2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第097号 (Aコース)
マレーシアの循環型社会構築のためのバイオマス廃棄物の新規資源化プロセス開発
中央大学理工学部
教授 船造俊孝さんからの報告
令和5年8月21日から29日にかけて、「さくらサイエンスプログラム」A.科学技術体験コースとしてマレーシア工科大学マレーシア日本国際工科院化学環境工学科(Department of Chemical and Environmental Engineering(ChEE),Malaysia–Japan International Institute of Technology(MJIIT),Universiti Teknologi Malaysia(UTM))の2年生8名とKiew Peck Loo上級講師を、中央大学理工学部応用化学科に招へいした。これまでも、さくらサイエンスプログラムAコースは平成30年1月21日から28日、平成31年2月1日から8日、令和元年12月18日から24日と3回実施しており、今回は4回目の受入れであった。COVID‑19により、3年以上の中断はあったものの、さくらサイエンスプログラムを復活させることができたのは、国際化を推進している理工学部には何よりの喜びであった。
これまで経験を活かして、後楽園キャンパス6号館には、外国人留学生が他の留学生や日本人学生と交流する際のサロンとして、グローバルラウンジが設置されているので、ここを招へい者の居室とした。グローバルラウンジ内にイスラム教徒の男子および女子用祈祷室としてBおよびC室も設置されている。マレーシアは人口構成がマレー系67%、中華系25%、インド系7%の多民族国家である。また、その国立大学であるUTMは、ほぼ民族比で学生が在籍する。
もともと、公用語はマレー語であるが、英国の影響を長く受け、大学の授業は、ほぼすべて英語で行われている。中華系、インド系は日常ぞれぞれの言語を使用することも多いので、中華系は華人学校で北京語の教育を受け、広東語、客家語、福建語、潮州語など先祖の出身言語を継承する。インド系も一部で今でもタミル語、ヒンディー語を常用していることもある。さらに、MJIITは2012年にマレーシアと日本の政府間合意に基づいて設立された学部であり、日本語の必修科目が設定されているので、招へい学生が複数の言語を解し、簡単な日本語会話であれば理解しているようである。そのため、1機関からの招へいにも関わらず、多くの民族の様々な習慣を同時に知ることができた。実験科目を担当した本学の中国籍の助教は、日本語、英語、中国語を活かし、新たな活躍の場を見出したことも事実である。この数年で本学は、国際化が一気に加速したように思える。
今回のプログラムは8月23日に後楽園キャンパスに到着し、初めにガイダンスを行い、その後、キャンパスツアー、滞在中の居室、祈祷室、TA大学周辺のツアー、ハラルの食品の入手場所、地下鉄の乗り方等、教職員とTAの学生で説明案内し、夕方ホテルまで付き添った。今回、来日前にオンラインでガイダンスを行ったのが、来日した学生だけでなく、その家族にとっても有益であったようである。
2日目(24日)は終日、応用化学科の中で、化学工学、無機化学、有機化学の3研究室に分かれて卒業研究に関連する実験を各研究室を主宰する教員とTAの指導の下で行った。
3日目(25日)は貸し切りバスで横浜にある三菱みなと未来技術館を見学した。4日目(26日)は応用化学科3年生が実際に行っている化学工学系の学生実験のうち、吸着実験と高圧流体のPVT測定を行った。両実験は過去3回のさくらサイエンスプログラムでも実施していたものである。日本人と同じ装置と内容で、日本の大学のカリキュラムの体験を意図し、マレーシアは座学が多いようなので、有意義であり、毎回好評であった。午後は実験の続きと、そのレポート作成で、結果の計算やグラフ作成等についてTAの学生も指導にあたり、日本人の学生にとっても英語でのやりとりは同年代の学生同士、よい交流になっている。
5日目(27日)は午前中、前日の実験レポート作成の続きを行い、午後は日本未来科学館を見学した。未来館までは地下鉄とゆりかもめを乗り継ぎ、未来館の展示だけでなく、途中の交通機関も興味深そうであった。ただ、日曜日であったため、昼食をとるところがすべて閉店であったので、次回からは訪問日について注意を要する。
6日目(28日)は午前中、辻先生と私の講義、午後は各自行った実験と日本滞在の印象についてプレゼンを行ってもらい、その後、修了証の授与、記念写真撮影、ささやかなfarewell partyを行い、関係者一同歓談した。教職員だけでなく、TAの学生も訪問者とも親しくなり、歓談もはずみ、この時間が貴重であると感じた。翌日、早朝ホテルより帰国の途についた。