2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第18号 (Cコース)
機械学習による農業生産予測のための気象観測データ解析技術研修
~20年前の出会いがきっかけとなった「さくらサイエンスプログラム」~
弘前大学大学院理工学研究科
教授 谷田貝 亜紀代さんからの報告
2024年9月2日から11日にかけて、さくらサイエンスプログラムによりインド南部のタミルナドゥ農業大学(TNAU)から大学院生7名と引率者(Venugopal Anandhi 教授)、計8名を招へいし、C.科学技術研修コースのプログラムを実施しました。
近年、気象気候分野や農業分野でも機械学習が急速に展開されるようになり、精緻なデータが必要であることから、実施担当者(谷田貝)らが開発・公開した日降水量グリッドデータ(APHRODITE)は世界的に用いられています。今回の研修では、主にその作成手法を教授し、本学理工学研究科今井教授ら学内外の研究者の協力を得て、機械学習の基本手法、気温データ作成など、対象地域をインド南部に限定した技術研修を行いました。
さらに、京都大学名誉教授梅津氏による気候変動の農業への影響に関するオンラインセミナーに参加したほか、気象庁気象研究所を訪問してTNAUから2カ月派遣されている若手研究者との研究交流を実施しました。研究交流では帰国後の数値実験データの共同利用や研究テーマについての意見交換を積極的に行いました。これらの解析技術研修を経て、本プログラム終了後も効果的にインドでも解析研究も進められることとなりました。今後も継続的に研究交流を進めていくことが期待できそうです。
本プログラムを実施することになった経緯・ご縁は、私が京都の総合地球環境学研究所に在職していた20年ほど前にさかのぼります。当時、APHRODITE関連の仕事でTNAUを訪問する機会があり、帰国後、研究所の梅津准教授(当時)に「現地でGeethalakshmiという聡明な農業気候分野の准教授のお世話になった」旨を報告したところ、彼女を招へい教授として京都に3カ月招くことになりました。そして、Geethalakshmi教授と私は良き友人となりました。
それからだいぶ日が経たった2023年。突然TNAUから私に連絡があり、TNAUで1カ月授業をすることを頼まれました。行ってみると、なんとGeethalakshmi教授が、TNAUのVice Chancellor(学長)になっていたのです!そして、本滞在中にGeethalakshmi教授のサポート役を務めていたのが、本プログラムの引率者として来日したAnandhi教授です。Anandhi教授の「短期間、学生たちを日本で学ばせたい」という希望を汲み、今回のJSTさくらサイエンスプログラムに応募することになったのです。
本プログラムでは、バックグラウンドが異なる招へい学生たちが短期間で効率的に学ぶためには、我々が使う計算機(linux)に慣れてもらう必要があり大変でしたが、 1年前から交流したAnandhi教授を通じてコミュニケーションが良くとれていたので、事前学習を含め、順調に進めることができました。
滞在期間中の週末には、本学気象学研究室の学生らと一緒に弘前公園、ねぷた村を訪問して多くの文化体験をする機会もあり、学生らとの交流を大いに深めることもできました。
本プログラム招へい学生たちは、学業面以外でも大変優れた若者たちで、8人でバラバラにならないでとか、電車内や授業中は携帯電話をOFFにする、とか、列車内は混んでくるから一人分以上の席を占領しないとか、エスカレーターは片側に立つとか、一度言うとすぐ理解してくれました。他の研究者からも評価が高く、「インドで大学院生をするような人は裕福なのか、育ちがよくてお行儀がよいですね」とのコメントがありました。
ひとつ困ったことがあったとすれば、最後の最後に、成田空港に到着したときに、彼らの出国便が、航空会社の事情でキャンセルになったことです。空港に送りに行ってくれた学生には本当にお世話になりました。空港到着後12時間くらいたって、やっと別ルートでの帰国のため出国ができました。