2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第220号 (Aコース)
美しい宮崎で絆を深めた、日中大学生の科学技術交流
宮崎大学からの報告
2024年3月5日~2024年3月11日、中国重慶理工大学から学生11名、教員2名、引率者1名の計14名(内自費参加学生3名、教員1名)を招へいし、科学技術体験コースのプログラムを実施しました。
<3月6日>
【教育研究紹介】工学部機械知能工学プログラム実施主担当教授によるさくらサイエンスプログラムの趣旨とこれまでの実施についての説明の後、工学部長を表敬訪問し、双方の大学の紹介、交流協定に基づく今後の学生交流等について和やかな雰囲気の中で意見交換を行いました。機械知能工学プログラムの教育研究紹介では、参加者を3グループに分け、流体実験室、ロボット研究室、生体工学研究室の研究や教育を体験しました。
【OB講演会】先輩から後輩へ(私の研究と留学)重慶理工大学OBで、本学の博士課程3年生による特別講演を行い、研究のみならず、自分の留学経験や生活体験についても話してもらいました。
<3月7日>
【特別講演】「スマート畜産システム」と先端研究体験デジタル技術を利用した畜産業の研究および、これから農畜産業におけるAIの利用とその問題点について英語で説明しました。講師の質問に積極的に回答し、さらに招へい学生からも多くの質問が投げかけられ、双方向授業が実現できました。傍聴した教員から「教室の雰囲気がよく、楽しい授業ですね」との感想がありました。研究体験では、豚の体重を見るゴーグルや太陽光太陽熱の利用技術に関する研究を体験しました。
発明問題解決手法の授業では、渡り鳥の飛行編隊の理由についてさまざまな視線からの検討と得られた結果を説明しました。「技術者としての素質」として、世の中の常識を鵜呑みにせず、独自の発想と分析で真実を探究することの重要性を理解しました。デザイン教育では、日本人学生も参加して、エダシャク虫型ロボットの製作を行いました。デジタル技術で作成した関節の部品を組立て、動きを確認することにしました。招へい学生は選抜された優秀な学生であることから、手の動きが早く、部品を迅速に組み立てることができました。しかし、完成した各部品をつなぐと予想の動きを得ることがでず、チームワークの難しさを実感しました。動作は必ずしも完璧ではありませんでしたが、短時間で予想以上の出来栄えとなり、問題解決は帰国後の宿題としました。
<3月8日>
【特別授業】日向神(天孫降臨から日本建国までの話)宮崎を舞台にしたに日向神話にあった神々の話をしました。中国の神様と日本の神様の違いから始まり、神々の系図を見ながらイザナミとイザナギから天照大神、邇邇芸、天孫降臨、海幸と山幸、神武天皇、そして日本建国までの神話を説明しました。見学を予定している鵜戸神宮、青島の裸祭り、真名井の滝、天安河原夜神楽についての説明も含まれ、一行は初めて触れる日本文化に高い関心を示しました。
【宮崎大学学内Labツアー】医学部見学(ロコボット、Hal)医学部整形外科のリハビリセンターを訪問し、リハビリロボットHALの体験、ロコモ予防や下肢術後のリハビリ用ロコボットを利用した対抗戦で盛り上がりました。日本の医療、病院の環境と患者と看護師の親密な関係には佩服したようでした。
【企業見学】ものづくりの最先端を学ぶ宮崎県西都市にある自動車等のプロトタイプモデルの製造会社ウィント(Wint)を訪問しました。従業員が手で叩き出した、世界に唯一のモーターショー用の車に感動し、この会社に勤めたいとの学生もいました。
<3月9日>
【科学技術学習】宮崎科学技術館宮崎科学技術館を見学しました。さまざまな体験器具とアトラクションに触れ、科学現象や技術の仕組み、宮崎の自然、生態を理解しました。たくさんの子供が入館している様子を見て、幼少の時期から科学技術に触れられる日本の教育の取り組みに感心していました。
【宮崎の自然】美しい日南風景及び日本文化の旅日向神話に出た鵜戸神宮と美しい日南海岸を見学しました。前日の授業で聞いた神武天皇父の誕生の話を思い出しながら、洞窟にある神社に参拝して乳岩にも触れることができました。参加者のほとんどは内陸の重慶出身で、海を見たことがない人も多くいました。宮崎の美しい南国風景、鬼の洗濯板、そして、澄み切った青い空に感動しました。
<3月10日>
【文化と自然体験】天孫降臨の地を訪ねて神話の故郷、天孫降臨の地である宮崎県高千穂町を訪ね、授業で説明した天照大神と須佐男命との誓約(うけい)に使ったとされている真名井の滝の水を写真に収め、天岩戸から天照大神を誘い出すため八百万の神々が集まり作戦会議を開いた場所を廻り、神霊に満ちた日本の秘境の風景を心に残しました。
【送別会】あっという間の7日間でした。帰国前の夜、ホテルで修了式と送別会を行い、実施主担当教員から一人一人に修了証書を渡しました。参加者たちは、「このプログラムによって、日本の先進技術と教育研究、日本人と日本文化を自分の目で確かめることができ、たくさんの感動が心に残った」「留学等の機会などでまた日本に来たい」などの感想を述べていました。また、最後に記念品として、日本の伝統工芸品博多人形を送りました。数種類の博多人形があったので、包み箱に番号を書き、「あみだくじ」で決めました!
<3月11日>帰国
一行は福岡から上海経由して夜11時過ぎ、重慶に無事到着しました。
「春に三日の晴れなし」と言われていますが、プログラム期間中は二日目の授業以外、ずっと快晴に恵まれ、美しい宮崎を満喫しながら日中の絆を深めることができました。
■実施責任者のコメント:
日中関係が冷える中、民間の交流、大学においては日中学生の交流が極めて重要です。今回の計画は日本の教育研究の紹介の他に、日本文化と日本社会等の紹介・体験にも工夫しました。先進的AI研究、医工学研究、発明教育、日本人学生との共同で実施したデザイン教育、先端のものづくり技術の体験と、日本神話、宮崎の自然、宮崎大学の学習環境、日本の食文化もできる限り取り入れました。いろいろ体験して、「日本を好きになってほしい!」を念頭にした1週間でした。その結果、アンケートから日本に対する印象の問いに対して、体験参加前後、「not so good」から「good」、「very good」に変わった学生が3名いました。また、「日本に留学したいか」の問いには全員が肯定的な回答をし、「Definitely wish」が5名もいました。英語による回答のため、言いたい感想を自由に表現できていないことを残念に思いますが、送別会で中国語によって述べられた感想はアンケート以上の高評価でした。ぜひ、この取り組みを続けていきたいと思います。