2022年度 活動レポート 第2号:島根大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第002号 (Cコース)

バングラデシュ若手研究者向け養液栽培研修

島根大学生物資源学部
教授 浅尾 俊樹さんからの報告

 2022年8月16日~8月19日、JSTさくらサイエンスプログラムによりバングラデシュから研究者6名を招へいし、島根大学で養液栽培についての研修を行いました。

 今回、島根大学生物資源科学部で実施した「バングラデシュ若手研究者向け養液栽培研修」はバングラデシュ国立農業研究所(BARI)から若い研究者を招いて、2018年度 および2019年度 に実施し、2021年度にはコロナ禍、オンラインで行ったプログラムに次ぐ4回目になります。今回の参加者は昨年度オンラインで参加した研究者で、彼らは来日を心待ちにしていました。

 バングラデシュは、面積が日本の約4割、人口は1億6千万人を超えています。主要産業は衣料品・縫製品産業と農業です。日本にもバングラデシュから「ジュート製ロープ」などが輸入されています。バングラデシュでは今まで他国の技術支援で化学肥料や殺虫剤を多用して作物を栽培したため、土壌の環境汚染や残留農薬により農作物の品質低下を招いています。そこで、バングラデシュの若手研究者を日本に招致し、土壌を使用しない養液栽培技術を習得し、バングラデシュの安全な食料生産と貧困農家の所得向上を目指してもらうために本研修を企画しました。

 バングラデシュ国立農業研究所の研究者6名は8月15日午後にバングラデシュのダッカ国際空港を出発し、タイ・バンコック経由で8月16日早朝に羽田国際空港に到着しました。羽田空港からは国内線で米子空港、そしてバスで島根大学がある島根県松江市まで長旅が続きました。バスから降りてきた彼らは疲れた顔も見せずに、これから始まる研修を楽しみにしている様子でした。ホテルにチェックイン後、研修1日目が始まりました。

 研修1日目の8月16日には、本学理事への表敬訪問を行いました。理事から歓迎の言葉があり、訪問研究者の代表からは本研修と今後の日本との交流発展への期待が述べられました。その後、学生アンバサダによる島根大学紹介と松江キャンパスツアー(島根大学総合博物館アシカルや附属図書館など)が行われました。その後、日本の歴史遺産である国宝松江城を見学しました。天守閣の急な階段を上りながら、各階の展示物では鎧や日本刀などに興味があったようでした。

 2日目の8月17日には、本庄総合農場で研修を行いました。午前中は植物工場支援研究施設やハウス等の見学を行いながら日本の養液栽培技術について学ぶと共に、島根大学で行われている養液栽培研究について見聞することができました。過去のさくらサイエンスプログラムの成果からバングラデシュでも養液栽培が研究レベルで進められています。そのため、島根大学で行われている養液栽培の研究や技術に大変興味を持っていました。その中でも低カリウムメロンの生産や電気分解装置による自家中毒回避などに多くの質問が出されました。午後からイチゴの組織培養、植物体の分析法、培養液の作成法について実習を行いました。

活動レポート写真1
植物工場支援研究施設にて

 3日目の8月18日は、出雲市にある島根県農業技術センターを訪問し、アスパラガスやミニトマト、そして、メロンハウスの見学と試験研究について説明を受けました。バングラデシュの研究者からは多くの質問が出ていました。バングラデシュではアスパラガスの栽培はなく、農技センターの方の好意によりアスパラガスの試食がおこなわれ、その味に満足でした。また、ミニトマトを口にしながら、その選果機を見せてもらいました。

 昼食にはうどんや天ぷらを食べました。中にはうまく箸を使う研究者もいました。

活動レポート写真2
メロン養液栽培ハウスにて

 昼食後、出雲大社を訪問し、大きなしめ縄に彼らは驚いていました。その後、松江市に戻り、日本庭園の由志園に向かいました。由志園がある大根島はボタンの産地でボタンを開花させるための技術が確立しています。その技術を生かして、由志園では1年中ボタンを開花展示しています。伝統的な日本庭園では多くの場所で写真を撮り、1日が終わりました。

 4日目の8月19日は、本庄総合農場で培養液の分析法などの実習が行われ、すべての研修が終了しました。その後、このプログラムの修了書が参加者一人一人に手渡されました。参加者からは多くの感謝と帰国後、この研修で得た知見をバングラデシュ農業に活かせるように努力したいという言葉がありました。そして、日本との交流継続や日本への長期の留学を望む声もありました。

活動レポート写真3
植物体の分析

 今後、彼らがバングラデシュでどのように養液栽培技術を発展させ、バングラデシュ国民の健康と農家の所得向上を担っていくのか、彼らの活躍を願いつつ、本プログラムを修了しました。

 本プログラムで4回目を迎えた「バングラデシュ若手研究者向け養液栽培研修」ですが、養液栽培技術の紹介だけではなく、「バングラデシュ版養液栽培」の発展に繋がる内容を充実させるために準備段階から交流を深めると共に、バングラデシュで養液栽培が発展するためのサポートを模索していきたいと思います。

活動レポート写真4
修了証授与