2024年度活動レポート(一般公募プログラム)第4号 (Aコース)
ラオス国立大学の学生が海洋プラスチックごみ問題を実践的に学ぶ
人間環境大学からの報告
さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2024年8月21日から8月27日までの7日間、ラオス国立大学から5名(引率教員1名/教員1名・大学生3名)を招へいし、海洋プラスチックごみに関する交流・体験プログラムを実施しました。
ラオスは内陸に位置していることから、海は身近なものではありません。そのため、海洋プラスチックごみは知識として知っていても、どのようなものか、どのようにして発生するかを自身で体験を通じた知識として得ることは難しい状況です。本交流プログラムでは、海洋プラスチックを採取し、それらがどのような材料でできているかを分析することで海洋プラスチックごみ問題を実践的に学ぶことを目的としました。
【海洋プラスチック採取と分析】
愛知県西尾市の佐久島にて、海洋プラスチックの採取を行いました。佐久島へ向かう船着き場では海水に濁りがあり、沖合に出ると澄む現象について船中で説明を行いました。さらに、海域の貧栄養問題についても説明し、愛知県が取り組んでいる水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験について紹介しました。
佐久島で採取した海洋プラスチックは、愛知県立岡崎工科高等学校のフーリエ変換赤外線分光分析装置(FT-IR)にて同定を行いました。ポリエチレンやポリプロピレンなど、広く使用されている物質が多く検出されました。外観から、都市部の生活で発生したごみが河川を経由して佐久島に流れ着いたことも予想されました。ラオスは国際河川であるメコン川が流れており、自身の国からメコン川に流出したプラスチックごみの行方についても考えているようでした。
【文化交流】
名古屋港水族館を訪問しました。佐久島では潮間帯にいる貝類や甲殻類、藻類を観察することができましたが、ラオス国内の河川や湖沼に生息するそれらと異なる点を見いだすのが難しかったです。しかし、名古屋港水族館にて魚類を観察することで、泳ぎ方や生息域、捕食行動から海水魚と淡水魚の違いを理解している様でした。また、メコン川には絶滅が危惧される淡水のイルカがいるのですが、それらを目にする機会は極めて少ないそうです。そのため、イルカを近くで見ることで、希少となった生物の保全の必要性も感じとっていました。
修了式では、海洋プラスチックごみの分析結果と日本での活動について3名の学生が報告を行いました。
本研究交流プログラムでは、日本への留学に強い関心を持つ学生・若手研究者を中心に招へいしました。今回の来日をきっかけにさらに日本への興味を深め、日本へ留学するための勉学と研究に励んでいるようです。また、実験を指導した本学学生も実際に英語でコミュニケーションをとる難しさと楽しさを実感し、英語の勉強を進めています。本学学生の英語によるコミュニケーション能力の向上と国際感覚の醸成を促進する良い機会になりました。昨年度にも参加してくれた本学の学生は、英語を一年間勉強し、今回の交流事業に臨んでくれました。このような貴重な機会をいただけたことに、さくらサイエンスプログラムならびに関係者の皆様に深く感謝いたします。