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2024年度 活動レポート 第52号:鈴鹿医療科学大学

2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第52号 (Bコース)

中国の若手研究者とともに鍼灸の治療効果における分子的機序の検証に挑戦

鈴鹿医療科学大学からの報告

2025年1月14日~1月23日の10日間、鈴鹿医療科学大学は、中国の天津中医薬大学から博士課程大学院生2名、修士課程大学院生2名、学部生2名、引率の若手教官2名の計8名を招へいし、本学東洋医学研究所において「鍼灸穴位区域における鍼導入効果のメカニズムの研究」を実施した。

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研究交流合同ミーティング

天津中医薬大学は50年以上の歴史を持つ医療系の公立大学で、医学、理学、文学、管理の4学科の中に中医学、鍼灸推掌学、中西医臨床医学、中薬学、看護学の専攻が設置されている。本学と天津中医薬大学は、1998年から海外友好大学協力協定を結んでおり、これまで天津中医薬大学から本学東洋医学研究所に若手教員が派遣され学術交流や共同研究を行っている。

今回のプログラムでは、国際的な重点プロジェクトである「鍼刺局所の微環境分子ネットワークに基づく鍼効初期の制御メカニズムの研究」に基づき、本学東洋医学研究所において学術交流と技術セミナーが行われた。参加者達は東洋医学研究所において、動物実験で作成した刺鍼部位の試料をリアルタイムPCR等の分子生物学的手法や免疫染色で解析し、「鍼灸が何故効くのか」を局所における鍼刺激の作用を分子的な観点から検証するための手技を習得した。また、実習の後にはセミナーが開催され、日中双方の研究者で観察結果を迅速に共有可能な体制が構築された。これらにより、協力プロジェクトを円滑に実施するための基礎が築かれた。

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実験試料作製手順および免疫組織化学染色の説明
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病理組織切片の作成

■医療・福祉施設や大学施設、科学館を見学

招へい者達に技術交流だけではなく、我が国の医療現場も体験してもらうため、本学付属の鍼灸治療センター、桜の森病院、桜の森白子ホームの見学を行った。日中の医療・福祉施設の差異を理解することが今後の中国の高齢者医療の発展に対する指針となると考えられる。また、本学の薬学部、保健衛生学部(鍼灸サイエンス学科、放射線技術科学科)の見学も行われ、日本の医療科学教育について理解を深める機会を得た。薬学部の模擬薬局や災害時対応の移動式薬局、放射線技術科学科での最新のMRIやCT技術の解説は大変貴重な体験となった。さらに、鍼灸サイエンス学科では日本独自の鍼灸治療や鍼灸教育の解説を受け、今後の研究や臨床に対するモチベーションが高められた。週末には名古屋市科学館を見学し、医療分野以外の日本の科学技術にも触れることができ、大変貴重な体験となった。

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名古屋市科学館を訪問

本プログラムによる共同研究と医療科学技術の交流を通じて、日中双方で国際的な視野を持つ若い研究者の育成を強化することが可能になった。これらの成果により、鍼灸の臨床効果・作用メカニズムを解明し、西洋医学との相互補完的な統合医療システムの構築に貢献することが可能になると考える。

今後は、本交流プログラムの実施を契機として、これまでに行われている留学や共同研究、若手教員の招へいをさらに拡大する予定である。

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招へい者による成果発表