2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第64号 (Bコース)
グローバル人材育成に向けた機能性環境浄化材料開発を基盤とする国際共同研究
千葉大学からの報告
さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2025年1月6日から25日までの20日間、本学大学院工学研究院共生応用化学コースの触媒化学研究室(一國伸之教授、原孝佳准教授)と環境化学研究室(町田基教授、天野佳正准教授)は、インドネシア・ガジャマダ大学の無機化学研究室(Santosa教授)とバンドン工科大学の物理・無機化学研究室(Permana博士)から大学院生3名・学部生3名を招へいし、本学独自の「材料表面修飾技術」と「構造解析技術」を供与して新たな「機能性環境浄化材料」の調製に取り組みました。
はじめに、キャッサバの加工で生じる残渣(キャッサバピール)を乾燥させた原料に、窒素源となる尿素、賦活剤である塩化亜鉛を様々な比率で混合・賦活することで、窒素ドープ活性炭を調製しました。得られた活性炭に、イオン性の水質汚染物質であるリン酸イオン(PO43-)の吸着を試みた結果、窒素ドープ活性炭には窒素ドープしていない試料と比べて4倍も多く吸着(およそ0.45 mmol/g)することがわかりました。昨年度、窒素ドープ活性炭が硝酸態窒素イオン(NO3-)を吸着することを明らかにしましたが、今回の取り組みでPO43-に対しても優れた吸着能を有することがわかりました。

次に、窒素ドープ活性炭にパラジウムを担持させた触媒の調製を試み、アルコールのカルボニル化合物への酸化反応へと適用しました。窒素ドープ活性炭にパラジウムを担持させた結果、およそ6 mmol/gものパラジウム担持が確認されたため、高い触媒反応が期待されました。しかし、調製した触媒でのアルコール酸化活性は満足のいくものではなく、この原因探索に多くの議論がなされました。これらの取り組みを通じ、環境浄化材料の表面官能基の定量手法を学んだ他、比表面積測定や各種分析手法・解析技術を習得してもらいました。
本コースのラボツアーも実施しました。協力頂いたのはバイオマテリアル研究室(河合繁子助教)、極限環境材料化学研究室(大窪貴洋准教授)、分子構造解析化学研究室(桝飛雄真准教授)、環境マネジメント工学研究室(松野泰也教授、吉村彰大助教)です。各研究室の先端研究や実験室・実験装置などを見学でき、本コースの研究をより広く理解してもらえたのではないかと思います。
また、産業技術総合研究所(つくば)の見学も実施しました。化学プロセス研究部門・化学システムグループの片岡祥博士(グループ長)に案内して頂き、同部門内の研究室や触媒化学融合研究センターを見学させて頂きました。片岡博士のグループのメンバーにはガジャマダ大学を卒業した研究者もおり、日本での研究や生活など貴重なお話しを聞くことができました。

さらに、千葉市南部浄化センター(下水処理場)の見学にも行きました。案内して頂いたのは久野所長を含む4名のスタッフです。処理過程ごとに処理水を透明容器に採取してもらい、処理水が澄んでいく様子を観察できました。水処理の詳細な説明を受け、また招へい者の質問に対しても丁寧な回答をもらうことができ、招へい者にとってまたとない経験となりました。

本プログラムの最終日には成果報告会を実施しました。研究室での活動に関して大学院生および学部生による報告、また浅草見学や日本未来館見学などの報告がなされ、質疑応答も活発に行われました。意見交換会後の修了式では佐藤智司副学長から修了証を授与していただきました。

昨年度のガジャマダ大学との交流に加え、今年度はバンドン工科大学とも研究交流を深められたことは大きな成果と言え、今後は主に大学院生の交流を積極的に図り、共同で研究を進める体制を構築していきたいと思います。
本事業を実施するにあたり、多大なご支援を頂きましたJSTに心より感謝申し上げます。