2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第227号 (Aコース)
都市を未来につなぐ: 都市災害の回復と対応のための科学技術キャンプ
東京大学先端科学技術研究センター
廣井研究室からの報告
アジア工科大学 工学技術学部 構造工学プログラムのチャイタニャ・クリシュナ研究室より2024年2月12日から7日間、タイ、ミヤンマー、バングラデシュ、ネパール、インド、スリランカ国籍の修士・博士課程の学生9名と教員1名を招へいし、東京大学の教員18名、卒業生など外部講師4名にもご協力いただき、プログラムを実施しました。週末は首都圏外郭放水路を見学し、都市防災の現場を体験しました。本プログラムは、国際共同研究や双方の大学への留学など、継続した交流計画を考え始める機会とすることを目指しました。
■本郷キャンパスでの交流
日本文化教室早朝、東京に到着した当日の夕刻、祝日でしたが大学院工学系研究科古市由美子教授による日本文化教室を実施。茶道の講義を通して日本文化に触れ、日本語による簡単な自己紹介の練習をいたしました。
環境学翌日の講義は環境学がご専門の東京カレッジ副カレッジ長・味埜俊特任教授にお願いいたしました。味埜教授はアジア工科大学にて助教をされていたご経歴がございます。味埜先生の講義によって招へい者の緊張感も和らぎ、熱心に受講いたしました。
減災まちづくり分野廣井悠研究室大津山特任講師、四井助教による講義と、学生・招へい者の研究発表を実施しました。
講義では令和6年能登半島地震の状況や米国のハリケーンなど多くの事例より防災と復興について学びました。講義終了後、廣井研究室による歓迎会が行われ、招へい者は一日目に学んだ日本語を使って簡単な自己紹介し、交流を深めました。
■駒場キャンパスでの交流
駒場キャンパスの先端科学技術研究所と生産技術研究所には、招へい者にとって魅力的な研究室が多くあります。特に先端研は文系と理系の研究室が共存し、学際的な研究をしています。各自の専門分野との学際的な研究を想像しながら研究室を訪問いたしました。
身体情報学分野 稲見・門内研究室では、宮崎研究員によるVRを使った運動機能維持のトレーニングプログラムを体験いたしました。屋外では杉山研究室による試運転中の「壁面太陽光パネル」について渡辺特任准教授より講義をいただきました。また、研究の現場であるクリーンルームでは浅見助教から、さらに、河野研究室山口助教からも再生エネルギーの仕組みについてご講義いただきました。インクルーシブデザイン分野の並木研究室では、車いすを利用する研究者の為の化学実験室設計を研究しています。VRを使い、当事者の視点でバリアフリー実験室を体験いたしました。
昼食は先端研フェローの岸輝雄先生を囲み国際共同研究や留学についてお伺いいたしました。
先端研には昭和初期に制作された実験装置である風洞が現在でも存在します。この風洞では当時の航空機の開発だけではなく、新幹線や高層ビルが受ける風についての実験データを収集する大型実験装置としても利用されました。招へい者は最先端の研究と日本の工学の歴史に同時に触れました。
生産技術研究所では目黒・大原・沼田研究室を訪問し、幅広い防災分野の講義と学生発表が行われました。歓迎会では、起業した卒業生のメノン氏による講義が行われ、目黒公郎研究室で研究をした何世代もの研究者が集う貴重な場となりました。
■修了証授与式
講義最終日には先端科学技術研究センター所長杉山正和教授によるエネルギーシステム分野の講義が行われました。日頃、各自の防災のテーマで研究している招へい者にとって、視野を広げて学際的な研究を真剣に考え始めるきっかけとなりました。
招へい者たちは、濃密な一週間の講義が終了した達成感の中で杉山所長による修了証授与式が行われました。
■学外研修
首都圏外殻放水路地下防災神殿とも呼ばれる首都圏外角放水路を見学し、首都圏の都市計画と水害対策について学びました。施設内には工学的技術を解説する展示があり、招へい者たちは水門やポンプ等の技術を学ぶことができました。
実施にあたりご協力いただいた皆様に、感謝申し上げます。本プログラムでの経験が招へい者の研究の糧となり、各国の都市災害の回復と都市を未来につなぐ技術発展への手掛りになりますと幸いです。今後、継続した交流が続く事を願っております。