2022年度 活動レポート 第146号:宮崎大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第146号 (Cコース)

科学研究分野におけるペルーからの若手研究者の交流および共同研究の推進

宮崎大学フロンティア科学総合研究センター
特別教授 森下 和広さんからの報告

 宮崎大学は、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2023年1月22日から1月31日の日程で、C. 科学技術研修コースのプログラムを実施し、ペルー国立サンマルコス大学医学部より、学部生7名、教員(若手研究者)3名、引率教員1名の合計11名を招へいしました。

 今回の招へいプログラムは、2022年10月に水際対策が緩和されてから招へいが決定したため、ビザの取得(日本および経由国)や航空券の手配、入国にあたっての検疫等々の指示など、来日までの時間が限られた中での渡航準備でしたので、彼らの日本到着まではかなりやきもきしました。

 本学でのプログラムは、サンマルコス大学から聞き取りした内容も踏まえ、感染症、免疫、腫瘍、代謝、外科、再生医療などを中心に講義やシンポジウムを含めたカリキュラムを組みました。感染症分野では、熊本大学の橋本弘司先生のご指導のもと、バーチャルリアリティを用いた寄生虫症顕微鏡診断学習システムを体験するとともに、日本における寄生虫症の現状などに関する講義を行っていただき、ペルーの寄生虫症疾患を対象とした共同研究に向けた意見交換を行いました。

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寄生虫学講座での診断実習を終えて全員で集合写真

 外科系の実習では、手術室スタッフのサポートのもと、実際に手術室に入り、開腹手術、腹腔鏡下手術、およびロボット手術機器の見学を行い、日本における手術の現状を踏まえた啓蒙を行いました。加えて、バーチャルリアリティシステムを用いた術前シミュレーションを、実際の患者のCTから作成した3D映像を用いて体験学習し、学生、教員共に刺激を受けたようです。

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外科学講座ではバーチャルリアリティシステムを用いた術前シミュレーションを、実際の患者のCTから作成した3D映像を用いて体験学習しました。

 整形外科学領域では、本学工学部と医工連携で開発したLOCOBOT🄬(患者のリハビリに応用できるロボット)を体験したり、日本初のHALなどを用いたリハビリ実習を行ったりしました。

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四肢障害の評価を行う評価システム・ソフトの紹介後、招へい者を対象としてその評価を行いました。さらにLOCOBOT🄬を用いた脳血管障害などによる四肢麻痺のリハビリテーションに対して、実際に使われているロボットの紹介や、行われているリハビリテーションを体験しました。写真は、LOCOBOT🄬を使ってボールを操作し、ボーリングのピンを倒そうとしている様子。

 加えて、宮崎大学は医学獣医学総合研究科を有する、全国でもまれな大学であるため、農学部獣医学科の教授による人獣共通感染症としてCOVID−19などを含むウイルス感染症などの講義を受けたり、学内施設の産業動物防疫リサーチセンターの実地見学をしたりなど、学部を超えた支援も受けることができました。またプログラム期間中、昨年度のサンマルコス大学との代替オンライン交流 に参加した本学の学生らと直に交流する機会があり、コロナ禍で止まっていた海外の学生との交流実地体験ができたことも、双方の学生にとって貴重な経験になったようです。

 プログラム終了後のアンケートでは、本学での留学を希望する参加者がおりましたので、文部科学省の国費外国人留学生制度やJICAの長期研修員受入プログラムなどを利用して留学が実現できればと思います。また、将来的には、医学科生の短期交換留学につながるよう、今後もサンマルコス大学との交流を継続していきたいと考えています。

 今回のさくらサイエンスプログラムの実施については、JSTをはじめ、多くの関係者の方々に、ご支援・ご協力いただき感謝申し上げます。