同窓会

Kaushita Banerjee

「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム (STS フォーラム)」 は、日本の政治および科学政策に大きく貢献した尾身幸次氏によって 2004 年に設立され、科学者、政策立案者、起業経営者、学者など多様な指導者を結びつける上で重要な役割を果たしています。 STS フォーラムは、世界のリーダーがアイデアを交換し、知識を共有、社会のために科学技術の可能性を最大限に活かすためのプラットフォームとして機能しており、20周年目となった2023年の会議には、80以上の国・地域や国際機関から約1,500人のリーダーが出席しました。

9月30日には、世界中から集まった多様な分野の若きリーダーとノーベル賞受賞者との間で交流セッションが取り行われました。 私は 2 人の受賞者、Dr. Ada E. Yonath (2009年ノーベル化学賞) とDr. Guido W. Imbens (2021年ノーベル経済学賞)と個人的に交流する機会を得ました。 著名な科学者や情熱的な研究者との自由な発想に基づいたオープンなディスカッションから、「成果」にとらわれず科学を追求する好奇心を持って前進するようインスピレーションを与えてくれました。特に私に気付きを与えたのはDr. Yonathの言葉でした。「仕事と家庭の間を行き来しなければならない女性科学者の苦労は他の男性科学者よりも大きいのか?」という私の問に対し彼女は、「女性はより優れたリーダーであることが証明されており、女性にとって不可能なことは何もない。誰とも比較することなく、ただ情熱的に夢を追いかけるだけで、他のことは後からついてくる」と笑顔で答えてくれました。

10月1日~3日にかけて開催された第20回STSフォーラム年次総会の初日は、STSフォーラム会長 小宮山宏氏の開会挨拶で始まりました。 同氏は「参加者全員が社会を変える行動を起こせば、人類は正しい方向に歩みだすだろう」との信念を表明しました。 岸田首相はグローバルな協力が不可欠であると強調しました。

同時開催されたコンカレントセッションでは、生成型人工知能 (AI) が数多く取り上げられ、その発展・課題・展望が取り上げられました。新興テクノロジーが社会に与えるインパクトにいち早く適応・対応しようとしているフォーラム側の姿勢が感じられました。人工知能の一分野である生成 AI とは、まるで人間が創作するようなコンテンツ(画像・動画・テキスト等)を生成できるモデルやアルゴリズムの作成を指します。 「AI の光と影」に関するプレナリーセッションおよび「医療における AI」、「教育における AI」、および「AI におけるデータ」といったコンカレントセッションはAI の潜在的な応用方法や倫理的・社会的懸念を示唆しました。

UL Research Institutes社長兼最高経営責任者Mr. Terry Bradyが議長を務めた「ビジネスのための科学技術」に関するセッションでは、科学技術分野における企業の役割が取り上げられました。 加速する変化やリスクの増大、ビジネス部門の重要な役割、企業の社会的責任、本質的な解決策に伴う課題が強調されました。 また、企業が社会的責任を受け入れ、差し迫った世界的課題に取り組むべきであるとの指摘もありました。

フォーラムはまた、科学技術の進歩を妨げる可能性がある、異なる分野やセクター間の障壁が「サイロ化」している問題も取り上げました。 STS フォーラムは、科学者、政策立案者、業界リーダー間の協力と対話を奨励することで、これらのサイロを打破し、アイデアやイノベーションが自由に流れる環境を促進することを目指しています。 セッションでの活発な議論はすべて、科学技術と社会が交わる複雑な課題に対処するため、学際的なアプローチを奨励しました。 トピックやテーマが多様で、国際社会にとって重要な問題を幅広く掘り下げようというフォーラムの姿勢が理解できました。 このようなフォーラムに参加することで、私たちはよりテクノロジーに優しい持続可能な未来を探究できるようになる、と信じています。