2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第166号 (Aコース)
リモートセンシングとAIによる先端情報処理技術に関する学習と体験
山口大学大学院創成科学研究科電気電子情報系専攻
教授 山口 真悟さんからの報告
山口大学は2023年3月5日~11日の7日間、国立マレーシアプトラ大学(UPM)の学生2名と教員1名を招へいし、科学技術体験コースの交流活動事業「リモートセンシングとAIによる先端情報処理技術に関する学習と体験」を実施した。
本事業の目的は我が国が有する衛星リモートセンシング技術並びにAI技術を体験する機会を提供すること、並びに日本の研究者・学生等との交流を通して、科学技術分野における継続的な交流を促進することである。
山口大学とUPMは2018年度にさくらサイエンスプログラムを実施している。実施後、複数名の学生が山口大学への留学に興味を示した。当時は交流協定がなかったため留学には繋がらなかったが、さくらサイエンスプログラムの効果に強い手応えを感じた。この2018年度の活動が決め手となり、2020年3月に部局間協定の締結に至った。この交流をさらに大学全体に広げるべく、本活動を実施することとした。
山口大学にはAI技術の教育研究を専門とする大学院創成科学研究科工学系学域知能情報工学分野や情報・データ科学教育センターがあり、さらに宇宙利用技術の教育研究を専門とする応用衛星リモートセンシング研究センターがある。また山口県には山口大学の電波望遠鏡もあるKDDI山口衛星通信所、山口大学との豊富な共同研究実績を有するJAXA西日本衛星防災利用研究センターがある。これらのリソースを利活用することによって、我が国が有する先端技術への理解を深めるとともに関心を促すようなプログラムを実施した。
1日目は福岡空港から入国した後、宿泊先へ移動した。
2日目はオリエンテーションの後、山口市へ移動し、山口大学の本部がある吉田キャンパスを見学した。その中で情報・データ科学教育センターを訪問し、山口真悟センター長から山口大学のAI・データサイエンス教育の取り組みについて説明を受け、意見交換した。
3日目は午前中、応用衛星リモートセンシング研究センターを訪問し、設備を見学した。午後は応用衛星リモートセンシング研究センターの佐村俊和准教授からリモートセンシング技術の講義を受けた(写真1)。その後、JAXA西日本衛星防災利用研究センターを見学した(写真2)。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS−2)の大型模型や観測データの利用を示す展示は、これから衛星画像処理を学ぶ学生の意欲を高めた。夕方には意見交換会を行い、和やかな雰囲気の中、自由でざっくばらんな話し合いが進み、相互理解と今後への期待が伺える内容となった。
4~5日目は大学院創成科学研究科工学系学域知能情報工学分野の山口真悟教授、MOHD ANUARUDDIN BIN AHMADON助教からAIによるリモートセンシングデータ解析に関する講義と実際にデータを解析する実習を受けた(写真3)。自ら考え試行錯誤しながら、熱心に演習に取り組んでいた。
5日目の午後には研究交流会を開催した(写真4)。研究交流会では、UPMの学生2名と大学院創成科学研究科電気電子情報系専攻の学生4名が研究発表を行い、活発な議論や質疑応答を通じて、学術交流はもとより、互いの友情も深めることができた。
6日目はKDDI山口衛星通信所を見学した。パラボラアンテナの巨大さと種類の多さに圧倒されたと同時に、それぞれが持つ意味・意義を学習した。
7日目は福岡空港へ移動し、そこから帰国の途についた。
招へい者は日本の文化や先端技術の実物を実際に自分の目で見て、手で触れて、やってみるという体験を通じて、その関心をさらに高め、その結果、再来日したいと述べている。また引率教員は山口大学やJAXAなどの研究機関の研究教育体制ならびに設備の充実ぶりを高く評価し、教育研究交流をより一層進めていきたいと述べている。さらに山口大学の学生は、UPMの学生との研究交流を通じて大いに刺激を受け、国際的な感覚を養う良い機会となった。以上のことから、当該プログラムは双方の大学にとって大変意義のある活動であったといえる。