2023年度 活動レポート 第82号:大阪公立大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第082号 (Aコース)

機能性新物質の創成に挑戦する分子科学研究に基づいた台湾化学系学部生応援プログラム

大阪公立大学理学研究科
教授 松坂裕之さんからの報告

 コロナ禍のもとでのオンライン開催 を経て4年ぶり に対面方式で実施された本プログラムでは、国立台湾師範大学において選抜された、化学の卒業研究に従事している優秀な学部4年次生、化学を学ぶ意欲にあふれ、早期に研究室に在籍して研究活動を開始している学部3年次生(合計9名)および引率教員(1名)を本学に招へいしました。1週間の滞在期間中に、本学理学研究科化学専攻において機能性新物質創成にむけた第一線の研究を展開している3名の教授による特別授業と体験実験(3日間)、招へいされた学生とホスト側大学院生とによるグループディスカッション(1日)および大阪市立自然史博物館の見学(1日)を行いました。

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国際交流会館(I‑wing なかもず)前にて

 特別授業においては、学部レベルで学ぶ基礎的な無機化学・有機化学・物理化学の内容が最先端化学の開拓においていかに重要な基盤となっているかを理解することに重点をおき、招へいされた学生が基礎化学を学ぶ意欲をさらに高めるよう特に配慮がなされました。体験実験は、講義にひき続いて講義担当教授の研究室において実施しました。参加者が興味をもってとりくめるよう、当日受講した講義内容と密接に連動した先端化学に関わる内容の実験テーマを実施した結果、全員が非常に積極的に参加してくれました。

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特別授業:クロスカップリング反応
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体験実験:パラジウム錯体触媒を用いたSuzuki‑Miyauraクロスカップリング反応

 さらに、招へいされた学生(9名)とホスト側大学院生(9名)とが各自の研究内容を発表し合い、その内容に関して質疑応答を行うグループディスカッションの場においては、昨年までのオンライン開催の際とは比較にならないほど多くの質問、コメントが自主的に交わされ、予定していた討論のための時間を超過することもしばしばでしたが、挙手により発言の意思を示す参加者がいる限りディスカッションを継続しました。オンライン形式でなく対面形式で実施するためには参加者の移動のための時間と費用とを要することは言うまでもありませんが、参加者同士が一堂に会して直接話し合う機会の大切さを改めて認識するとともに、継続して本事業を実施してきた手ごたえを実感した次第です。

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グループディスカッションにおける研究発表

 理工系分野におけるアジア地域との大学間交流は主に大学院生レベルを中心に展開されており、大阪公立大学においても、学術交流協定に基づいて台湾をはじめアジア各国との間で教員および大学院生の招へい・派遣や合同シンポジウムの開催等を行ってきました。これらの活動を通してホスト側とゲスト側の双方の機関に所属する学部生・大学院生が大いに刺激を受け、結果として教育・研究環境の向上に繋がっています。
 大学院生レベルを中心に展開して成果を挙げてきたこれまでの状況をふまえ、今後、未来を担うアジア地域と日本の青年たちが科学技術分野でさらに交流を深めるために、本プログラムでは学部レベル、特に大学院に進む一歩手前の段階にあり、化学を学ぶ意欲にあふれた学部生を対象としました。彼らが本プログラムに参画したことで刺激を受けて所属研究室での卒業研究に対していっそう意欲的に取り組み、大学院進学後には大学院レベルで実績を挙げている上述の交流プロジェクトへと連結することで、学部・大学院を通したより深い交流を実現し、将来的には日本の大学・研究機関や企業が必要とする海外からの優秀な人材の育成に資することが大いに期待されるところです。

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さくらサイエンスプログラム修了証授与式を終えて