2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第076号 (オンライン)
持続社会を目指す最先端半導体デバイス研究の体験
千葉大学大学院工学研究院
教授 石谷 善博さんからの報告
ミャンマーでは国内情勢の混乱のため多くの教員や学生が大学から離れたと伺っていますが、昨年度と同様に本年度のさくらサイエンスプログラムにおいてもミャンマーのヤンゴン工科大学、マンダレー工科大学から参加者を迎えました。さらにトルコのカフラマンマラシュシュツイマン大学からの参加者も加えて12名の学生(大学院5名、学部7名)と教員8名の計20名の参加者を迎え、2022年12月5日~12月10日の6日間にわたりオンライン交流を実施しました。
実施主担当者は、上記ミャンマーの2大学を対象に行われたJICA支援の「ミャンマー工学教育拡充プロジェクト」の中で教育・研究支援を行ってまいりました。COVID−19蔓延や国内情勢の混乱のため第二期支援プロジェクトが中止となり、現地学生や教員からはさくらサイエンス事業による交流への期待が強くなっています。また千葉大学においても学生の留学が必須となるなど国際交流が強く求められ、本事業は双方からの期待に応えるプロジェクトとして位置づけられています。さらに本年度は我々の活動情報を得たトルコからの参加希望の依頼があり、受け入れました。
本年度の交流では、ヤンゴン工科大学で導入されたフーリエ変換型赤外分光高度計(FTIR)、真空蒸着装置、マスクアライナ―、走査型電子顕微鏡(SEM)を有機的に関連させた研究を若手教員や学生が立ち上げること、構築中のフォトルミネッセンス測定系に関してその構築方法に関するオンライン実習を行うこと、学生間の研究討論を活性化させることを目的としました。さらに、半導体のプロセスや物性に関する理解を深めるため、事前に課題を与えて準備をしていただき、そのうえで開催期間中の1日を討論に割く新たな試みを行いました。
オンライン体験では、加工プロセスや光学システムの構築・光路調整などにおいてウエブカメラを近づけて実験実施者の視野で観察していただくことができました。FTIRによる赤外分光計測・フォトリソグラフィによる表面構造形成、およびフォトルミネッセンス測定システムの構築方法には時間をかけて説明を行い、多くの質問を受けました。作業過程における待ち時間に、実空間の移動なくチュートリアル講義を挿入してより深い理解を可能とする方法をとり時間を有効に用いることもできました。特に我々が開発を進めている時間分解ラマン分光につては、昨年度にはない項目として加えました。
討論では全体を3つのグループに分けたグループ討論をまず行い、そのうえで全体討論を行いました。日本側学生には特に午前の討論でガイドを行ってもらい、交流を深めました。活発な討論がなされましたが、英語による議論に留まらず、ミャンマーから本学への留学生が通訳を行い、より深い議論を行うことができました。両国学生が意識を共通化することができたように感じました。
これまでの活動の結果、現在3名の学生が当研究室に留学しており、留学のための奨学金を現在申請している学生もおります。本プログラムでも留学に関するご質問を受けましたので、本交流の成果が得られているものと感じます。COVID−19のパンデミックから通常社会活動に移行し始めており、来年度はミャンマーの社会情勢が安定し、多くの学生が渡日による活動の機会を得られることを期待します。
本招へいにはJSTおよび千葉大学の多くの方のお世話になりました。感謝申し上げます。