2019年度活動レポート(一般公募コース)第128号 (Cコース)
バングラデシュ若手研究者向け養液栽培研修2019
島根大学からの報告
2019年10月7日~12日にバングラデシュ国立農業研究所から若手研究者6名が「さくらサイエンスプログラム」により来日し、島根大学生物資源科学部で養液栽培技術の研修を受けました。バングラデシュ国立農業研究所とはバングラデシュ農業大学とともに2017年に交流協定を締結しています。
バングラデシュは、面積が日本の約4割、人口は1億6千万人を超えています。主要産業は衣料品・縫製品産業と農業です。その中で食糧増産が望まれていますが、乾季だけに稲作を行う高収量コメが導入されてから化学肥料や殺虫剤を多用して作物を栽培したため、高価な化学肥料や農薬は生産コストを増大させるとともに、土壌の環境汚染や残留農薬により農作物の品質低下を招いています。また、大量の地下水摂取により、地下水位の低下、枯渇、場所によって自然のヒ素が地下水に混ざるようになりました。
一方、伝統的に雨季に稲作、乾季に野菜等の栽培を土地無し農民が担ってきたところ、乾季コメのモノカルチャーに変わっていったために農村にいた農民が雨季の仕事をなくし、都市の貧困層を形成するようになりました。そこで、バングラデシュの若手研究者を日本に招致し、土壌を使用しない養液栽培技術を習得し、バングラデシュの安全な食料生産と貧困農家の所得向上を目指しました。
関西国際空港からバスで松江に入った一行は10月8日から養液栽培に関する研修を生物資源科学部附属本庄総合農場で行いました。午後からは副学長および学部長表敬訪問、そして松江城見学を行いました。
4日目には出雲市にある島根県立農業技術センターでイチゴの養液栽培研究施設を見学し、出雲大社へ。午後からは安来市の干拓地にあるトマト養液栽培生産者視察、そして日本庭園と日本絵画などを鑑賞するために足立美術館を訪れ、日本の農業だけではなく、日本の文化にも触れることができました。
農場での研修では養液栽培の基礎からメロンや葉菜類の栽培、そして培養液および植物体の分析、人工光型植物工場でのイチゴ、ワサビ生産について学んでいただきました。
来日した6人の研究者はほとんど初めての来日でしたが、充実した6日間を過ごしました。また、台風19号で関西国際空港にしばらく足留めされましたが無事に帰国しました。
今後、彼らがバングラデシュでどのように養液栽培技術を発展させ、バングラデシュ国民の健康と農家の所得向上を担っていくのか、彼らの活躍を願いつつ、さくらサイエンスプログラムが修了しました。