同窓会

2024年SSC日本同窓会イベント─日本で直面したチャレンジや困難克服を取り上げる

2024 年 8 月 3 日、東京のJST サイエンスプラザから配信されたさくらサイエンスクラブ日本同窓会主催のイベントには、世界各国から138 名の参加者がオンラインで参加し、好意的な感想が数多く寄せられました。綿密に連絡を取り合いながら準備に勤しんだ日本同窓会の幹事団は「Navigating Career Transitions in Japan日本でのキャリア転換」をメインテーマに、二名のメインスピーカーを迎え情報満載のセッションを展開しました。

SSC Japan 2024 Team

イベントの冒頭、新たに日本同窓会の会長に就任したDr. Kaushita Banerjeeが参加者を温かく迎え、今回のイベントが「これからも日本に留まり、自己研鑽を続けたいと思う理由や実際の方法」に焦点を当てた内容であることを強調しました。Dr. Kaushitaは現在、外国人特別研究員として産業技術総合研究所(AIST)に所属しています。イベント全体の司会進行はDr. Dyuti Prakashが務めました。

Dr. Kaushita Banerjee
Mr. Johannes Nicolaus Wibisana and Dr. Dyuti Prakash

Academiaの部

ゲスト登壇者– Guest Speaker – Mr. Murshalin Ahmed
PhD Candidate, Division of Global Architecture, Graduate School of Engineering,
Osaka University 大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 

Dr. Kaushitaが司会を務めた最初のセッションでは、Mr. Murshalin Ahmedがバングラデシュから日本への学問の旅について語りました。Mr. Murshalinは、BUET (Bangladesh University of Engineering and Technology バングラデシュ工科大学) での学部時代に耐震工学を専攻しており、その当時、ダッカ市の建物の耐震解析を行う共同プロジェクトに参加する機会がありました。このプロジェクトは、BUET、バングラデシュの政府機関、東京大学が共同で実施したものです。Murshalinさんはさくらサイエンスクラブの同窓生ではありませんが、この共同研究がきっかけとなって、2017年に初来日しました。その後、2018年には日本を再訪し、自然災害後の建物・構造物の評価や改修方法についての研究に取り組みました。これらの研究は、東北大学および大阪大学と共同で行われました。日本は世界で最も地震に関する高度な技術や知識を有していることから、Murshalinさんは日本の大学院で研究を続けることを決心したそうです。

Ms. Nusrat Omar and Mr. Murshalin Ahmed

<MEXT国費留学生─二通りの応募方法>

Mr. Murshalinは、当初MEXT奨学金の「大使館推薦」コースに応募したいと考えていましたが、タイミングが合わず、日本の先生から提案された「大学推薦」コースを選択しました。その時彼が直面した困難のひとつは、選考方法でした。Murshalinさんは構造工学を専門としていますが、日本の建築工学の教授が面接を行ったため、質問の中には専門外のトピックも含まれていたそうです。彼は入念な準備でこれらのハードルを乗り越え、文部科学省の国費外国人留学生として受け入れられました。

幹事のJu Yoon Hnin BoさんおよびMay Myat Noeさんからは追加で大使館推薦の説明がありました。大使館推薦の選考には研究計画書の提出、英語・日本語のテスト、面接が含まれるとコメントしました。一次選考に合格して初めて、受け入れ先と成り得る日本の先生と連絡を取ることができます。教授の方で受け入れが決まった後、大学は二次選考を行い、文部科学省の奨学生として受け入れるかどうかを決定します。この選考プロセスは毎年4月に世界各国の日本大使館で開始され、結果は2月に発表されます。

Ms. Ju Yoon Hnin Bo
Ms. Huang Wei and Ms. May Myat Noe

<パンデミック中およびパンデミック後の状況>

Mr. Murshalinの次のハードルは、新型コロナウィルスによるパンデミックでした。研究室やキャンパスへのアクセスが予約制になったことが痛手でした。このような規制は博士論文の執筆に大きな影響を与えました。文部科学省の国費留学生に対する奨学金が2023年9月を最後に打ち切られた後もMurshalinさんは自費で研究を続けました。留学生のTAやチューターの役割を引き受け、大学外で英語講師のアルバイトをすることで学費を工面したそうです。

同窓会副幹事長のNusratさんは、TAなど学術系の仕事や教授を通じて紹介された研究パートナー企業から仕事を請け負えば英語環境で働くことができると付け加えました。「多くの研究室は何らかの業界と連携しているので、スキルがあれば、日本語が話せなくとも学術分野で仕事を探すことができる」と提案しました。

Mr. Murshalinは博士号を取得した後、ポスドク研究員を志しています。この目標に対し、Dr. Kaushitaは2年間にわたるJSPSの外国人特別研究員制度を紹介しました。「JSPS以外にも、日本の多くの研究機関が独自のフェローシップを提供しているので、常にチェックする価値がある」とアドバイスしました。

Industryの部

ゲスト登壇者 – Ms. Swetha Soundararajan、さくらサイエンスクラブ同窓生、東京大学 PEAK プログラム 卒業生(Environmental Science専攻)

Ms. Swetha Soundararajan
Mr. Rahul Maroju

Mr. Rahul Marojuが司会を務めた 二番目のセッションでは、Ms. Swetha Soundararajan が日本に拠点を置く環境コンサルタント会社 Satisfactoryから内定を得るまでの経緯を語ってくれました。2019 年にさくらサイエンス ハイスクール プログラムに参加した後、Swethaさんは日本の大学で勉強したい、と決心しました。2020 年に東京大学に入学し、パンデミック後の2022 年、ようやく日本に来ることができました。Swethaさんは文部科学省の国費留学生ではありませんが、大学入学後にロータリー米山記念学部課程奨学金を付与されました。在学中Swethaさんは環境問題に取り組む学内のクラブ、大学で菜食主義者用ビーガンメニューの充実を目指すボランティア活動、アルバイト、国際会議への参加など、幅広い活動に従事し、最終的に第一希望の企業から内定を得ることができました。

<就活塾について>

Swethaさんは、留学生向けの東京キャリア フォーラムが非常に役立ったと述べました。就活開始当初、あまり良い結果が得られませんでしたが、専門の就活塾からエントリー書類の書き方について支援を受けてから、選考に通ることが多くなりました。最終的に、Swethaさんは人材紹介会社、食品サービス会社、環境コンサルティング会社の三社から内定を獲得したそうです。

<日本語について>

専門性の高い仕事の場合、採用も仕事自体も英語のみで行われます。しかし、仕事が技術系でない場合は、日本語スキルと大学での豊富な経験が必須になります。なぜなら、日本企業は、就活生の性格が企業文化にマッチしているかどうかをより重視するからです。 「留学生として異国で新しい生活を始める気力がある人ならば、就職活動の難所を乗り越える能力は十二分にあるのではないか」とSwethaさんは自分自身の歩みを振り返りました。

実際にどの程度の日本語力が必要かと問われると、Swethaさんは、専門性の高い仕事であればN4かN5、非技術職であればN2かN1が理想的だが、企業が留学生に日本語能力試験を課すことはほとんどない。スムーズにコミュニケーションが取れれば、レベル(N5~N1)はあまり関係ないそうです。

会場の様子

質疑応答の部

Dr. Dyutiが司会を務めた質疑応答セッションでは、チャットを通じて多くの質問が飛び交いました。「文部科学省の大使館推薦(学部生)では大学を選べるのか」という問いに対しては、自身も学部生として大使館推薦を受けたMr. Sahil Dwivediが回答しました。「集中日本語コースを受講した後、自分の専門分野に関連する試験を受ける。この時点で、入学したい順に12の大学を選ぶことができる。その後、文部科学省が全世界の約50人の志願者の得点に応じて奨学生を決定する。得点が高いほど、希望する大学に合格する可能性が高くなる。」

Ms. Ha Hoang and Mr. Sahil Dwivedi

最後、Dr. Dyutiが締めくくりの言葉を述べたあと、オンラインイベントは閉会しました。本イベントで幹事団は適宜質問やコメントを交え登壇者が日本での歩みをより詳しく聴衆に伝えられるよう効果的に話を引き出し、視聴者からも好評を博しました。事後アンケートでも回答者の七割が「日本留学・就職に対するモチベーションが高まった」と答えました。JST およびさくらサイエンスクラブ事務局は、会のプランニングからプロモーションに至るまで周到な準備を行ってきた幹事団に心からの祝辞と感謝の意を表したいと思います。