2022年度 活動レポート 第145号:長崎大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第145号 (Aコース)

遺伝子組換え動物を用いた感染免疫研究の体験~共同研究の継続に向けて~

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 
免疫学教室 准教授 井上 信一さんからの報告

 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科は、さくらサイエンスプログラムの支援を受けて、令和5年2月1日~2月8日にインドのチャンディガル医学教育研究大学院からの招へい者6名(教員1名、大学院生5名)を長崎に迎え、A.科学技術体験コースのプログラムを実施しました。インドのチャンディガル医学教育研究大学院の引率者Rakesh Sehgal教授と受け入れ機関の実施主担当者の井上は、10年来の共同研究関係にあり、これまでインドで流行している三日熱マラリアの重症化に関わる免疫学的な因子の特定をするために共同研究を行ってきました。その間にRakesh Sehgal教授は何度も来日していますが、彼の研究室のインド人学生達は日本に来た経験がありません。これまで、インドの学生は来日して日本の科学技術や日本文化を体験することを強く望んでいましたが、本プログラムの支援によってようやくそれが実現しました。

 インドでは、医学研究としてヒト患者サンプルを使用した研究が中心で、動物実験モデルを使った基礎医学研究があまり進んでいません。今回、招へい学生たちには、遺伝子組換えマウス(IFN−γレポーターマウス)を用いたマラリア感染実験と脾臓から取り出した免疫細胞の解析を行ってもらいました。ほとんどの学生が初めてのマウス実験で、恐る恐るながらも非常に積極的に手技を学んでもらいました。

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招へい学生達による遺伝子組換えマウスを用いた実験の様子
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招へい学生達による脾臓組織から免疫細胞調製をする様子

 今回のプログラムでは、彼らインド人が自国ではほとんど使用できない遺伝子組換えマウスの実験を行うとともに、色々な日本・長崎の文化も体験してもらいました(平和公園、原爆資料館、長崎歴史博物館、染物伝統工芸体験など)。インド人学生達は、日本での基礎医学研究やその魅力的な文化にふれて、非常に高い満足感を得た様だった。1週間という限られた時間であったものの、私としても彼らとは非常に濃密な時間を分かち合ったと感じています。

活動レポート写真3
招へい者達と平和公園での撮影

 意見交換会では、共に食事をとりながら私の研究室の留学生達とも交流してもらい、実際の日本留学についても語り合ってもらいました。彼らの来日の間に、Sehgal教授と今後のさらなる研究プロジェクトの構想などを話し合う機会とともに、より親密な関係性を形成するのに極めて役立ったのは確かでした。今回の招へい者の中から、今後日本へポスドクとして留学もしくは、我々の共同研究プロジェクトの研究員として活動してくれる人が出てくることで、共同研究が発展することをとても強く希望しています。

 今回、この様な素晴らしい機会を与えて頂きましたJSTさくらサイエンスの招へいプログラム、関係者の皆様方に深く感謝申し上げます。

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意見交換会にて研究室所属の留学生と国際的な交流