同窓会

オンラインイベントで初の台湾同窓会を開催─友好を深めるさくらサイエンスクラブ

2022年11月26日、台湾さくらサイエンスクラブ同窓会(TSSCA-Taiwan Sakura Science Club Alumni Association)は、メインテーマとして“Tie-up with Taiwan – Sakura Science Club Brings Us Closer”を掲げ、初の同窓会をオンラインで開催しました。同窓会幹事のMr. WU Chia-Hung が司会を務め、会の冒頭で台湾同窓会の正式な発足を宣言しました。台湾同窓会幹事長であるDr. PENG Chi How (国立台湾大学 理学部化学学科 教授)の代表挨拶を始め、登壇者の皆様にはさくらサイエンスプログラム(SSP)が自身のキャリアや人生にもたらしたインパクトについて和やかに語っていただきました。

Agenda

台湾と日本の友好関係促進に尽くされてらっしゃる来賓の方々も、TSSCA発足を祝福するメッセージを寄せてくださいました。古屋圭司 衆議院議員・日華議員懇談会会長、謝長廷台北駐日経済文化代表処駐日代表、泉裕泰日本台湾交流協会台北事務所代表におかれましては、この場をお借りして、TSSCA、JSTおよび事務局より心より御礼申し上げます。

基調講演 1
内山英穂教授
横浜市立大学大学院  生命ナノシステム科学研究科
生命環境システム科学専攻

内山先生からは横浜市立大学で二回実施されたSSPの概要についてご紹介いただきました。一つは、“Get Familiar with Cells and Life” と題された2016年のプログラムで、学内で行われた細胞の解離および計数の実験、手術用ロボット実習といった活動についてです。もう一つは、“Stem Cells and Regenerative Medicine” と題された2018年のプログラムで5大学(国立虎尾科技大学、国立陽明大学、国立台北科技大学、清華大学、横浜市立大学)参加による合同シンポジウムの開催についてです。参加者はセルファクトリーを見学し、幹細胞が精巣・肝臓に変わる仕組みや神経がどのように再生するか等多能性幹細胞の分化について学ぶ機会を得ると共に、プログラムを通じて参加者全員が、まるで一つの大学に属しているかのように感じ、互いの長所を認識し合い、視野を広げる有意義な機会となった旨内山先生は述べられました。 先生の結びの言葉 “Sakura Science made everyone closer” が示しているとおり、SSPプログラムを通して参加者の絆が深まり、より良い関係を築き上げている旨述べられました。

基調講演 2
Dr. CHOU Shyun、 Assistant Professor、 Dept. of Veterinary Medicine、
National Chung Hsing University (NCHU)  

Dr. CHOUはさくらサイエンスプログラム(SSP)への参加がその後の人生にどのような影響を及ぼしたかについて説明されました。Dr. CHOUは、 2016年、国立中興大学 博士課程在学中に、日本獣医生命科学大学が受け入れ機関となって実施したSSPに参加し、他の参加者と共に、関連大学や研究機関を訪問し、獣医学の様々な専門知識を学びました。 そんな中、たまたまFacebook を通じて知り合った寄生虫学を専門とする日本人獣医師と再会することとなり、結果、日本獣医生命科学大学において博士号を取得するに至りました。 この日本への留学は、日台交流協会の奨学金で実現したものであり、 Dr. CHOU曰く「もしSSP プログラムがなければ、日本で博士号を取得することにはならなかったであろう。したがって、このことは、私の人生を大きく変える契機となった。」と、力説して発表を終えました。

また、質疑応答において、日本語能力の要件について質問を受けたDr. CHOUは、「実際は研究室によって要件が異なりますが、英語だけで研究を行っている研究室を選択する方法もあります」と、返答しました。さらにDr. CHOUは、「今後も一層、台湾と日本の架け橋となり、自身の専門とする寄生虫学の更なる研究に取り組みたい」と、述べました。

シェアリング・セッション 1
Dr. SHIA Wei-Yau、 Assistant Professor、 Dept. of Veterinary Medicine、
National Chung Hsing University (NCHU)

Dr. SHIAは、SSPが国際的に活躍している若手研究者の交流促進に大いに貢献していることを語りました。パンデミック直前の2020年にDr. SHIAは、麻布大学が受け入れ機関となったSSPに参加しました。このプログラムの中において、細胞学、微生物学、寄生虫学、繁殖学、分子生物学、画像診断(超音波および CT スキャン)、そして鍼治療といった実践的な研修が行われ、若い研究者間のコミュニケーションも醸成しました。このつながりは、将来、更なる協力関係の促進や共同研究に発展していく可能性をもたらします。例えばDr. SHIAの場合、SSP参加者から声がけがあり、インドネシアのアイヤランガ大学主催のウェビナーで犬の歯周病について講演につながった経験があるそうです。

また、「具体的にどのような連携が獣医療の発展につながると思われますか」という質問に対し、Dr. SHIAは「小動物外科医としては、海外の外科技術を吸収し、自分からその知見をどんどん情報展開していきたいと考えている─双方向のコミュニケーションの輪が獣医学の発展にとても有益なものである」と返答しました。

シェアリング・セッション2
Mr. LIU Chi-Chih
アデレード大学 大学院生

続いて、オーストラリアで修士課程に現在在学中のMr. LIU Chi-Chihが自身の体験を共有しつつ、 SSPのハイスクールプログラムで訪れた東京都立科学技術高等学校での経験を紹介しました。日本での経験が最後に台湾以外の地で大学院へ進学する動機付けにつながったそうです。 数学や理系科目だけでなく、Mr. LIUは体育などの授業にも参加しました。 全校生徒参加の花形行事である体育祭にも出場しました。 また、放課後の「クラブ活動」にも積極的に参加しました。 日本での滞在を通して、「チームワーク―の大切さや、簡単にあきらめないことを学んだ」と述べました。

シェアリング・セッション3
Mr. WU Chia-Hung
科学教師
高雄市立高雄高等学校

最後の発表者は、イベント司会を兼任してくださったMr. WU Chia-Hungでした。 高雄高等学校のスーパーバイザーとして、台湾の高校生を引率し、宮崎県立大宮高等学校を訪問した経験やさくらサイエンスハイスクールプログラム(SSHP)の及ぼした好影響について紹介されました。両校は2016年から相互交流を温めてきました。大宮高校の生徒は毎年2月に高雄を訪れ、一方、高雄高校の生徒は毎年12月にSSP交流プログラムで来日するなど、お互いの科学プロジェクトに関する研究結果を共有しています。科学研究を中心としたこの交流は、2020 年から 2021 年の間はオンライン形式ではありましたが、スケジューリング合わせや外国語でのコミュニケーションの難しさといったハードルを乗り越えプロジェクトの実現に至りました。この成果を受け、高雄高校のメンバーは高雄市で開催された第62回科学博覧会の中で銅メダルを獲得することができました。大宮高校も宮崎県の科学コンテストで健闘し、全国大会へ進むとのことです。 これらは、交流プログラムがもたらした輝かしい成果だと言えます。 Mr. Wuは自身の学習能力向上のみならず、お互いが相手を思い、行動することが大切であり、SSPがその「思いやりの連鎖」を醸成している旨述べました。

二つのセッション終了後に、JASSO (日本学生支援機構)マレーシア事務所のMr. Raymond Tanが、日本での高等教育に留学する上で必要な基本情報について説明を行いました。Mr. Tanは日本留学のメリットに触れ、世界標準の科学技術を学べること、(奨学金の補助等も考慮すれば)比較的高額ではない学費、卒業後の雇用機会の拡大につながる可能性などを強調しました。 セッション中に表示された多数の QR コードは、公開済み最新SSC YouTube動画からアクセス可能です(Tan 氏のセッションは1:06:43 から)。
https://youtu.be/J_lmXocgPlk

最後に、さくらサイエンスプログラム推進本部企画運営室の伊藤宗太郎室長がTSSCAへの祝辞および本同窓会実施に携わった関係者への感謝の言葉が述べ加えて、同窓会ネットワークの更なる発展および同メンバーが今後再び学生、研究者、あるいはビジネスパーソンとして来日し、日本と台湾の関係深化に貢献すると共に、日本で大いに活躍することを期待する旨締めくくりました。

Flyer created by Mr. WU Chia-Hung