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2024年度 活動レポート 第55号:秋田県立大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第55号 (Aコース)

科学技術を用いた課題先進県秋田の観光促進
画像生成AIを使用した観光地・名物の画像生成手法に関連する交流

秋田県立大学からの報告

秋田県は「課題先進県」と呼ばれています。その課題の一つに観光事業の促進があげられています。観光産業の強化は、遠く離れたハンガリーでも期待されている部門の一つです。そもそも秋田県とハンガリーは、姉妹都市関係の市が3つ存在するなど、歴史的に緊密な関係にあります。双方の学生が秋田県で出会い、画像生成AIを用いた双方の観光地等の画像生成の課題に取り組むことにより、その絆を深めるだけでなく、世界の各地域で活躍できるようなAIグローバル技術者となるきっかけを学生に与えるべく、本事業は企画されました。
 令和7年1月、さくらサイエンスプログラムより助成をいただき、ハンガリー共和国のエトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)から8名の学生を招いて実践的な活動を中心とした国際的取り組みを行いました。ハンガリー人学生は丸1日くらいかけて秋田県まで移動しましたが、疲れも見せず、またけが等もなく無事に、そして意欲的に本プログラムに取り組んでくれました。ここに、遠いヨーロッパの国からやってきたハンガリー人と雪国秋田の日本人学生との交流活動について報告させていただきます。

活動レポート写真1
秋田県立大学竿灯まつりサークルとの交流

1.オンライン活動について

本プログラムには、ELTEから8名の学生が参加しました。日本での滞在期間は1週間と短いものでしたが、実際に来日する1か月前にオンラインミーティングを行い、双方の学生はすでにその時から協働を始めていました。第1回目のオンラインミーティングでは、双方の学生に観光に関するものなど、様々な課題が出されました。学生たちはそれぞれペアを組み、課題に取り組んだ成果を第2回目のオンラインミーティングで発表しました。ハンガリー人学生にとって日本や秋田県に来るのは初めてであった一方で、「共に課題に取り組んだ友人に会いに行く」という意味も含んだ日本訪問となりました。

活動レポート写真2
オンライン交流会の様子

2.秋田県立大学での活動について

【1月20日:第一日目】 

近代的な秋田県立大学の建物群と歴史的建造物に近いELTEのキャンパスを比較しつつキャンパスツアーを行いました。また同じヨーロッパ出身のカルロッタ助教から、日本の文化だけでなく、海外で働くことや日本に滞在する際に気を付けるべきことなど、様々な事柄に関する講義を受けました。午後からは担当教員の松原准教授から、生成AIの概要と仕組み、その応用と問題点に関する講義がありました。

活動レポート写真3
実習の様子

【1月21日:第二日目】 

本プログラム実施に際し、ハンガリー人学生は事前にChatGPTのアカウントを設定することを求められました。その他さまざまな準備が指示されていたため、二日目の本格的な活動はスムーズに展開されました。学生たちは秋田県立大学大学院棟のコンピュータールームに集合し、ChatGPTを用いたテキスト生成の実習を行いました。生成AIの出力をコントロールするための技術である、プロンプトエンジニアリングの技法を学びながら、まず日本や秋田のことについて調べる演習に取り組みました。また、この日は小説のストーリーを出力させる課題にも取り組み、それぞれ思い思いのストーリーを楽しみながら、生成に取り組んでいました。

【1月22日:第三日目】

学生たちは再び前日と同じコンピュータールームに集合しました。この日は画像生成AIであるDALL-E3を用いた画像の生成の課題に取り組みました。OpenAI APIを使ってプロンプトをDALL-E3に送るプログラムを使って、各々が好きな画像や日本の歴史や文化に関連する画像を生成しました。
 本プログラムの重要なテーマの一つは、「日本の持つ最新の研究や高度加工技術に触れることにより、より高い能力を持った技術者となるモチベーションを持たせる」というものでした。3日間の取り組みにより、AIを正しく使いこなすためのスキルやノウハウ、考え方を学ぶことができました。
 松原准教授が所属する経営システム工学科は、VRデータに関する研究も盛んです。午後には、本学のCAVE(箱型スクリーンシステム)の体験会も行われました。学生たちは実際にヘッドマウントディスプレイを装着し、日本の最先端技術の一つに触れることができました。その後、秋田県立由利高等学校を訪問し、それぞれの発表を含め、様々な交流が行われました。

活動レポート写真4
実習の合間に書道教室に参加

【1月23日:第四日目】

秋田県立大学の研究施設の一つ、「アグリイノベーション教育研究センター」を訪問しました。センターではAIやロボット技術を用いたスマート農業に関する研究・開発が盛んに行われています。ハンガリー人学生たちは、いくつかの講義を受けた後、実際にドローンや遠隔操作除草機などを操作して最新のテクノロジーとスマート農業の今後の可能性について実習を行いました。また、観光という観点から、希少家畜育成が盛んなハンガリーの学生にとって、ブランド牛を飼育している本学の施設は大変興味深いものでした。午後には秋田キャンパスを訪問し、茶道部や秋田県の夏祭保存サークルの学生と一緒にお茶会や祭りの演技を体験しました。

【1月24日:第五日目】

「観光とAI」というテーマで活動を行ってきたハンガリー人学生は、最後に秋田県有数の観光地である角館地区を訪れました。学生たちは様々な施設を訪問する間に日本の観光産業の特徴である「おもてなし」に多く触れることができ、今後の学習や研究につながる訪問となりました。また、「いぶりがっこ」や「きりたんぽ」を味わうことのできる伝統的な食堂にもお邪魔し、日本ならではの観光に関する特徴を大いに学ぶことができました。

活動レポート写真5
アグリイノベーション教育研究センターへの移動の途中で「生まれて初めての海」

3.プログラム後について

全プログラム終了後、ハンガリー人学生は帰路につきました。駅や空港まで本学学生が見送るなど、別れを惜しむ光景が最後まで見られました。最後は本学を代表して本学教員が羽田空港にてお見送りをしました。最後まで、「日本観光特有のおもてなし」を実行できたプログラムとなりました。本プログラムをきっかけとして、ELTEと本学は相互協定を結ぶことになり、今後いっそうの交流が期待されます。
 最後になりましたが、本プログラムの成功のため様々にご支援いただきましたJSTさくらサイエンスプログラムの関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。