2019年度 活動レポート 第381号:金沢大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第381号(Aコース)

東アジア地域における大気汚染物質の越境輸送機構への理解を深めよう

金沢大学 環日本海域環境研究センターからの報告

さくらサイエンスプログラムの援助により、2019年12月3日~9日の7日間、中国東北大学冶金学院環境科学系の教員1名と大学院生5名(博士前期課程3名、博士後期課程2名)を迎えました。本プランでは、金沢大学輪島大気測定局を拠点に、講義、大気粒子/ガス相汚染物質の捕集、分析及びデータ解析を通じて、大気汚染物質の越境輸送機構への理解を深めると同時に、本学が主導する「東アジア地域大気汚染モニタリングネットワーク」を拡大し、東アジア地域の環境保全に意欲のある留学生の増加を繋げることを目的としました。

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研究報告会後の懇談会にて

金沢大学環日本海域環境研究センター(http://www.ki-net.kanazawa-u.ac.jp/)は、研究部門と連携部門の2部門と大気環境領域、海洋環境領域、陸域環境領域と統合環境領域の4領域によって構成されています。平成28年度4月に、文部科学省の共同利用・共同研究拠点「越境汚染に伴う環境変動に関する国際共同研究拠点」に認定されてから、環日本海域における環境保全のために、国際的な連携と共同研究を一層強めています。

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本さくらサイエンスプログラムの実施はその一環として位置付けられています。金沢大学輪島大気測定局(KUWAMS:Kanazawa University Wajima Air Monitoring Station)はセンターのバックグラウンドサイトであり、アジア大陸で発生した大気汚染物質を敏感に検出できる特徴を有しています。本さくらサイエンスプログラムの交流活動は、KUWAMSにおける研究活動の歴史と研究成果の紹介から始まりました。

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金沢大学輪島大気測定局(KUWAMS)の紹介

交流活動の2、3日目は、KUWAMSで装置の操作やサンプルの採集方法に関する説明を行ってから、PM1.0、PM2.5及びガス相大気汚染物質(窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン、非メタン炭化水素、メタン)の試料採集を行いました。

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PM1.0,PM2.5の試料採集

採集したサンプルを実験室で、所定の前処理を施してから、石炭、石油などの化石燃料及びバイオマスの不完全燃焼に由来し、非常に強い発がん性/変異原性を有する多環芳香族炭化水素類、PM2.5の主要構成成分である水溶性イオンの分析を行いました。

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データ解析の様子

短い7日間の交流活動でしたが、本さくらサイエンスプログラムの実施により、日中両国の学生同士の交流を深めることができました。また、自らの観測・測定を通じて、アジア大陸で発生した汚染物質は、日本に長距離輸送している間に、物理的/化学的な変質を経由して毒性がより強まる恐れがあることを知り、環境保全の意識を一層高めることができました。