、土壌中の成分を分析するさまざまな方法についても意見交換が行われました。その後、国立台湾大学の黄誌川教授から、台湾における河川研究の経験について紹介がありました。
午前のプログラムの最後には、参加者がスマートフォンを使って回答するクイズ大会を実施しました。出題内容は午前中の講演テーマと密接に関連しているだけでなく、SDGsに関するさまざまな要素も盛り込まれており、楽しみながら環境や持続可能な発展についての知識を共有する機会となりました。
第2セッションでは、「大小港辺、熱帯漁林」の呂佩芸運営長を講師に迎え、屏東地域で取り組んでいる地方創生について紹介いただきました。
「大小港辺、熱帯漁林」は、屏東県林辺郷崎峰村を拠点とする若者たちによって運営されている地域ブランドです。漁村にあった古い雑貨店を若者の起業拠点へと再生し、「海洋食育」や「漁村文化」をテーマに、南台湾ならではのゆったりとした地域の暮らしを体験できるさまざまなプログラムを企画しています。
活動は林辺郷だけにとどまらず、枋寮郷、琉球郷、東港鎮など周辺地域にも広がっています。これらの地域には豊富な海産物と長い歴史を持つ食文化がありますが、人口の高齢化や若者の流出が進む中、地域に残る高齢者が優れた調理技術を持っていても、伝統的な海鮮料理を現代の旅行者に親しみやすい形で伝えることが難しいという課題がありました。
また、若い世代にとって台湾の伝統的な「辦桌(バンドー)」文化が身近ではなくなっていることから、「大小港辺、熱帯漁林」では、漁船や港を見学し、漁業の現場を体験した後、旅の最後に辦桌形式の海鮮料理を味わう体験型の旅行プログラムを企画しました。
このプログラムの大きな特徴は、海産物が漁獲されてから食卓に並ぶまでの一連の過程を実際に体験しながら学べることです。普段はなかなか知る機会のない漁業や食文化の背景を、楽しみながら理解できる内容となっています。
また、地域で活動を続ける中で、大鵬湾周辺ではかつて大規模な牡蠣養殖が行われており、大量に廃棄される牡蠣殻が環境上の課題となっていたことにも着目しました。
そこで、これまでの体験型プログラムづくりの経験を生かし、牡蠣殻を再利用する新たな方法として、乾燥させた牡蠣殻に熱した蝋を流し込み、芯を入れて手作りキャンドルにする取り組みを開発しました。
この牡蠣殻の再利用にあたっては、制作工程を標準化・簡素化することで、指導に必要な人員や追加の材料をできるだけ抑え、継続しやすい仕組みを構築しています。今回のワークショップでも、この牡蠣殻を活用した工芸品づくりを実践活動として取り入れ、参加者が実際に体験しました。
プログラム最後のセッションでは、国立台湾大学を拠点に活動する陳裕文氏らのチームを招き、食品廃棄物を堆肥として再利用する取り組みについて紹介いただきました。
今回のTSSCAワークショップの会場が国立台湾大学であったことから、同大学のキャンパス内で実際に行われている食品廃棄物の堆肥化について、具体的な活動内容を共有していただきました。
同チームは、ジェーン・グドール博士が提唱する世界的な青少年行動プログラム「Roots & Shoots(根與芽)」の枠組みを取り入れて活動しています。
彼らが着目したのは、食品廃棄物が多く発生している一方で、土壌には有機肥料が必要とされているという二つの課題でした。そこで、食品廃棄物を堆肥化するプロセスと、できあがった堆肥を利用して植物を育てる活動を同じ場所で行う仕組みをつくり、二つの課題を同時に解決することを目指しています。
実践施設では、廃材を利用して自作した堆肥箱を使用し、温度や湿度を細かく管理しながら、有機肥料を効率よく生成するための最適な条件を検証しています。
プログラムの最後には、国立台湾大学キャンパス内にある堆肥施設を見学しました。参加者は、学生の食事後に出た食品残渣を実際に埋める作業や、堆肥の通気性を高めるために攪拌する作業を体験しました。堆肥を攪拌して空気を送り込むことは、堆肥化を促進するための重要な工程の一つです。
当日は小雨が降る天候でしたが、参加者は最後まで高い関心と意欲を持って、持続可能な発展や環境問題をテーマとした屋外実践活動に取り組みました。
文:さくらサイエンスクラブ台湾同窓会 幹事 許躍薾(YUE-ER HSU)
