2018年度 活動レポート 第446号:中央大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第446号 (Aコース)

マレーシアの大学生が環境問題解決のための化学工学的アプローチを学ぶ

中央大学理工学部応用化学科
教授 船造 俊孝さんからの報告

中央大学では、マレーシア工科大学(MJIIC)化学プロセス工学科から、平成29年度(平成30年1月21日~1月28日) に3年生10名と講師1名を受け入れ、平成30年度(平成31年2月1日~2月8日)は3年生10名と上席講師1名を受け入れました。

マレーシアでは、基幹産業であるパームやし生産工程からの廃棄物が深刻な環境汚染を引き起こしています。この廃棄物処理として熱水処理法が有効な解決手段の一つと考えられ、マレーシアでも急速に研究が始まっています。日本はこの分野で多くのデータや豊富な経験を有しており、共同研究に発展させることで新しい処理プロセスの開発と若い研究者育成を目指すことができます。昨年のさくらサイエンスプログラムでの活動 がMJIICの学生や若い教員間で話題になり、日本および日本の科学技術への関心が大いに高まったそうです。このこともあり、本年度も将来を担う学部学生を招へいし、関連するテーマにおける学生実験を実際に行って、理解を深めることを目的にこのプログラムを実施いたしました。

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2月1日

午後、Norhuda上席講師が10名の学生を引率してKuala Lumpurを出発しました。羽田空港では船造が出迎えました。

2月2日

初めて来日する学生も多いため、船造研究室の学生が宿泊先に迎えに行き、全員で中央大学後楽園キャンパスに移動しました。午前に、中央大学にて梅田和昇理工学部長補佐から歓迎の挨拶があり、坂部淳一助教がオリエンテーションを行いました。午後は、船造研究室の学生(学部生および院生)が研究室や化学工学実験室などを見学するキャンパスツアーやキャンパス周辺を巡るガイドツアーを行い、学生間の交流を深めました。

2月3日

午前中は船造が実験テーマ(吸着と高圧流体)の説明を行い、その後、日本科学未来館を目指して、電車で台場に移動しました。何回も地下鉄や電車を乗継ぐツアーは、マレーシアの学生にとってはじめての経験です。迷子にならないように中央大学の学生が同行し、無事に台場へ到着しました。外国人観光客の多いこの地区ではハラル対応のレストランもあります。全員で食事をして、午後は日本科学未来館を見学しました。

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実験ガイダンス

2月4日

学生実験室で実験を実施しました。全員2人か3人のグループに分かれ、2グループは吸着実験、2グループは高圧流体の実験を行いました。実験テーマは中央大学理工学部応用化学科3年生の実験テーマと全く同じで、理工学部のティーチングアシスタントも英語で指導していました。高圧流体のテーマは、初めての体験で細心の注意を払っての実験です。吸着実験は、日本語版のコンピュータでデータ処理を行いました。マレーシアから持参したコンピュータと見比べながら、全員無事実験を終了しました。

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実験の様子

2月5日

午前中は学生実験室で実験を実施しました。昨日と同じグループメンバーで昨日と異なる実験テーマを行い、午後にはグループごとに実験レポートを作成しました。実験室の雰囲気にも慣れてきて、ティーチングアシスタントや院生たちに質問しながらレポートを作成しました。

2月6日

早朝からバスで横浜方面に向かい、海洋研究開発機構 横浜研究所を訪問して、「地球シミュレータ」のしくみや研究についての紹介、半球スクリーンでの海洋や大気の動きの観察、シミュレータのためのスパコンの見学を行いました。午後は横須賀の本部に移動し、高圧実験水槽装置の説明を受けたのち、簡単な高圧実験の見学や、「しんかい6500」などの有人潜水調査船の見学を行いました。

2月7日

午前は船造研究室にて当該研究室の研究テーマの1つである「バイオマスの熱水資源化と構成分子のモノマー化」のガイダンスおよびマレーシア工科大学 辻智也教授 講演会 "Utilization of Dimethyl ether, and Measurement of Phase Equilibrium containing Dimethyl ether" を聴講しました。

午後は再び船造研究室にて午前中にガイダンスを受けた「バイオマスの熱水資源化と構成分子のモノマー化」の体験実習を行いました。一昨日からマレーシアではChinese New Yearが始まっており、実験終了時には中華系学生たちが中心に企画したChinese New Yearのサプライズプレゼントもありました。

2月8日

午前中は、研修に参加した学生による、学生実験の報告と本研修のレポートを行いました。幾つかのグループは、一週間の様子を数分の動画にまとめたものも上映しました。

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学生実験報告会にて

午後は、樫山和男理工学部長による、さくらサイエンスプログラム「科学技術体験コース」の修了証(Certification)授与式を行い、引き続き、参加者とこの期間に協力した学生、補助したスタッフ全員でフェアウェルパーティーを行いました。終了後は、坂部淳一助教や舩造研究室の院生、学生が、池袋駅発羽田空港行のバス停まで、見送りました。バス乗車後もお互いに手を振り続ける学生達がとても印象的で、別れを惜しみつつ、研修の成功を祝いました。

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台場にて