同窓会

成長を促すコミュニティ ― バンコクで開催されたタイ同窓会イベントは協働による自己成長やイノベーションに焦点

2026年2月21日、バンコクのSkyview Bangkokにおいて、第5回さくらサイエンスクラブ タイ同窓会(SSCT)が開催されました。本イベントには、学生、教員、研究者、すでに就職している同窓生など、計91名が参加しました。タイ同窓会は2024年より一貫して「Reconnecting and Inspiring(再会とインスパイア)」というテーマを掲げて同窓会を開催してきました。

タイ同窓会幹事長のDr. Orawan Sriboonruangは開会挨拶において、さくらサイエンスクラブは単なる同窓生ネットワークではなく、協力、対話、そして相互理解を促すコミュニティであると述べました。タイ同窓会(SSCT)は、タイと日本の若者や科学者が互いに学び合う有意義な機会を創出してきたさくらサイエンスプログラム(SSP)の精神から着想を得ています。交流の場や協働活動、そして継続的な関わりを通じて、これらの絆をさらに強め、次世代に向けた新たな機会を創出することを目指しています。司会はDr. Bhumipat Thanasansomboonが務めました。また、開会の部では在タイ日本国大使館 赤阪宏記広報文化部長からの温かいビデオメッセージを上映することができました。

  • Dr. Orawan Sriboonruang
    タイ同窓会幹事長
  • Dr. Bhumipat Thanasansomboon
    タイ同窓会幹事

シェアリング・セッション

イベントの中でも特に好評だったプログラムの一つが、同窓生によるシェアリング・セッションでした。本セッションは、コーディネーターのDr. Saharuetai Jeamsripongがモデレーターを務め、パネルディスカッション形式で行われ、活発な対話と交流が生まれました。

左から右へDr. Saharuetai、Ms. Nanthiphon、Mr. Chachanondh Limthong、Mr. Nathachai

まず、3名の同窓生パネリストが自己紹介を行い、さくらサイエンスプログラム(SSP)との関わりについて語りました。

Ms. Nanthiphon Sitthichotlertpakdee(SSP 2023年)は、Princess Chulabhorn Science High Schoolの学生であり、2026年4月から立命館アジア太平洋大学(APU)へ学部生として進学予定です。イノベーションをどのように実社会に応用できるかを探究するため、ビジネス・アドミニストレーションを専攻することを決めたと述べました。

Mr. Nathachai Rathamarit(SSP 2024年)は、マヒドン大学BIODat LABにおいて生体医工学を学ぶ学部生およびResearch Traineeです。感覚障害を持つ人々のために感覚信号を回復する技術の開発を目指し、国籍の違いを越えて活用できるAIモデルの構築や、人間が関与する医療AIシステムの確立に取り組んでいます。

Mr. Chachanondh Limthong(SSP 2023 年スーパーバイザー)は、Tatler Asiaのジャーナリスト兼編集者であり、タイ青年友好同窓会AJAFA‑21(ASEAN‑Japan Friendship Association for the 21st Century)の副会長でもあります。SSP参加後にタイへ帰国してからは日本・ASEAN間の意欲的な若者のつながりをさらに強化することを目的としたJapan‑ASEAN Young Leaders Program(J‑Program)を新たに立ち上げています。

セッションを通じてパネリストたちは、タイと日本それぞれの強みを生かした国際協力が、揺るぎないパートナーシップを生み出すと述べました。Ms. Nanthiphonは、タイの学生は既成概念にとらわれず柔軟に考える傾向がある一方、日本の学生は細部まで注意を払い完成度を高める姿勢があると指摘しました。Mr. Nathachaiは、日本は基礎研究を深く追究する傾向があり、タイの研究者はより実用化を志向する傾向があると述べました。Mr. Chachanondhは、両国は互いの強みを補完し合うことで世界の中で競争力を維持できると強調しました。

AI時代において重要なスキルについて質問されると、Ms. Nanthiphonは「コミュニケーション能力」を挙げました。どれほど優れたアイデアを持っていても、それを他者に伝えることができなければ実現には至らないと述べました。Mr. Chachanondhは、自分にないものではなく「自分が持っているもの」に目を向け、それを他者と比べて際立たせることが重要だと助言しました。また「すべてを極める必要はない─必要なことはいつでも学ぶことができる」と語りました。Mr. Nathachaiは、自分の強みを築くために「点と点をつなぐ力」を持つことが重要であり、そうすれば特定分野の専門家として最も優れた存在になれると強調しました。

セッションの最後に、Mr. Chachanondhは、次世代の若者を育てるための種をまき「次の世代へとつないでいく」取り組みとして、さくらサイエンスプログラムを高く評価しました。彼が引率したタイの学生たちは、SSPから帰国後すぐに地元の小学生を対象としたロボットワークショップを開催し、日本で学んだことを子どもたちに還元しました。このような行動こそが「さくらサイエンス」の精神を体現していると締めくくりました。

NEXUS Y‑tec 関連セッション

イベント後半では、科学技術振興機構(JST)のNEXUS Y‑tecプログラムによる国際共同研究の取り組みが紹介されました。JST職員によるプログラム概要の説明に続き、日本の教授2名とタイの研究者1名が登壇し、この新しい双方向型の招へい・派遣プログラムが若手研究者の育成や研究の持続的発展にどのように貢献しているかを紹介しました。

大阪大学大学院理学研究科化学専攻 吉成信人教授

吉成教授は、タイ(マヒドン大学、チェンマイ大学)およびマレーシア(マレーシア科学大 - Universiti Sains Malaysia)と連携し、革新的なグリーン電池の開発を進めるY‑tecプログラムの日本側実施主担当者です。過酷な気候条件でも効率的に機能する、低コストで環境負荷の少ない電池技術の開発を目指しています。また、最先端の研究機器を遠隔で共有する仕組みを通じて科学協力を強化しています。これらの連携はすでに共同論文の発表や大学間協定の締結などの成果につながっています。

吉成信人教授
コンケン大学ポスドク研究者 Dr. Umarin Jomnonkhaow

Dr. Umarinは、微生物発酵を利用して有機廃棄物を有用な化学物質へと変換する新しい手法について説明しました。シイタケ栽培後に残る培地とワカメを混合し、酸素を用いない条件下で微生物に分解させることで、有用な酸を生成することができます。この酸はバイオ燃料、バイオプラスチック、食品保存、農業、化学産業など幅広い用途へ活用可能です。研究では、ワカメを加えることでさらにこの有用な酸の生産量が増加することが確認されました。

Dr. Umarin Jomnonkhaow
山口大学大学院創成科学研究科工学系学域 今井剛教授

今井教授は、本Y‑tecプログラムの日本側実施主担当者として、タイ東北部イサーン地域において微生物バイオテクノロジーと嫌気発酵を応用し、サトウキビの葉を利用したクリーン燃料の生産研究を進めています。このプロセスにより、水素とメタンの混合ガスである再生可能エネルギー「Biohythane」を生成することができます。また、この研究はイサーン地域におけるPM2.5削減にも貢献することが期待されています。研究はコンケン大学、プリンス・オブ・ソンクラー大学、マヒドン大学と共同で進められています。

今井剛教授

ネットワーキング・セッションでは、幹事のMr. Sarawut Khamsetがアイスブレイク・ゲームやクイズを企画し、参加者同士の交流を盛り上げました。JSTおよび事務局は、イベントの準備と運営に尽力したタイ同窓会幹事会、そして表舞台・舞台裏で支援してくださったすべての関係者に感謝の意を表します。会場では幹事や同窓生が、2027年に再び集まることを約束して閉会しました。