2023年度 活動レポート 第215号:東京農業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第215号 (Bコース)

フィリピンの若手研究者との国際共同研究
~バナバから糖尿病患者に資する技術創出を目指して~

東京農業大学からの報告

 令和6年1月21日から2月9日までの20日間、フィリピン大学ロスバニョス校から3名の教員と7名の研究者を招へいして、フィリピンで栽培・自生しているバナバ(オオバナサルスベリ, Lagerstroemia speciosa L.)という作物に関する国際共同研究活動を実施しました。
 バナバはフィリピンにおいて千年以上もの永きにわたって伝統的に栽培され、民間薬として活用されてきました。その効用は糖尿病をはじめ、肥満、便秘、皮膚病など広範囲にわたっており、とくに2型の糖尿病に対して特効的な作用があることが知られています。 2型糖尿病は現在、先進国だけでなく途上国でも深刻な問題となっており、世界保健機関によると、2010年から2030年にかけて、成人の場合、先進国では20%、途上国では69%の増加が予想されています。特にフィリピンにおいては、現在の成人の糖尿病患者数は3000万人に及び、国民の健康問題となっています。糖尿病は慢性的な疾患であるため、合併症を含めた治療に要する医療費は長期間にわたって高額になり、国民経済に大きな負担をかけており、この問題に対しては、経済的な対策が急務となっていますが、高度な医療技術や治療法にかかるコストを削減しつつ、健康で文化的な生活を維持するためには、医食同源という言葉が示すように、天然物由来の安全かつ有効な機能性食品の開発が効果的であると考えられます。 そこで、フィリピンと日本の研究者が共同で取り組む研究によって、広く世界中の糖尿病患者に資する技術を創出するための、共同研究関係の構築をスタートしました。

  初日に行われたオープニングセレモニーでは本事業の紹介、双方の自己紹介、日本での生活や研究活動における注意点に関するオリエンテーションを実施し、さらに15年以上バナバに関する研究を行っている教員からこれまでのバナバ研究の概要と今後どのような展望が望まれるかに関しての講義を行い、その後参加者との活発なディスカッションを展開しました。

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オープンニングプログラムの様子
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バナバに関する講義の様子

 翌日から、国際共同研究を開始しました。研究内容としてはこれまで本学で行われて来たバナバに関する分析方法をベースとして、今後双方で行う必要のある分析方法の共有と新たな手法の確立を目指し、本学の教員および大学院生と一緒に共同研究を実施しました。 また多くの招へい者が初めてであったHPLCやLCMS、GCMSなどの機器を使用した分析も体験してもらい、彼らにとって新たな技術に触れ、サンプルのやり取りをするうえで必要な分析の前処理のイメージを共有しました。フィリピンでは、招へい者の多くがフィールドでの研究をメインとするようでしたが、実施前に行ったヒアリングでは多くの方が実験室でのラボワーク技術の習得を希望していました。最初は慣れないこともあったようですが、今回の共同研究で希望通り、一通りのことを伝えることができました。

活動レポート写真3
研究活動の様子

 最後に行ったクロージングプログラムでは、研究成果と今後の展望についてのプレゼンテーションを行ない大学院生および教員も含めてディスカッションを実施しました。このディスカッションでは、本共同研究で得られた成果を持ち帰り、今後お互いの機関がどのような位置づけで今後の研究を進めていくかについて話すとともに、パートナーシップを強めることができました。

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クロージングプログラムの様子

 今回の共同研究による交流は、バナバという植物に関する研究を通して両国の研究者や若手教員たちの長期的なパートナーシップ形成につながる、とても充実した共同研究活動であったと思います。この交流を嚆矢に、研究者や教員たちがさらなる研究交流を深め、糖尿病という社会問題に対する解決に寄与することを目指し、これからも共同研究体制を続けていきたいと思います。

 最後に、このような機会を与えていただいた「さくらサイエンスプログラム」、本学の教員・学生・事務の皆様に心からお礼を申し上げます。