同窓会

ネパール同窓生がSSPを通じて得た実践的知識を活用

2023年9月2日、さくらサイエンスクラブ ネパール同窓会(SSCN)は、カトマンズのHotel Himalayaにて、初の現地同窓会「Coming Together with the Sakura and Japan Experiences」を開催しました。 同窓生と来賓の方々がより近しい距離感で語り合える、アットホームな会となりました。 ネパール同窓会Suman Dhun Shrestha幹事長が開会の挨拶を行い、他の11人の幹事と共に会を設立した経緯や、日本のSSC事務局および在ネパール日本大使館の温かい賛同・支援について語りました。 幹事の一人、Ms. Pabitra Bhandariが司会を務めました。 イベントの様子をまとめたビデオはここからご覧いただけます。

Mr. Suman Dhun Shrestha
Ms. Pabitra Bhandari

JSTを代表し、黄鴻堅 国際連携アドバイザーは現在日本に約25,000人のネパール人留学生がいること、そして彼らが全留学生の10%以上を占めていることを指摘しました。ネパールからの留学生は早くも 1902 年に来日しており黄鴻堅 国際連携アドバイザーは「121 年前のネパール留学生が培った学びの精神はさくらサイエンスプログラム(SSP)に脈々と引き継がれている」と語りました。

黄鴻堅 国際連携アドバイザー

会場に直接ご来訪くださった菊田 豊大使は、同窓会のメンバーがようやく直接対面できたことに祝意を表し、「この会に出席できることを個人的にも嬉しく思う」と感想を述べられました。 大使は、幹事団が自主的にSSCNを結成し、次世代の若者に貴重な機会を与えていることを称賛しました。

菊田 豊大使

ネパール教育科学技術省補佐官であるMr. Baral Kritan Rajは、1956年以来継続されてきた、ネパール・日本間の強力な外交関係、および2014年以来、自国の学生がSSPを通じて多くの知識を吸収したことを強調し、JSTとの連携継続に対する同省のコミットメントを表明しました。

Mr. Baral Kritan Raj

最後の来賓としてはミッドウェスト大学 協力開発研究所局長、ネパール科学技術アカデミー会員、日本留学同窓会ネパール(JUAAN-Japan Universities Alumni Association in Nepal)執行委員を兼務するDinesh Raj Bhuju教授が幼少期から映画、音楽、テクノロジーを通して育んできた日本に対する親しみを語ってくださいました。また、教授は文部科学省の国費外国人留学生制度の下で学んだご自身の学生時代に触れ、この経験がいかに研究者としての生き方に影響したかを強調しました。SSPのように人生を変える機会を積極的につかんでいくよう、参加者に訴えかけました。

Dinesh Raj Bhuju教授

Sharing Session 1
Ms. Aneeta Thapa─ネパール同窓会幹事

ネパールのトリブバン大学で地質学を専攻するMs. Aneetaは、2020年初めにSSP参加者として10日間日本を訪れました。作成したスライドを投影しながら、Aneetaさんは生まれて初めて海辺を歩いたこと、塩辛い海水を味わった等、プログラム中の体験を懐かしそうに振り返りました。ネパールは内陸国であることから海や地面に積もった大量の雪といった日本の自然とのふれあいは「一生忘れられない思い出になった」そうです。

Ms. Aneeta Thapa

島根大学では、訪日グループのメンバーと防災に関するセミナーに参加、命を救うために設計された日本のインフラを見学する等、日本発の工学が生かされている例を目の当たりにしました。こうした実践的経験や、さまざまな国の学生や教授たちと協力する機会を通じて、Aneetaさんは国を越えた交流の重要性をいっそう認識できた、と発表を結びました。

Ms. Aneeta Thapa

Sharing Session 2
Mr. Milan Kumar Rai─ネパール同窓会幹事

Mr. Milanは、災害リスク管理について学ぶため、2018年にSSPを通じて日本を訪れました。 香川大学が主催した10日間の交流プログラムは、日本とネパールに共通するさまざまな防災対策における技術習得や実践的訓練が満載でした。

Mr. Milan Kumar Rai

プログラム中の実地研修を通じて、Milanさんは液状化現象や地形解析について学び、その後、訪日団と四国の中央構造線に赴き、過去の地滑り現場を特定する方法を学びました。

Mr. Milan Kumar Rai

特に、阪神・淡路大震災記念─人と防災未来センターへの訪問は日本人の防災意識と備えが災害時の人命救助を大きく左右する要素の一つであることをMilanさんに確信させたそうです。ネパールが経験してきた多くの自然災害にまつわる記念博物館を設立すれば、減災の重要性を伝えられるかもしれないとMilanさんは示唆しました。

Sharing Session 3
Ms. Shreyasi Bhattarai─ネパール同窓会メンバー

高校生のMs. Shreyasiは自分を含むさくらサイエンスハイスクールプログラム(SSHP)の参加者が日本の学生や教師とだけでなく、南米・台湾・スリランカからの生徒たちとも交流できたことを熱く語り、SSHP同期生らが築いた生涯にわたる友情に感謝の意を表しました。 「SSHPのようなプログラムへの参加はこの世界に前向きな変化をもたらすでしょう」とShreyasiさんは感慨深げに振り返りました。

Ms.Shreyasi Bhattarai

Sharing Session 4
Mr. Nemi Bhattarai─ネパール同窓会メンバー

Mr. Nemiはインドとスリランカからの学生6 名とともに東京理科大学が受け入れ機関となったSSPに参加しました。 JAXAへの訪問を含め、航空宇宙工学を学び、スペースカメラやデブリを専門とする研究室を訪れました。 学生たちはカメラの組み立てやテストを実際に体験し、JAXAのミッション管制室と国際宇宙ステーション「きぼう」間のリアルタイム通信の視察にも招待されました。プログラムで得た知識や経験を国のために役立てたいとNemiさんは考えています。

Mr. Nemi Bhattarai

質疑応答の冒頭に菊田大使は、2023年9月1日が1923年9月1日に起きた関東大震災から100年目にあたる、と述べました。大使は減災・防災に対する認識を国民と共有することがネパールにとって非常に重要であると指摘しました。この差し迫った課題に対しさくらサイエンスクラブ ネパール同窓会がどのように寄与していくことができるか、大使は同窓生に問いかけました。

JICAネパール事務の大久保晶光所長も100年前の関東大震災から学んだ日本人には災害に備えるという考えが深く根付いているとコメントしました。「日本はこの分野での研究を続けており、そのような知識はSSPに参加した若者を通じてネパールに広まるだろう」と大久保氏は示唆しました。

大久保晶光氏

質疑応答では、ある出席者が、SSCメンバーが日本で学んだ知識をネパール社会に応用するためにどのように取り組んできたかを尋ねました。メンバーの多くは地質学の分野で働いており、実際に日本で学んだ専門知識を現在のキャリアに活かすことができていると回答しました。 別の出席者からは、災害対応能力の高い日本の医師をネパールに招いて知識を共有してもらうのはどうかという意見も上がりました。

イベントの閉会挨拶で、ネパール同窓会幹事のDr. Narayan Gaireは、これからも情報やアイディアをさらに交え、互いに交流を続けるよう奨励しました。最後に、Dr. Ananta Dahalがご自身の参加したSSPでのエピソードを披露しました。麻布大学が受け入れ機関となったプログラムでは寄生虫卵を数える顕微鏡スライドの作成技術を学び、その結果、「新たなスライドを購入するよりもはるかに安価な1万分の1以下のコストで賄うことができるようになった」とDr. Anantaは懸命に語ってくださいました。Dr. Anantaは日本で得た知識をネパールの学生や同僚と共有し続けていると付け加え、SSPでの時間を「私にとって人生を変えた経験」と言い表しました。

Dr. Narayan Gaire
Dr. Ananta Dahal

ネパール同窓会が盛況に終わったことを受け、事務局はイベントへの直接参加を快諾してくださった来賓の皆様、参加者の皆様に深く感謝いたします。差し迫ったスケジュールにもかかわらず、幹事団は柔軟かつ効率的にイベントを企画運営し、たいへん心温まる再会を実現することができました。 また、同窓会に先立つSSCの関連活動として、黄鴻堅 国際連携アドバイザーはクリティプール市のヒマラヤ農業科学技術大学Himalayan College of Agricultural Sciences and Technology (HICAST)で獣医学学生向けに講演・出張ワークショップを実施し、大好評を博しました。

ネパールの同窓生と幹事
同窓会後に開かれた幹事会