2017年度活動レポート(一般公募コース)第264号
マレーシアの図書館員が学術情報基盤構築スキームを学ぶ
京都大学からの報告
京都大学東南アジア地域研究研究所図書室では、2015年から継続的な人材交流を目的に、さくらサイエンスプログラムを活用し、「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」をテーマとして、東南アジア諸国の図書館員・図書館情報学研究者を招へいし、当研究所の学術情報基盤構築スキームを研修するとともに、国内連携機関における関連テーマに係る視察・実習を行っています。
本事業はすでに7回実施され、送り出し機関は東南アジア大陸部5カ国23機関73名、日本側受入機関は22機関におよび、国内外の個人・機関間の交流が促進されています。
今年度は10月にマレーシアのマラヤ大学・マレーシア工科大学・マレーシアイスラム理解研究所・南方大学学院・サラワク大学の5機関から、図書館員10名を招へいしました。加えて本事業に関心を寄せたサラワク大学から1名が参加を希望し、また、東南アジア地域研究研究所で招へいしたインドネシアのスンダ資料センターから1名、と全12名が参加しました。
一行は、10月22日に到着し、直後の台風によって初日・第2日のスケジュール一部の変更を余儀なくされたものの、以後はおおむね順調に研修日程を消化することができました。
研修日程(10月22日~31日)は、京都大学、立命館大学、国立国会図書館関西館、国立民族学博物館で行われました。京都大学では、東南アジア地域研究研究所内図書室・情報処理室・地図資料室、学内の附属図書館で研修を行いました。
また、国立情報学研究所学術コンテンツ課、東京大学経済学資料室からそれぞれ講師を招き、東南アジア地域研究研究所内で研修を行いました。国会図書館関西館、立命館大学OIC図書館のほか、国立民族学博物館を視察しました。
研修第3日目(2017年10月24日)
国立国会図書館関西館アジア情報課による館内案内で、同館内を視察
本交流事業では、従来東京とその周辺地域での研修を織り込んだ日程としていましたが、今回は招へい者に厳格なイスラム教徒が多いことから、彼らの食事・礼拝習慣を考慮した結果、京都とその周辺地域に限定しました。また、研修に際して、各受入機関に礼拝時間と場所を確保するよう事前に依頼し、各受入機関側も礼拝を配慮したプログラムを組んでいただきました。
今回研修の感想を概括するならば、マレーシア側の技術水準と研修意欲の高さに、日本の受入側が急遽その水準に対応したプログラム追加や講義内容の変更を行ったことです。
成果報告会でも、日本の小規模図書館導入用の参考として、サラワク大学から電子リソース認証方式の最新事例が提示されるなど、主客転倒する場面が研修の随所で見受けられました。
東南アジア諸国の中でマレーシアは、植民地宗主国英国の影響を強く受けた図書館モデルを構築してきており、高いリポジトリ・OPAC・デジタルアーカイブ技術を有しています。また、国立大学図書館間横断検索OPACも確立しています。
今回マレーシア各地から5機関が参加しましたが、成果報告会ではサラワク大学からの報告を契機として、招へい者間で機関間の地域格差や連携の欠如があらためて課題として認識されたようです。今回訪日した各機関からは、日本との継続的な技術情報交換、デジタルアーカイブズ構築やEJ高騰へのベンダーに対する対抗について国を超えた連携への期待が寄せられました。