2023年度 活動レポート 第17号:京都工芸繊維大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第017号 (Aコース)

電子工学サマースクール&プラズマ科学技術ワークショップ 2023
Kyoto Institute of Technology Electronics Summer School & Plasma Science Technology Workshop 2023

京都工芸繊維大学 電気電子工学系
准教授 高橋和生さんからの報告

 令和5年6月25日から7月8日までの間、アル−ファラビ・カザフ国立大学(KazNU)より学生4名、カンボジア国立工科大学(NPIC)より学生4名および教員1名が、さくらサイエンスプログラムの支援を受けて来日し、京都工芸繊維大学で開催された電子工学およびプラズマ科学技術に関連するプロジェクト型プログラムに参加しました。

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アル−ファラビ・カザフ国立大学およびカンボジア国立工科大学からの招へい者

 この事業によるこのプログラムへの学生の招へいは平成29年(2017年) に始まり、感染症状況下においてもオンラインを活用 しながら、本学における学生の国際交流活動として継続させてきました。このプログラムは7回目の開催となり、今回、初めてカンボジアから学生を迎えました。これまで本学と交流を重ねてきた大学では、JSTによって支援される本プログラムが浸透してきており、年々、参加希望者が増加しています。NPICにおいては、希望者は40名を超え、その中から選ばれた4名が貴重な機会を得ることとなりました。

 今年度はKazNUおよびNPICの学生に対して、求められるシステムを電子回路およびプログラミングにより具現化するスキルを習得し、また、最先端半導体デバイスプロセスの基礎となるプラズマ科学技術の研究を行う機会が提供されました。物理など電子工学に関連する分野ではない学問領域を専門とする学生も、電子回路やプログラミングを駆使する作業に興味を持ち、積極的に参加していました。

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電子回路とプログラミングを駆使してのシステム構築

 カザフスタンでは情報産業を担う半導体デバイスが、また、カンボジアではその活用技術としてのInternet of Thingsが注目されており、それらの研究開発に対する気運が高まりつつあります。プラズマ科学技術ワークショップでは、半導体デバイスが処理する信号伝送の基礎をケルン応用科学大学より来日したJürgen Schneider教授に学びました。さらに、送電および蓄電のための半導体デバイスの活用例が、今回NPICより招へいされた教員であるSrun Channareth氏の講義において、紹介されました。

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Jürgen Schneider教授とSrun Channareth氏による講義を聴講する招へい者

 実験室では、半導体プラズマプロセスの基礎となるエッチング、スパッタリングおよび化学気相堆積を研究するための装置を見学しました。その後、各大学の就学状況や研究活動に関する情報を交換し、プラズマ科学技術の新たなる展開について、バイオテクノロジーや宇宙産業との関連性もふまえて議論をしました。

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実験室での見学と各大学の就学や研究に関する情報交換

 招へい期間の後半では、フランス、ドイツ、中国、日本の学生らと一緒になり、4ヶ国のメンバーからなる8チームが編成され、チームごとに、"Make something"をテーマに電子回路とコンピュータ、プログラミングを使って、電子機器システムを作り上げるプロジェクトに取り組みました。途中、京都市内を巡り、文化財を目にすることで、参加する学生全員が、日本の言語、文化、歴史、社会、自然にふれ、学生たちをとりまく環境からヒントを得ることで、作るシステムの構想を練りました。その概念、動作、構造を決める過程では、学生たち自らの研究活動を含めた互いの将来的な共働についても話し合うなど、活発なコミュニケーションが取られている様子でした。

 京都の街で学生たちが気づいたことは、寺社仏閣やその庭園の美しさ、道路信号と交通の煩雑さ、地震などの災害の多さなどでした。それらを題材として、国際色豊かなアイデアを含む様々なシステムができあがりました。その出来映えからは、多角的な国際理解が学生たちの間で促進されたことが明らかでした。

 一方で、感染症状況下の3年間で、授業などのオンライン活動によって学生たちに染みついたものも垣間見えました。電子ファイルを配付資料とすれば画面に釘付けになり、人の話を聞くよりも画面の資料を読むことで精一杯になってしまう、また議論の場では話しっぱなしで、相手の意見を聞かずにそっぽを向いてしまう、これらは、授業などのオンラインの形態が学生にもたらしたものの名残でしょうか。3年前と比べると、丁寧さ、親切さにやや欠けるコミュニケーションもわずかながら目立ちました。今回のプログラムで学生は、オンライン開催のよさも知りつつ、現地にて人にふれ、画面を介さずに人とコミュニケーションをとることの大切さを理解したようにも映りました。

 学生たちが2週間過ごした教室を最後に離れるとき、お互いに別れを告げる光景が印象的でした。招へいされた学生にとっては、今回は特別に「さくらサイエンスプログラム」の支援を受けたことで、日本へ来ること自体もかなり大仰であったはずです。ところが、このプログラムでの経験を得て、さらなる交流事業に参加する精神的なハードルが一気に下がったようでした。学生たちがお互いに再会を約束する様子から、将来の国際的な人材交流への期待があからさまに伝わってきました。今回、9名に貴重な経験と将来への希望を与えた「さくらサイエンスプログラム」に、主催者は心より感謝を申し上げます。

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電子機器システムを作製した学生たちと一緒に記念撮影