同窓会

SSC同窓生向けSDGs ワークショップが盛況に終わる─インドネシア同窓会からの報告

2024年8月から9月にかけて、さくらサイエンスクラブインドネシア同窓会(SAAI)は、個別の世界的課題を取り上げ、ディスカッションを通じて解決策を編み出すシリーズ型オンライン・ワークショップを三回にわたって開催し、第三回、第四回、第五回、すべての回にて満席という実績を修めました。一連のワークショップには、二十か国以上にわたるさくらサイエンスプログラム(SSP)参加者のネットワークから数百人もの同窓生が国境を越えて参加登録し、学界、産業界、政策策定機関から迎えた専門家より洞察に満ちた学びを享受することができました。

ワークショップは二日連続で実施されるもので、第一日目に参加者は専門家の講義から学び、質疑応答の機会も得ます。初日の終わりには、主催者から翌日ディスカッションを行うトピックが提示されます。第二日目、参加者はFGD(フォーカス・グループ・ディスカッション)のために再びオンライン上集まり、指定されたグループに分かれます。グループ討議の後、各グループの代表者が結果発表を行い、講演者からフィードバックを得ます。二日目の終盤では、注目すべき発表を行ったグループが選ばれ、表彰されます。アットホームでありながら充実した議論を可能にするために、各ワークショップの参加枠は通常 60席 程度に制限されており、両日を通してプログラムに参加するとe-certificateを受け取ることができます。第一回目と第二回目のワークショップは2023年に実施されました。

<第三回SDGsワークショップ─2024年8月10日~11日開催>

テーマ:「公正なエネルギー移行─化石燃料の時代は終焉を迎えるのか?」

出典:SAAI Instagram

このワークショップでは異常気象の危機を踏まえ、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行という重要なテーマを取り上げました。300名を超える参加登録があり、国境を越えた同窓生のコミュニティから大きな反響がありました。

このイベントでは、二名の著名な講演者が登壇しました。北九州市立大学・大学院 国際環境工学研究科の松本亨教授は、公正なエネルギー移行の概念について講演しました。産業エコロジー国際学会(ISIE-International Society for Industrial Ecology)や日本のさまざまな環境団体のリーダーを担う松本教授は、再生可能エネルギーへの移行が社会と環境にもたらす利益について学術的な視点を紹介してくださいました。

二人目の講演者、JETP (Just Energy Transition Partnership) 事務局のMr. Sigfried Loohoは、インドネシアの大手エネルギー企業TBS Energiの政策担当役員でもあります。移行を支援するために必要な投資と政策の枠組みについて語ってくれました。同氏は、エネルギー目標を達成するための規制の革新と持続可能なファンディングの重要性を強調しました。

翌日のFGD討議セッションは非常にインタラクティブで、すべての人にとって公正なエネルギー移行を達成するためには国際協力が欠かせないという認識が参加者の間で共有されました。

発表内容に対しMr. Sigfried Loohoから激励のコメントがあった
Photo: SAAI
すべてのグループがベストプレゼンテーション賞を受賞
Photo: SAAI

<第 四回SDGsワークショップ─2024 年 8 月 24 日~25 日開催>

テーマ: 「レジリエントな保健システム─気候リスクと健康への公平なアクセス」

出典:SAAI Instagram

この回では、気候変動など世界的な危機や災害に直面しても公平な医療アクセスを確保できるシステムが必要であることが強調されました。二十か国以上から 250 名を超える参加登録があり、気候災害の影響に耐えうる保健システムの構築について議論が展開されました。

最初にResilience Development Initiative (RDI) の児童・社会福祉・保健 (CSWH) プログラム オフィサーである Ms. Debby Paramitasariは、耐久力のあるレジリエントな保健システムに関する専門知識を共有し、危機に直面した際の備えと協力の必要性を強調しました。公衆衛生、災害管理、労働衛生分野における同氏の現場経験から、災害時の備えが人々の健康と密接に関連していることが分かりました。

次に、JICA緒方貞子研究所にて客員研究員を務める坂元晴香氏は、気候変動・災害がもたらす課題に日本の医療制度がどのように適応しているかについて共有しました。坂元氏は気候による健康リスクの影響を不均衡に受けてしまう低所得国・中所得国が強靭で公平な医療制度を構築し、必要な資源や支援を確保していくためには、国際協力が重要であると述べました。 ワークショップでは、ベストプラクティスの共有、イノベーションの促進、世界的な状況に適応できる包括的な医療政策確保のためには国家間・地域間の協力が不可欠であるとの結論が導かれました。

質疑応答セッションに参加する坂元晴香氏、Ms. Debby Paramitasari、Mr. Dingili 、モデレーターMr. Kadek(左上より時計回り)
Photo: SAAI
Focus Group 1とFocus Group 4がベストプレゼンテーション賞を受賞
Photo: SAAI

<第 五回SDGsワークショップ─2024 年 9月 28 日~29 日開催>

テーマ: 「万人が享受できる教育のデジタル化: レジリエントな学習環境を目指すグローバル・イノベーション」

出典:SAAI Instagram

このワークショップでは、世相の混乱に左右されない学習環境を確保するレジリエントな教育システムの構築におけるテクノロジーの役割に焦点を当てました。二十か国以上から約 220 人が参加を申し込んだこのイベントでは、特に社会的危機が生じた際、新たなテクノロジーが質の高い教育を維持するのにどう役立つかを検討しました。

SEAMEO STEM-ED (Southeast Asian Ministers of Education Organization, Regional Centre for STEM Education) のSTEM 教育スペシャリスト兼Knowledge Management Managerである Dr. Orawan Sriboonruang は、急速に進化する世界におけるレジリエントな教育の重要性について講演し、レジリエントな教育システムを維持するには、自然災害や世界的パンデミックなどの危機に耐えうる堅牢な技術インフラとコミュニティへの積極参加が不可欠であることを強調しました。Dr. Orawanはさくらサイエンスクラブ タイ同窓会の幹事長としても活躍しています。

国連開発計画(UNDP) インドネシアの Ms. Ima Eka Sariからは、公平な教育へのアクセスを促進するデジタル ツールの役割について詳しい説明がありました。人工知能 (AI) とデータ分析の発展が学習環境をどのように進化させ、個人にマッチした学習体験を生み出しているか、さらには、危機に陥った時も教育システムの強靭性を高め、学習者が取り残されないようにする取り組みについても語っていただきました。

質疑応答セッションに参加するMs. Ima Eka Sari、モデレーターMr. Adam、Mr. Jan Goran Tomacruz、Dr. Orawan(左上より時計回り)
Photo: SAAI

FGDの場では、教育分野における新たなトレンドやテクノロジーについて議論が交わされ、教育機関がこれらの変化に備え、適応していく方法を具体的に検討しました。また参加者からはテクノロジーの進歩を予測し、情報格差のないデジタルエクイティを確保することで未来に目を向けた教育システムが構築できるようになるだろう、との指摘がありました。

Focus Group 4がベストプレゼンテーション賞を受賞
Photo: SAAI

<総括>

2024 年のさくらサイエンス SDGsワークショップでは、国境を越えたコラボレーション、知識の共有、世界的課題に関して綿密な議論が交わされました。エネルギー転換から回復力のある医療システムや教育まで、これらのワークショップは国際協力のプラットフォームと成り得るような生きた場を提供し、現代社会の課題に対する革新的な解決策を編み出そうとしました。一連のワークショップは多様なセクターにわたって持続可能かつ公平で回復力のある強靭なシステムを作り上げるには世界的な連帯と協力がいかに重要かを浮き彫りにしたといえるでしょう。

インドネシア同窓会SAAI 幹事長 Mr. Baits Dehana
Photo: SAAI