2022年度 活動レポート 第1グループ:ノーベル物理学賞の小林誠博士がSSHP高校生に特別授業

さくらサイエンス・ハイスクールプログラム 第1グループ

ノーベル物理学賞の小林誠博士がSSHP高校生に特別授業

9月29日(金)、来日中のさくらサイエンスハイスクールプログラム(SSHP)の高校生ら18名(インドネシア・ミャンマー・ネパール)は、つくば市にある高エネルギ―加速器研究機構(KEK)を訪問しました。KEKの高エネルギー加速器は、電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギーの状態を作り出す装置ですが、周長約3キロメートル、深さ約11メートルの地下トンネルに設置されている大規模な施設です。

高校生たちは施設の概要説明を受けた後、地下トンネルに入り、研究員の解説を聞きながら、電子入射器・電子陽電子加速器などの機器を間近に見学しました。続いてBelleⅡ測定器の見学です。BelleⅡの前身であるBelle測定器による実験によって、小林・益川理論の「CP対称性の破れ」が実証され、それが両博士のノーベル物理学賞(2008年)に結びついたことは良く知られています。現在BelleⅡは26の国・地域、100を超える大学・研究機関に所属する約1000人の科学者たちによって国際共同実験が行われています。

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地下トンネルで電子陽電子加速器などの機器を間近に見学
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地下トンネルに設置された多くの機器に圧倒
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BelleⅡ測定器についての説明を受ける
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小林・益川両博士のノーベル物理学賞について学ぶ

午後からは小林誠先生による特別授業です。高校生たちに拍手で迎えられた先生は、さっそく「Introduction to CP Violation (CP対称性の破れ)」というノーベル賞の受賞研究をテーマに授業を始めました。粒子と反粒子が非対称な振る舞いをする「CP対称性の破れ」事象を、丁寧に説明しながら、ご自身の理論へと導いてくれました。高校生には難解かと思われる内容でしたが、そこはさすが理系の高校生たち、「ビッグバンの時、粒子と反粒子が同じだけ生まれたのに、今は粒子しかなく、反粒子がないのはなぜか?」など次々と質問の手があがり、KEKの職員の方々も「高校生なのにすごい」と感心するほどでした。

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「CP対称性の破れ」について講義する小林博士
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ノートを取りながら熱心に小林博士の講義を聞く
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質問も活発に

高校生たちは、ミニビッグバンとも言うべき高エネルギー状態を作り出す、KEK施設や多くの機器に圧倒されながらも、宇宙誕生のさらなる謎を解きほぐす、素粒子物理学の世界にどっぷりと浸った1日でした。

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小林博士を囲んで記念撮影