2019年度 実施レポート
インドの理系に優れた大学の若手教員を招へいし、日本の大学関係者との交流会を実施
1月26日(日)~2月1日(土)に行われた「インド科学技術関係者招へいプログラム」の期間中の1月30日に、JST東京本部別館において「日印大学交流会」を開催しました。
インド側からは招へいした25名全員、日本側からは20の大学、高専、研究機関を含む26の機関から34名が参加しました。(参加機関は下のリスト参照)インドの23大学および日本の18大学、高専、研究機関から、各機関の特徴や強み、日印交流の現状や将来の展望について発表していただきました。
インドの大学は欧米の大学とは太いパイプを持っているものの、日本の大学とのパイプは細いままにとどまっています。そこでJSTでは、日印双方の大学が知り合う機会を作ることの重要性に着目し、昨年に続き、第2回日印大学交流会を開催しました。インド側からは、日本の奨学金制度、入学(留学)制度などについて多くの質問が出され、日本側からは、各大学、高専などの持つ強みや、海外からの留学生受入れに対する制度・体制などについて説明がなされました。
質疑応答では、インド側からは日本の大学や大学院に関する情報の不足に加え、日本の留学制度や奨学金制度の分かりづらさが指摘されました。また、日本語の壁についても指摘がありましたが、これは日本の多くの大学にとっては、世界のトップレベル留学生の受入れにあたり依然として大きな課題となっています。学位取得後のキャリアパスの不透明さも、インド人学生にとっては大きな障害となっているようでした。
交流会直後にひらかれた意見交換会では、日印双方の出席者たちが小さなグループを作って情報交換に花を咲かせていました。さくらサイエンスプログラムを有効に推進するには、海外の送出し機関と日本の受入れ機関との連携が最も重要ですが、今回の交流会もそのきっかけを提供する貴重な場になったと手ごたえを感じました。
日印大学交流会参加大学・高専等
- National Institute of Technology Tiruchirappalli
- National Institute of Technology Rourkela
- National Institute of Technology Karnataka
- National Institute of Technology Warangal
- National Institute of Technology Calicut
- Indian Institute of Information Technology Design & Manufacturing, Jabalpur
- Indian Institute of Information Technology Allahabad
- Anna University
- Jadavpur University
- Vellore Institute of Technology, Chennai
- Birla Institute of Technology and Science, Pilani
- Indian Institute of Space Science and Technology
- Delhi Technological University
- Amity University Noida
- Indian Institute of Science
- Jawaharlal Nehru University
- University of Hyderabad
- University of Calcutta
- Amrita Vishwa Vidyapeetham
- Manipal Academy of Higher Education
- Savitribai Phule Pune University
- Aligarh Muslim University
- University of Delhi
- Department of Science and Technology, Ministry of Science and Technology (India)
- 九州大学
- 東洋大学
- 秋田大学
- 産業技術総合研究所
- 東京理科大学
- Vellore Institute Technology (インド)
- 宮崎大学
- 横浜国立大学
- 群馬工業高等専門学校
- 静岡大学
- 名古屋工業大学
- 久留米工業高等専門学校
- 芝浦工業大学
- 電気通信大学
- 東海大学
- 東京大学
- 神戸大学
- 北陸先端科学技術大学院大学
- 木更津工業高等専門学校
- 関西学院大学
- 立命館大学
- 広島大学
- 大学改革支援・学位授与機構
- 宇都宮大学
- 新潟大学
- 理化学研究所
2018年度 実施レポート
インド有名大学のICT(情報通信技術)研究者らを招へいし、日本の大学関係者との交流会を実施
インド工科大学(Indian Institute of Technology, IIT)はインド国内に23校あり、入試の競争率は高く(毎年約50–60倍)、世界中の一流企業、特に米国のIT企業(グーグル、アップル、マイクロソフトなど)は、IITの卒業生を獲得しようと、好待遇を提示しています。今や米国:シリコンバレーの企業の管理職6–7割が、IIT出身者と言われているほどです*。* 出典:Harvard Business Review HP
このIITのトップ15校から、また、同じくインドの「国家重要機関」に指定されている、インド科学教育研究大学(Indian Institute of Science Education and Research, IISER)4校から、さらにインド科学技術省、またインド国内の大学を所管する人的資源開発省の関係者、計30人が来日し、日印間の交流や共同研究の促進をめざして、2019年1月23日(水)にJSTが主催する「日印大学交流会」に参加しました。欧米志向の強いインドの科学技術関係者が日本の科学技術について、どのように理解し、未来への展望を描いたのでしょうか。
交流会ではインドの大学19校から、また、日本の大学・高専16校から発表がありました。(発表者所属一覧)
インド側の発表として、
「JICAを通じて、これまで日本とは大規模な協力体制が構築されてきた。今後は海外から、特にAPEC諸国からの留学生を積極的に受け入れていきたい。交流プログラムやエデュケーション・フェアも活用する。(IITハイデラバード校)」
「IITカラグプール校は、IITの中で最も古い大学で、現在、次世代のAIに特に力を入れている。対大学のみでなく企業との共同研究も進めていく。(IITカラグプール校)」
「本学は5年制のカリキュラムで、バチェラーとマスターを同時に取得できる制度を有している。これはIISERの特徴の1つ。(IISERプネ校)」、
また、日本側からは、
「本大学のインド事務所がこれまで日印の橋渡しとして大きな役割を果たしてきたが、東京大学のみのための事務所ではないので、日本国内の大学における留学生受入れや共同研究の推進のため、更に貢献していきたい。産学官連携による成果も上がってきている。(東京大学)」
「自分自身がIITマドラス出身で、日本でドクターを取得した。日本に来てちょうど20年になる。 多くのインドの学生や関係者から日本への留学や研究について問い合わせを受けているが、実現するのが難しい。経済的な支援が更に必要であるし、自分自身も日印の共同研究を推進するため尽力していく。(九州大学工学部)」
「JSTのさくらサイエンスプログラムを利用して、過去5年間にインドからの90人の招へいが実現し、また、IIT各校とのMOUも締結した。今後は特に看護分野に力を入れて、日印の共同体制を更に拡げていきたい。(宮崎大学)」との発表がありました。
全発表の終了後に、JST中国交流・さくらサイエンス交流センターの黒木慎一副センター長は
「日印双方の主要大学から国際交流への取組みや共同研究の実績、今後の展望について説明していただいたことは大変有意義なことだった。発表者の皆さんが所属大学のアピールポイントを明確にされたことは、日印交流の実績がある大学のみでなく、準備を進めている大学にとっても、今回の交流会が将来の構想を練るための絶好の機会となったと思われる。日本で学ぶ留学生数は、中国からの約10万人に対して、インドからは約1,300人とかなり少ないため、今度、ますます日印の交流が深まるように日本側からも働きかけていきたい。また、交流の拡大には日印双方の大学でさくらサイエンスプログラムを活用していただきたい。」と述べました。
インドからの一行は今回、さくらサイエンスプログラムでの招へいにより、2019年1月20日(日)に来日し、1週間の滞在中に国内の大学(東京大学、東京工業大学、筑波大学)、研究機関(理化学研究所、産業技術総合研究所)、企業(日本電子株式会社)を訪問しました。
JSTではさくらサイエンスプログラムで2015年以来、2,000人以上の若者をインドから招へいしています。また、JSTのそれ以外のプログラムでは、SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)での名古屋電気株式会社とIITハイデラバード校との共同研究や、SICORP(戦略的国際共同研究プログラム)における、九州大学とIITデリー校、東京大学とIITボンベイ校、およびIITハイデラバード校との計3件の共同研究を支援中です。