2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第212号 (Aコース)
世界最先端の科学技術と人間科学の融合の多面的理解
東北多文化アカデミーからの報告
2024年1月21日、國立南投高級中学、台北市立大同高級中学、各校2年生四名と教員一名の総勢10名が台北松山空港から羽田空港に入国した。
【1月22日】
朝、羽田から仙台に移動、なんとか無事に新幹線に乗り込み、昼前には仙台に到着し、午後の活動場所である東北大学医学部に移動した。東北大学クリニカル・スキルスラボで救急の際の心臓マッサージや気管挿管などを医学部の教官の方から丁寧に教えていただき、学生たちは真剣に取り組んだ。
【1月23日】
東北大学医学部メディカル・メガバンク機構にて、「東日本大震災をきっかけとした医療情報とゲノム情報を複合させたバイオバンクの構築」についてのレクチャーを受けた後、スーパーコンピューターや解析の設備を見学した。コロナをはさんで、特に海外の高校生たちの機構見学は久々だということだった。午後、虫明元教授から日本で大きな問題となっている「孤立・孤独の問題と脳科学がどのように関わるか」、「身体の健康と心の健康との関係」などについての講義があった。脳や脳科学について学生から多くの質問が投げかけられ、活発なやりとりが行われた。
【1月24日】
東北大学災害科学国際研究所を訪問し、今村文彦教授、タイのNaruethep先生などに津波のメカニズム、地震が建造物に及ぼす影響などについて、PPTや映像などを使って、わかりやすくご講義いただいた。
午後は次年度から本格始動になる次世代放射光施設ナノテラスの内部を特別に見学させていただくことができた。写真撮影や録音は不可だったため、物理学の専門的なお話と大きなホールのような場所に点在する大型機械の説明を、現場でなんとか結び付けて理解しようとする学生たちの姿が印象的だった。一月下旬で、雪交じりの風が吹きつける寒い日だったが、元気に青葉山での講義を終えて、ホームステイファミリーの待つ仙台一高へと向かった。
【1月25日】
仙台一高での歓迎行事の後、せんだい3.11メモリアル交流館を訪問した。東日本大震災から13年が経過する中で、前日の災害研での講義とはまた違った、地元のボランティアの方や交流館のスタッフの方のお話を、通訳を通して伺うことができた。南投高級中学がある南投県もかつて地震による大きな被害を受けた地域であることから、学生たちは真剣な面持ちでお話に聞き入り、展示を見ていた。
【1月26日】
仙台での活動の最終日である。東北大学電気通信研究所の曾加惠准教授から脳科学と心理学の講義を、本間尚文教授からは暗号技術を使った情報セキュリティについての講義を受けた。台湾ご出身の曾先生の授業は、毎回双方向的なたくさんの仕掛けがあり、学生たちは楽しみながら、頭をひねりながら、とてもアクティブに学んでいる様子が見て取れた。この日は仙台一高の学生も、一緒に同じ講義を受けており、ふだんの何気ない会話だけではない、知的なやりとりを新鮮に楽しみながら、課題に取り組んでいた。
翌日早朝の羽田空港からの出発になるため、研修の全日程を終えて夕方の新幹線で移動した。仙台一高のホームステイや交流プログラムで関わったたくさんの学生さんに見送られて名残惜しそうではあったが、お互いの再会を期して、仙台を後にした。
寒い一月に温暖な台湾からの招へいについてはいろいろと心配もあり、実際体調を崩す参加者もあったが、深刻な問題には至らず、事故もなく無事にプログラムが終えられたこと、学生たちがどのプログラムにも積極的に取り組んで、専門的な内容にも数多くの質問を投げかけてくれたこと、日本での進学にも大きな関心を寄せてくれたことは、プログラムの受け入れ機関として何よりの喜びである。