2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第242号 (Aコース)
グローバルイノベーションハブシティにおけるDX、GX技術の発展に関する交流
公益社団法人科学技術国際交流センター(JISTEC)からの報告からの報告
2024年3月3日~3月9日、上海市科学学研究所と長江デルタG60科学技術イノベーションバレー共同事務局から若手研究者6名と引率者2名を招へいし、A.科学技術体験コースのプログラムを実施した。
【1日目】
科学技術国際交流センター(JISTEC)のスタッフが招へい者らを空港へ出迎え、ホテルニューオータニ東京(大崎駅)にてオリエンテーションを行った。
【2日目】
日中両国の産業におけるDXとGXのトレンド、特にEXやバッテリー産業の現状と今後の方向について、三井物産戦略研究所の研究者と意見交換を行った。同日の午後に、順天堂大学(文京キャンパス)医学教育歴史館を見学し、健康データサイエンス学部の孫哲先生からDX人材育成のカリキュラムについて説明を受けた。双方はDX人材育成の必要性と緊急性を共有しながら、課題について意見交換をした。さらに、上海の大学や研究機関との交流、共同研究の方向性についてもディスカッションを行った。
【3日目】
東京都のTIB(TOKYO INNOVATION BASE)を訪問し、スタートアップによりDXを推進する都の取り組みについて学んだ。また、上海側より科学研究所の役割および研究内容の説明、上海市の産業発展やスタートアップ育成に資する政策提言などを行った。双方は東京都と上海市のスタートアップに関する特徴を明らかにして、今後の共同支援に関する情報交換を一層強化すべく合意した。
午後には、東京理科大学にて藤島昭先生から「GXに資する光触媒技術の研究開発のトレンド」の説明を聴き、感染症や水素エネルギーへの応用について意見交換をした。また、基礎研究の独創性について、招へい者たちは、「行き詰まりこそブレークスルーのチャンスだ」という藤島先生の言葉に大きく関心を示し、さらに基礎研究のあるべき姿について議論を展開した。
【4日目】
東京都立大学、電気通信大学を訪問した。東京都立大学では、GXに資する微細加工研究室、電気通信大学では、情報処理における省エネ技術研究室を見学した。招へい者たちは「大学の研究はいかに産業の橋渡しとなり、GXに貢献するか」について理解を深め、多摩地域の産学連携の雰囲気を肌で感じながら、両国の違いについて議論を行った。
【5日目】
午前中にTAMA協会を訪問した。TAMA協会では産学官でのひと・もの・かねの繋がりの推進の仕組み、および両国の共通点と相違点について意見交換を行った。中国側は政府主導によるものが多いが、日本の「協議会を主とする推進体制」を参考として、両都市の民間の交流を促進すべきという結論に至った。
午後には、一橋大学のソーシャルデータサイエンス学部を訪問した。西本館の柱に飾ってある動物の由来から、日中関係の発展へと話題が展開された。そして、大学の沿革から時代と共に歩んできた革新精神、さらに、新しい時代に向けてソーシャル・デジタル・サイエンス学部を設立した意義やカリキュラムデザイン上の工夫などを学んだ。招へい者側からは上海および長江デルタ地域におけるデジタル技術や産業のトレンドを共有し、人材育成上の課題や取り組みについて意見交換をした。
【6日目】
羽田空港FUTURE LAB HANEDAを見学した。ここでは、DXやGXを含め、新しい製品の開発およびPOC事業に関する説明が行われた。また、カリスマ清掃員と呼ばれる新津春子さんから、ハイアールと共同開発した吸引式床拭き掃除機MIZUKIの経緯、双方の役割分担、課題などに関する説明を受け、国際協力の成功の要点について意見を交わした。
また、アジア経済研究所にて、丁可主任研究員と日中両国のイノベーションにおける中小企業の役割について意見交換を行い、中小企業の研究開発による進化の力を再認識した。
【7日目】
帰国前に、招へい者の訪問感想に関する聞き取り調査を行った。全員初めての日本訪問ではあったが、日本の科学技術、歴史文化などに興味を持ち、「将来、研究者として再来日したい」との希望が多く聞かれた。JISTECは、7日間の同行訪問により、カウンターパートである上海市科学学研究所への理解を深め、将来へつながる共同研究などの協力関係の強化を推進することができた。