同窓会
第5回マレーシア同窓会に多くの参加者が集結
JSTの研究エコシステムNEXUSおよび人工知能の未来に焦点
2025年11月1日、クアラルンプールの Impiana KLCC Hotelにて、第5回マレーシア同窓会が開催されました。JST および マレーシア同窓会(MASSA-Malaysia Alumni of Sakura Science Association)共催のもと、学生から研究者まで100名以上が参加するたいへん盛況な会となりました。司会はマレーシア同窓会幹事のMr. Haziqが務めました。前半では JST が ASEAN との研究エコシステムNEXUSに関する紹介・成果報告があり、後半では3名の専門家を迎えて「科学技術における人工知能の台頭」と題するフォーラムが開催されました。聴衆の心をつかむ会を企画したマレーシア幹事会に祝辞を送ります。
Dr. Che Azurahanim Che Abdullah (Dr. CACA)の開会宣言に続き、JST さくらサイエンスプログラム推進本部 庄司真理子室長は、マレーシア同窓会は同プログラムで培われた友情とアイデアが今も発展し続けている好例であると讃えました。続いて在マレーシア日本国大使館の二瓶大輔公使は、「同窓生の役割はこれまで以上に重要」と述べ、「皆さんは技術的な専門性に加え、さくらサイエンスの根底にある好奇心、誠実さ、異文化理解の精神をも体現しています」と語りました。
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マレーシア同窓会幹事
Dr. Che Azurahanim Che Abdullah -
JST さくらサイエンスプログラム推進本部
庄司真理子室長
二瓶大輔公使
情報提供セッションでは、まず JASSO クアラルンプール日本留学情報センターの大澤宜子所長が、日本留学の可能性と実際の手順について包括的な説明を行いました。続いて、JST 国際部NEXUS拠点専任コーディネーターである吉岡佐知子氏からNEXUS についての説明がありました。NEXUSは日本およびASEAN 間の共通課題に取り組むための枠組みであり、マレーシアの場合、共同研究分野の指定や「共同公募」は JST と ASM(マレーシア科学アカデミー)が協力の上実施します。
大澤宜子所長
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JST 国際部NEXUS拠点専任コーディネーター
吉岡佐知子氏 -
JSTさくらサイエンスプログラム推進本部
単谷(Shan Gu)調査役
SSPの新しい能力開発イニシアティブである NEXUS Y-tec については、さくらサイエンスプログラム推進本部の単谷(Shan Gu)調査役が説明を行いました。Y-tec は日本と ASEAN の交流機関が年間を通して双方向に(招聘・派遣)交流できる制度です。「若手人材交流コース」と「指導人材交流コース」の2コースがあります。
NEXUS Y-tec の成果を示す事例としては金沢大学理工研究域機械工学系の辻口拓也教授がマレーシア国民大学(UKM)との燃料電池技術実用化に向けた共同研究について、たいへんに活気に満ちた報告を行いました。この共同研究は、UKM 燃料電池研究所(SELFUEL)の Dr. Shahbudinとの長年のパートナーシップから生まれたものです。2025年9月には UKM の研究グループが Y-tec を通して来日し、ラボ作業を実施。金沢大学チームも11月上旬に UKM を訪れ、さらなる共同研究を進めました。
辻口拓也教授
マレーシア側実施担当者として、マレーシア国民大学(UKM) Senior Lecturerの Dr. Wan NurfadhilahはY-tec を通じた理化学研究所・仁科加速器科学研究センター実施主担当者─渡邊功雄専任研究員)とのパートナーシップが、計算手法および情報学を用いたアプローチから農業廃棄物を次世代型再生エネルギー貯蔵材料へと変換する研究に大きく貢献したと発表しました。Dr. Nurfadhilahは、NEXUS Y-tec を若手科学者にとって極めて有効な能力開発プラットフォームであると高く評価しています。また同博士はさくらサイエンスプログラム(SSP)の熱心な支持者でもあり、長年優秀な学生の選抜および指導に携わっています。
Dr. Wan Nurfadhilah
Dr. CACAがモデレーターを務めた人工知能に関するフォーラムでは、UPM (Universiti Putra Malaysia) 情報工学部学部長の Prof. Dato’ Dr. Shamala、シンガポールのスマートシティコンサル企業 SCAVAI会長 Mr. Abram Abu Bakar、そして AI 搭載型マーケットインテリジェンスプラットフォーム Newell Road の共同創設者 森悠祐氏が登壇し、三者がそれぞれユーモアを交え、率直な見解を披露しました。
Prof. Shamalaは、AI の活用には強固な基礎が不可欠であり、学生には自らの知性を大切にすることを教えるべきだと述べました。Abram 氏は、AI は反復作業を担うことで、人間が「スーパー社員」として創造性を最大限発揮できるようになると指摘しました。森氏は、日本では AI を含むテクノロジーは脅威ではなく「友」と見なされていると述べ、さらに深い「オタク的」専門性があるからこそ、人間は AI がまだ生み出せない高度な問いを立てることができると述べました。最後にDr. CACAは、AIは人間の創造性や共感力に取って代わる「人工的」なものではなく、人間の想像力を広げてくれるものではないか、と聴衆に問いかけてフォーラムを総括しました。
Mr. Haziq
