2019年度活動レポート(一般公募コース)第394号
中国の若手研究者が日本の都市浸水対策を学ぶ
京都大学からの報告
さくらサイエンスプログラムの支援を受けて、2019年12月8~14日の7日間、中国から夏軍強教授と若手研究者(教員1名、学生6名)を京都に招へいしました。2017年10月に都市水害に関するワークショップを開催した際に基調講演を夏教授に依頼し、それ以来、夏教授と中川一教授、川池健司准教授は相互訪問をするなどの学術交流が続いています。また中国では、近年は豪雨災害が頻発し甚大な浸水被害が発生しています。今回は、5日間の講義、施設見学、研究発表と意見交換等を通して、日本の豪雨災害に関する①ハード対策、②ソフト対策、③大学での研究、④京都の歴史的な水インフラについて学ぶことを目ざしました。12月9日に5日間のプログラムの概要と目的を説明した後、下記のような内容により①~④の内容を学習していきました。
①ハード対策
中川一教授により、近年の日本の豪雨災害事例と水害対策全般についての講義を受けました。学生たちは全員が質問するほど、高い関心を持って聞いていました。また、大阪にある毛馬排水機場と淀川大堰を見学して淀川水系の治水について学びました。さらに、寝屋川流域にある地下の流域調節池、地下河川の立坑、寝屋川治水緑地を見学し、都市型水害に備える様々なハード対策について学びました。
②ソフト対策
川池健司准教授により、洪水ハザードマップやタイムラインといったソフト対策に関する講義を受けました。タイムラインは初めて聞く話だったようで、質問がそこに集中しました。京都市内にある市民防災センターを訪問し、消火体験、暴風体験、地震体験、地下空間浸水擬似体験と館内自由見学をして様々な自然災害への対応を学びました。
③大学での研究
中国の学生と京都大学の学生が3名ずつ自身の研究についてプレゼンテーションし、意見を交わし合いました。また、京都大学防災研究所の宇治川オープンラボラトリーにある、流水階段や浸水ドアなどの実験研究施設を見学したほか、宇治キャンパスにある実験施設と防災ミュージアムを訪問して自由に模型や映像に触れてみて様々な自然災害現象を学習しました。
④京都の歴史的な水インフラ
京都市内の琵琶湖疎水記念館を訪問して100年前に建設された疏水事業について学習し、南禅寺水路閣や蹴上インクラインなどの疏水に関連する遺構を見学しました。また、京都市の伏見界隈を散策して舟運による交易の拠点だった地域を見学し、三栖閘門を訪問して伏見の歴史と閘門の仕組みについて学びました。
今回のプログラムを通して、学生たちは日本の水害対策を様々な視点から学習しました。京都大学の研究室に所属している中国人留学生2名がプログラムに随行してサポートしてくれましたが、彼らにとっても日本の水害対策を勉強するよい機会になったと思われます。最終日の懇親会では、5日間のプログラム中の写真を1枚のA4用紙に並べてラミネート加工し、おみやげとして修了証と併せて渡しました。今回の学習内容とともに、日本に対するいい印象を持ち帰ってくれたなら幸いです。