同窓会
第2回SSCマレーシア同窓会はマレーシア・日本および世界とのつながりをいっそう強固なものに
2022年2月26日、第2回マレーシア同窓会「Bridging Social Capital and Cultivating Excellence」がJST・MASSAの共催でオンライン上開催されました。MASSAは、Malaysia Alumni of Sakura Science Associationの略称です。MASSAのメンバーでもあるDr. Nor Ruwaida Jamian(マレーシア工科大学 UTM内マレーシア日本国際工科院 MJIIT)がモデレーターを務め、約100名の視聴者がバングラデシュ、中国、香港、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、台湾、タイ、米国から参加しました。
基調講演1: Dr. Moi Meng Ling
東京大学大学院医学系研究科 教授Dr. Moi Meng Lingは、文部科学省の国費外国人留学生として筑波大学に学び、日本でのキャリアをスタートさせました。2020年12月には、デング熱と新興感染症の研究に大きく貢献した外国人として初めて日本医療研究開発大賞 日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞しました。
Dr. Moi は、新興・再興感染症対策における「架け橋」の構築と維持の重要性について話しました。疾病には国境がないため、病の発生時に効果的に対処するには、各国が協力してネットワークを構築することが重要です。
またDr. Moiは学生たちに生まれ持った価値観を保ちながら、グローバルな考え方を身につけていくよう勧めました。世界を知り、キャリアを積んでいく中で、彼ら自身が架け橋になっていくことが望ましいとのことでした。そこには、自分自身と後に続く者たちがさらに研究を進めていくために必要な「専門分野における人的交流の構築」という責任も含まれています。
基調講演2: Dr. Mohd Zamri Yusop
現在マレーシア工科大学 (UTM) 機械精密工学科でSenior Lecturerを務めるDr. Mohd Zamri Yusopは、名古屋工業大学(NIT)で機械工学を学び、同大 未来材料創成工学専攻として工学博士号を取得しました。
Dr. Yusopは、愛知県は自動車や航空宇宙産業など、日本の製造業の中心地であり、工学部の学生には多くのチャンスがあることを語りました。Dr. Yusopはマレーシア政府によるLook East Policy奨学生として日本語準備講座を経て来日したため、名古屋工業大学にて工学に関わる主な授業をすべて日本語で履修しました。しかし、研究室では日本人学生と留学生がほぼ同数ぐらい在籍していたので、英語でコミュニケーションも可能だったそうです。
次に、Dr. Yusopは文部科学省外国人国費留学生制度やJASSOの奨学金制度に挑戦することを勧めました。文部科学省のいわゆるMEXTスカラーシップには大使館推薦と大学推薦の2つがあります。大学推薦の場合、日本の大学で指導教官になってくれる教授と接点を持つ必要があります。大学推薦を受けたい学生は直接Dr. Yusopに相談すれば、指導教官候補を探すサポートをしてくださる、とのことでした。また、日本で仕事をしたい学生には、愛知県独自の奨学金制度Aichi Scholarship Programを紹介しました。愛知県内で5年間勤務することと引き換えに、2年間の修士課程の費用・生活費を補助してくれるものです。
日本留学を希望する学生へのアドバイスとしてDr. Yusopは自分が志す研究分野の教授とコンタクトを取ることを推奨しました。また、特定のテーマを扱う国際学会に出席すれば、その分野の教授や研究室とネットワークを築くことができます。
Sharing Session 1: Dr. Gan Hong Seng
マレーシア・クランタン大学(UKM)データサイエンス学部 Senior Lecturer のDr. Gan Hong Sengは、パンデミックがMASSAに与えた影響について講演しました。
日本とマレーシアは、同国の「ルック・イースト政策」を皮切りに、1980年代から学術・研究面で強固な関係を築いてきました。MASSAは比較的新しい同窓会組織ですが、他にもいくつか日本・マレーシア関連の組織が存在し、いずれも両国にまたがるネットワークを活性化するために活動しています。
しかし、パンデミック(COVID-19)の影響により、従来の国境を越えた移動ができなくなり、文化・研究交流に大きな影響を与えています。
Dr. Ganはデータサイエンスの専門性を生かし、日本への留学がマレーシアの学生に与えたポジティブな影響を分析しました。そのデータをもとに、パンデミックによって彼らの教育の文化的側面がどのように影響を受けたかを算出したのです。結果、知識・スキルの共有、ネットワークの構築、コミュニケーションが最も阻害されたことがわかりました。両国における科学技術分野の生産性も阻まれましたが、スキル共有やコミュニケーションほど深刻ではありませんでした。
第2セッション:Dr. Che Azurahanim Che Abdullah
マレーシア・プトラ大学(UPM) ナノサイエンス・ナノテクノロジー研究所 ナノマテリアル合成および特性評価研究所ラボ長のDr. Che Azurahanim Che Abdullah(Dr. CACA)は、パンデミックに対応し、リモート化してからのさくらサイエンスプログラムについての所感を語りました。
オンライン実施のさくらサイエンスプログラムは2021年1月に始まり、2022年現在も継続しています。ZoomやGaia Townといったアプリを使い、様々な国の学生・研究者・ファシリテーターがバーチャルで交流し、研究発表を行っています。
Dr. CACAは、バーチャルでのさくらサイエンスはコストが低く、場所を問わずアクセスでき、サステナブル(持続可能)でもあるという長所を持つ反面、短所もあると指摘しました。新しい可能性に期待する一方で、コンピュータや通信の不具合は常に悩みの種で、文化交流も著しく減少してしまいます。最先端の機器や設備を見学するような実体験という点では、やはり学生が直接日本を訪れる方が望ましいと述べました。
Q&Aでは、「さくらサイエンスはどんな研究分野でも受け入れているのか」という質問がありました。さくらサイエンスでは分野を限定していませんが、日本での協力者を見つけることが鍵となる、との説明がありました。日本の受け入れ側が応募書類をJSTに提出するという仕組みのため、まずは国際学会に参加してネットワークを作り、海外の研究者を受け入れることに前向きな日本人の先生に出会うのがベスト、というアドバイスがありました。
次のセッションでは、JASSOマレーシア事務所Raymond Tan氏が、日本で大学・大学院教育を受けることの利点と、学部生から大学院生まで、日本で学位を取得しようと考えるマレーシア人学生のための出願手順や手続きについて緻密な情報を提供しました。視聴者が簡単に情報にアクセスできるようスマートホンでスキャンできるQRコードも画面共有されました。疑問点があればJASSOマレーシア事務所がzoomといったツールで留学カウンセリングを行うことも可能、との提案もありました。
最後に、マラヤ大学ビジネス経済学部の准教授であり、マレーシア元留学生教会(JAGAM)会員でもあるDr. Lau WeeYeapが、マレーシア・日本間の架け橋となる理解促進活動の歴史を紹介しました。 JAGAMは、日本留学を希望する高校生向けのウェビナーを数多く主催し、日本留学フェアにも積極的に参加・出展しています。また、パンデミックに対応するためのマスク寄付活動やマレーシアの小学校におけるEラーニング充実を実現させるためのノートPC寄贈といった社会的責任を果たす活動も行っています。このように多面的な友好活動によりJAGAMは、2018年外務大臣表彰を受けました。
第2回マレーシア同窓会は、経験談や最新情報の共有することに大きく貢献しました。この会の実現に向けてご協力くださった講演者の皆様、そして温かい励ましのメッセージをくださった来賓の髙橋克彦駐マレーシア特命全権大使、Nor’Azam駐日マレーシア大使館公使、古屋圭司衆議院議員(日本マレーシア友好議員連盟会長)には、JSTとMASSA関係者一同より改めて御礼申し上げます。