同窓会

第4回さくらサイエンスクラブインド同窓会─交流の意義を強調

2022年9月17日、さくらサイエンスクラブインド同窓会(ISSCA: India Sakura Science Club Alumni Association)およびJSTの共催によって第4回インド同窓会が開催されました。「科学技術のさらなる発展に向けた日印異文化交流プログラムの推進」というテーマのもと、同窓生、学生、研究者や来賓がオンライン上に集いました。JSTインド・リエゾンオフィスにはインド同窓会の幹事が集合し、事務所から中継を行い、交流プログラムがいかに実りある結果につながっているかを紹介しました。

ISSCAの幹事として、モデレーターとプレゼンターを兼任したDr. Pragya Bhatt、プレゼンターでSNSのフライヤーも作成してくれたMr. Priyam Shrivastava、ウェブサイトのフライヤーを作成してくれたMs. Aishwarya Bansidhar、主幹事として準備を割り振り進めてくれたMs. Antara Puranik、前ISSCA主幹事であるDr. Jeetender Chughには、事務局から深くお礼を申し上げます。

また、日本・インド友好議員連盟会長を務められている細田博之衆議院議長、鈴木哲 駐インド日本大使、Sanjay Kumar Verma駐日インド大使、JSPS(日本学術振興会)同窓会(IJAA)インド代表のDr. D. Sakthi Kumarからは、引き続き心温まるご支援を賜り心より感謝申し上げます。

Dr. D. Sakthi Kumarは東洋大学大学院 学際・融合科学研究科の教授でもあり、スピーチの中でインドと日本の研究者の共同研究を支援するIJAAの活動を紹介しました。直近のセミナーは2022年9月9日〜10日にハイデラバードで開催され、研究者が集まり科学の最先端を議論し、文化的なパフォーマンスも楽しんだ、とのことです。

Created by Mr. Priyam Shrivastava

基調講演1
我妻 広明先生

(九州工業大学大学院 生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授)

プレゼンテーションの中で我妻教授は、さくらサイエンスプログラム(SSP)との5年間の関わりを振り返りました。2015年から2019年まで、インドの研究者を九州工業大学に招聘し、脳型ロボット工学講座を開催しました。これまで同大では、36名の大学生、大学院生、ポスドク研究者を招聘してきました。SSPは2020年頭に新型コロナウィルスのため一時休止となりましたが、その後もワークショップや講義がオンラインで開催されています。承認が得られれば、我妻教授は来年から対面での共同研究を再開したいと考えています。

また、ご登壇中、我妻先生は、学生たちが交流プログラム中に撮影した写真をご紹介くださいました。参加者は脳信号処理、モーションコントロールとキャプチャ技術、脳波記録EEG、視線追跡、ロボット操作システムとデザイン、3Dプリンターなど、多くの最先端技術を含む脳型ロボット工学に触れました。滞在中、参加者は研究活動だけでなく、うどん作りなどの食文化他、北九州を知るツアーにも参加しました。

基調講演2
市川 裕士先生

(東北大学大学院工学研究科 附属先端材料強度科学研究センター准教授、JSTさきがけ研究者)

市川先生からは「力学の知識が開拓する溶融しないアディティブ・マニュファクチャリング」についてご紹介いただきました。これにはパイプやホースといった材料に付加する保護コーティング技術等が含まれます。コーティングは通常、溶融した材料を使って行いますが、市川先生の研究室では固体の粉末を使ってコーティングする「コールドスプレー法」の研究を行っており、銅の粉を超音速で吹き付けることで、アルミパイプに銅をコーティングしています。

この研究の目的は、極めて短時間およびナノスケールで起こる反応をより深く理解し、より優れた材料の製造プロセスを生み出すことです。市川先生は「この魅力的な研究分野が、日印交流を促進する鍵になることを願っています」と期待を寄せました。

基調講演3
Dr. Prashant Dhakephalkar

(Director, Agharkar Research Institute)

Dr. Prashant Dhakephalkarは、稲わらのような農業廃棄物から水素とメタンを安価で環境に負荷のない形で生産する新手法について講演しました。現在、インドでは稲わらの半分以上が焼却処分されていますが、わらには抽出可能なエネルギーが含まれています。

「廃棄わら」は、微生物が分解しにくい物質を含んでいるという問題点がありました。以前は分解を促進するために環境に有害な化学物質が使用されていました。しかし、Dr. Dhakephalkarの研究室では、12種のバクテリア、菌類、古細菌による複合体が分解されにくい物質をより単純で消化可能な炭水化物に分解できることを発見したのです。

共同研究の機会については実装方法の改善、診断材料およびバイオガス・リアクターをモニタリングするツールの開発、微生物培養のさらなる開発,といった可能性があるとのことでした。Dr. Dhakephalkarは興味のある学生を日本から受け入れて技術を指導する準備も整っているとプレゼンテーションを締めくくりました。

基調講演4
Dr. Sasanka Dalapati

(Assistant Professor from Central University of Tamil Nadu)

Dr. Sasanka Dalapatiの初の海外研究生活は、競争率の高いIMS(分子科学研究所)ポスドク研究員として日本に赴いた時始まりました(2013年-2015年)。その後、IMSおよび北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)にてJSPSフェロー(2015年-2017年)として研究を続けました。

Dr. Sasanka Dalapatiは自身の経験や、日本の文化(親切さ、献身的姿勢、規律正しさ)がいかに彼を勇気づけてくれたかを語りました。日本のホスピタリティと高度な研究インフラがあったからこそ、エネルギー・環境応用のための先端機能材料─共有結合性有機構造体(英: covalent organic framework 略称: COF)の分野でスムーズに研究を進めることができたそうです。こうした経験や実績が、彼の目標達成を後押ししてくれたと感慨深く語ってくださいました。

シェアリング・セッション1
Mr. Priyam Shrivastava

(インド同窓会幹事 - PhD scholar in Materials Engineering at the Indian Institute of Technology, Jammu)

さくらサイエンスプログラム(SSP)で来日し、九州工業大学を訪問したShrivastavaさんはその後、経済産業省の国際化推進インターンシップに採用され、再来日しました。茨城県水戸市の株式会社ヨシダで二ヵ月間、機械エンジニアとして勤務した経験があります。

Shrivastavaさんからは興味を持った研究分野に関する研究室の情報収集、資格要件の確認、資金援助や奨学金のチェック、申請書類の作成についての詳しいアドバイスがありました。また、修士号・博士号を目指す学生は、ビザ取得のため指導教授の身元保証が必要であるため、教授との連絡確認が必須であると強調しました。

文部科学省の国費外国人留学生制度以外に、Shrivastavaさんは特に国連宇宙局、日本政府、九州工業大学のパートナーシップによる「超小型衛星技術に関する留学生受入事業(PNST)」を紹介しました。このプログラムは2023年1月9日まで応募を受け付けています。

最後にShrivastavaさんは、学生が大学に連絡を取る際に利用できるリクエストレターの書き方を示しました。見本は段落頭のプレゼンテーション資料内に記載されています。

シェアリング・セッション2
Dr. Pragya Bhatt

(インド同窓会幹事 - Senior Scientific Associate Science & Engineering Research Board, Department of Science and Technology - DST, New Delhi)

最後に会のモデレーターでもあるDr.Pragya Bhattが、自身の体験談を語りました。Bhattさんは2016年にSSPを通じ若手研究者として日本を訪れ、ワークショップや学会に参加し、アジア各国の研究者と知り合いました。分子内のイオン衝突を研究しており、日本への訪問は彼女の研究に大きな影響を与えました。滞在先の東京都立大学では、実験をさらに進める機器を利用できたそうです。日本での研究後、査読を通過した論文を発表し、複数の国の学会でその内容を発表しました。

Bhattさんによると日本はとても安全な国でもあるそうです。滞在中は、仲間たちと観光名所を訪れ、思い出深い体験をしました。日本での滞在は楽しいものでしたが、食事制限のため、時には困難を感じることもありました。しかし、周囲の助けもあり、ベジタリアン用の食事や食材を見つけることができました。このウェビナーに参加してくださったすべての方に感謝の意を伝え、インドと日本のさらなる協力関係を願っているとBhattさんは結びの言葉を述べました。

日本留学セッション
Mr. Raymond Tan

(日本学生支援機構 マレーシア事務所)

最後のセッションでは、Mr. Raymond Tanが日本留学に関わる基礎知識について説明を行いました。英語で授業を行う大学への直接出願(TOEFL iBT 71〜80点、IELTS 5.5〜6点が必要)のほか、日本語で授業を行う大学への日本留学試験(EJU)による出願ルート(EJUスコア 200〜250点が必要)についても説明がありました。

大学院レベルでは、出願前に指導教官の事前承認を得ることが非常に重要であること、そしてこのプロセスには半年から一年かかることもあると強調しました。また、来日してから申請できる奨学金や、学内奨学金、学費免除・減免制度についても説明がありました。最後は、日本の大学における就職支援が充実していることや、日本で就職することの展望についてもご教示いただきました。

Ms. Antara Puranik
Zoom配信設定
Mr. Priyam Shrivastava
Dr. Pragya Bhatt
幹事らはJSTインド・リエゾンオフィスよりウェビナーを配信した
Created by Ms. Aishwarya Bansidhar