同窓会

さくらサイエンスクラブ日本同窓会が留学生対象の就職活動ウェビナーを開催

9月4日(土)、さくらサイエンスクラブ(SSC)日本同窓会および科学技術振興機構(JST)は留学生の就職活動に焦点を当てたオンラインセミナー「Excelling Job-Hunting in Japan as an International Student」を開催しました。出席者の半数は大学生で、アンケート回答者の半数以上がウェビナーの内容を高く評価しました。このイベントは、日本同窓会の主幹事であるLai Hung Wei氏が企画し、モデレーターを務めました。

このイベントいかがでしたか?
所属の円グラフ

第1セッション:Huang Lei氏
JBCC株式会社 システムエンジニア

日本同窓会の幹事でもあるHuang Lei氏は、日本で働くことの長所(安全性、優れた医療システム、給与)と短所(仕事場における意思疎通、仕事量)、および就職活動の基本的な流れについて解説しました。早めに就活の準備を行い、日本特有のビジネス慣習に意識を向け日本語力を磨くのが良い─日本の大学に在学中、アルバイトを経験することで、日本語の力と社会的スキルの両者を鍛えることができる─とのアドバイスがありました。

日本は現在、米国のH1-Bビザに相当する高度専門職(高度外国人材)という在留資格の枠を設けており、日本の永住資格が取得しやすくなるというメリットもあります。日本で業績を重ねてきたHuang Lei氏はつい最近、永住資格を得たそうです。

質疑応答では、「漢字を学ぶことにどれだけ比重を置くべきか」という質問がありました。Huan Lei氏はひらがな・カタカナに加え漢字も学ぶことを勧めました。外国人社員が就業中に漢字を書くことは求められませんが、メールや業務上必要な文書を理解するには、基本的な漢字を習得しておくことが望ましいとアドバイスしました。 モデレーターのLai Hung Wei氏も、基本的な読解力をすばやく向上させるために、一日に漢字を五個ずつ、一年間学習してみることを勧めました。

「学士号を修めてからすぐに就職すべきか、あるいは修士号を取得したほうが良いのか」という質問に対して、Huang Lei氏は「語学学習や友達を作るための時間が取れる上、初任給も多少高くなる」という理由から学士号を取得してすぐに仕事をはじめるよりは修士課程で学ぶこと強く勧めました。

一方、博士号を取得することに対してHuang Lei氏は注意を喚起しました。一般企業を狙う就職活動で博士号保持者が特に優遇されるということは少なく、実際には研究職や大学教員といったアカデミックな分野以外の就活では分が悪くなることもある、と述べました。

第2セッション:Austin Zeng氏
President, MEXT Scholars Association

Austin Zeng氏は、日本語をはじめとする語学力やいわゆるソフトスキル─チームワーク、場の空気を読む力など─が大学で学んだ技術的スキルよりも重視されることがある、というデータを披露しました。

多くの日本企業が新卒者の成長を見込んだ「ポテンシャルベースの採用」を行っており、日本には何千もの企業が存在することから「森全体を意識するのではなく、そこから一本の木を探しだす」ことが大切であると指摘しました。

わかりやすく説明するために、氏は3つのケースを解説しました。 1000人以上の従業員を抱える日本のコンサルティング会社A社ならばバイリンガルの学生を優先し、広く知られている大学の卒業生を好んで採用する可能性があります。

対照的に、40〜50人の従業員を抱えるインターネット・スタートアップであるB社は、高い日本語能力を求めない可能性があります。むしろ新卒者は採用されるために、優れたプログラミングスキルを示す必要があるでしょう。

最後に、国内市場をターゲットにした大手メーカーC社の場合は、応募者が日本語能力試験一級(N1)の保持者でも、留学生の採用にはまったく関心がないかもしれません。

日本企業の採用傾向は多角的になってきており、一言では語れません。氏の言葉によれば、「標準的な採用枠を超えたところにもチャンスがある」ということです。求職者は「採用企業を良く理解し、自分に合った場所を見つける」必要があります。

燃え尽き症候群について問われたAustin Zeng氏は「政治経済専攻の履修負荷がさほど重くなかったため、在学中の仕事にも燃え尽きずに取り組めた」と述べました。また日本語学習について「アニメを通じて高いレベルの日本力を培うことは可能である」と同調しましたが、「ただ単に視聴するだけでなく一定の努力が必要である」と強調しました。

「日本で働きたい理由」について、面接官に質問されたときの返答方法については、日本や日本文化の好きな点を挙げるよりは、自分自身がどのように社会貢献できるについて、積極的に述べることが重要だと語りました。

第3セッション:福島聡氏
ASIA to JAPAN キャリアコンサルタント

最後の講演者である福島氏には、日本特有の就活制度に焦点を当てていただきました。氏は企業が新卒社員に期待する事柄の事例を示し、どのようなことが期待されているかにつき熟考するよう学生を促しました。

本題に入る前には年度毎に採用を行う就活制度の背景説明がありました。新卒者採用のピークは6月から9月にかかり、 正式な採用通知は10月に提示されます。この時期を逃すと、スムーズに内定を得ることが難しくなってきます。

氏は学生にインターンシップやKaggleのような技術コンテストに参加し、日本語能力試験(JLPT)を受けることを勧めました。また、卒業前年度の2月から、新卒者向け求人サイトや人材紹介会社に登録し、できるかぎり多くの企業説明会に参加することを提案しました。 JASSOの留学生就職活動ガイドからも基本的な流れを学ぶことができます。
https://www.jasso.go.jp/en/ryugaku/after_study_j/job/guide.html

インターネットのおかげで、昨今は日本に拠点を置いていない学生でも、海外からオンライン上で就職説明会(ASEAN Career Fair、Boston Career Forumなど)に参加できるようになりました。大学のキャリアセンターを通じて応募する以外にも、個々の企業求人サイトから応募することも可能です。企業に直接応募した場合は早めに内定が出る傾向があります。

日本企業の多くは長期的に働ける社員を求めているため、採用対象者の性質を重視します。優れたコミュニケーション能力、チームでうまく働く能力、ストレスの多い状況で働く能力等が求められます。

質疑応答の中で日本語のレベルについて問われた福島氏は、「平均的な留学生内定者は日本語能力試験で少なくとも3級(N3)を持ち、会話が成立するレベルの日本語力を有している」といった傾向を明らかにしました。さらに、日本で学術分野のキャリアを追求したい人に、福島氏は研究者のためのキャリア支援サイト、J-RECポータルを紹介しました。
https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekTop?ln=1

日本企業における規範についての質問に対し福島氏は「従業員が勤務時間外の残業を求められる傾向は未だにある─過度な残業な年々減少しているけれども、多少の超過勤務は義務と考えられている」と述べました。

最後に、日本企業での英語の必要性についての質問に対して、福島氏は、日本語力があれば英語力の有無は問われないと答えました。

今回のオンライン・イベントは日本の就活に特化した内容でお送りしました。積極的に質問を寄せてくれた参加者の皆様、快く回答してくださった講演者・モデレーターの皆様にあらためて御礼を申し上げるとともに、日本内外、各国で就職活動に取り組んでいらっしゃる方々に良い結果がもたらされるよう、事務局一同よりエールをお送りします。