2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第069号 (Aコース)
高度先端科学技術の活用によるソーシャル・イノベーションの具現化
金沢工業大学バイオ・化学部応用化学科
教授 坂本宗明さんからの報告
さくらサイエンスプログラムの支援のもと、ベトナムのVietnam−Japan Institute of Technology(VJIT)およびUniversity of Economics & Finance(UEF)から各2名の学生、スリランカのLanka Nippon Biztech Institute(LNBTI)から4名の学生に、VJITおよびLNBTIからの引率者各1名を加えた計10名が、金沢工業大学の学生18名と共に、株式会社スギヨ(石川県七尾市)協力のもと、水産加工品に係わるソーシャル・イノベーション活動に取り組みました。
【オンライン事前研修】
招へい校から各1名、本学学部生複数名からなるチームを構成し、2023年9月20日の午後に、4時間のオンライン事前研修を実施しました。この事前活動では、Zoom Meetingsなどのオンラインツールを活用し、多国籍・異分野融合チームとして活動を行なうための素地作り、我が国における水産加工品を取り巻く現状、株式会社スギヨの有する技術紹介などを行ないました。学生たちは得られた情報をオンラインツールを活用して共有・整理し、来日後に訪問する株式会社スギヨ北陸工場における調査計画を立案しました。
【現地調査】
翌日の10日、学生チームは石川県七尾市における現地調査に赴きました。現地の観光客向け市場および地域住民向け商業施設における水産加工品の販売・消費状況調査に始まり、株式会社スギヨ北陸工場の製造工程見学および商品開発プロセスに関する講演と問題共有、関係者へのインタビューを経て、学生たちは科学技術に基づく衛生的な水産加工品の製造から、販売に至るまでの気づきを得ました。
【課題発見・解決活動】
活動2日目から4日目は、本学留学会館を拠点として、調査活動で得た情報から課題を定義し、その解決案を創出する活動に取り組みました。学生は、工場における外国人労働者と日本人労働者の融和、水産加工品の国際展開、各国の文化で受け入れられる水産加工品メニューなどをテーマとして設定し、デザイン思考を協働のフレームワークとして用い、活動を進めました。活動では、ベトナム、スリランカ、日本それぞれの慣習や生活様式の違いを共有し、現実的かつ具体的な価値創出に挑む学生の姿が見られました。
【先端科学技術体験】
また、活動3日目に本学夢考房(ファブリケーション・ラボラトリ)の見学を行ないました。3Dプリンタやレーザ加工機など先端科学技術を活用した自律型ロボット開発プロジェクトの見学に加え、その礎となっている加工機械、さらには学生が作成した建築モデルについて解説を受け、我が国の科学技術が社会に対して何を提供できるのか、どのような活用の幅があるのかを体験する機会となりました。
【成果報告】
活動5日目は、学生が導き出した解決案を株式会社スギヨに提案する報告会を実施しました。チーム毎の報告は金沢会場と株式会社スギヨ北陸工場、東京をオンラインで結んで行なわれ、活発な質疑応答が行なわれました。
また、帰国前日に国立科学博物館の見学を通じて、過去から現在に至る日本の技術の変遷と先人達の歩みを学ぶと共に、浅草周辺を探索し、都鄙(都会といなか)の共通点・相違点を肌で知り、日本文化の多様性に触れる場としました。
最後に、本招へいプログラムは本学において2度目となるオンライン・オンサイト併用型交流 と成りました。オンライン事前研修を行なうことにより、来日後直ちに活動へ入ることが可能となり、7日間の滞在にも関わらず、招へい学生に充実した学びと体験を提供することが出来ました。今後も、日本の科学技術・文化を実践的に活用したソーシャル・イノベーションプログラムを継続的に提供し、我が国における学びと就労の起点を築いてゆきたいと考えています。