2019年度活動レポート(一般公募コース)第372号
ミャンマーの水産学・海洋科学の発展に向けた同国若手世代との微生物学の共同研究
東京海洋大学からの報告
ミャンマーは東南アジア有数の水産・海洋国であり、その海岸線は約2,000kmにも及びます。「ミャンマーの水産学・海洋科学の発展に向けた同国若手世代との微生物学の共同研究」(共同研究活動コース)を実施するために、2019年11月27日から12月7日まで、研究者1名(農業・牧畜・灌漑省水産局)、教員1名(モーラミャイン大学)、ならびに大学院生1名(ヤンゴン大学)の計3名を招へいしました。
このプログラムは2017年から3年間の複数年採択であり、今回が第3回目の実施になります。本プログラムは、ミャンマーの若手研究者、教員および学生を対象にしまして、東京海洋大学がこれまでにミャンマーの大学・政府機関と構築した国際交流協定を基盤として、微生物学の観点からミャンマーの水産学・海洋科学に貢献しようとするものです。
参加者はまず初めに、東京海洋大学品川キャンパスにてオリエンテーションを受けた後、実験を開始しました。微生物の分離培養の基礎となる寒天培地の作製や無菌操作などを学びながら、微生物を数日間培養した後、寒天培地上のコロニーから画線を行い、細菌の純粋分離を行いました。また、分離した細菌をDNA解析に基づいて同定するため、培養液からDNAを抽出し、抽出したDNA濃度を吸光度に基づいて測定しました。
そして、抽出DNAを用いて16S rRNA遺伝子をPCR法によって増幅しました。アガロースゲル電気泳動によりPCR産物を確認した後、PCR産物の精製を行いました。
さらに、サイクルシーケンス反応を行い、DNAシーケンサーにて塩基配列を解読した後、解読した塩基配列データを用い、16SrRNA遺伝子のデータベースから細菌種を同定する方法を学びました。
また、微生物学における基本操作の一つとして、細菌を染色し、顕微鏡観察を行いました。
さらに、招へい期間中には、本学の品川キャンパスのマリンサイエンスミュージアムやお台場の日本科学未来館の見学も行いました。
本プログラムにより、参加者は実験を通して、微生物学の基礎となる知識・手法について、能動的にそれらの理解を深めることができました。また、本学の設備や日本科学未来館を見学したことで、水産学・海洋科学のみならず日本の科学技術についても興味・関心をもつことができました。
本プログラムは3年間の複数年採択であり、2019年が最終年でした。本プログラムの機会を提供して頂きましたさくらサイエンスプログラム、ならびに関係者の皆様にお礼を申し上げます。本プログラムがミャンマーの水産学・海洋科学の研究者の育成の一助となれば幸いであり、日本とミャンマーとの水産学・海洋科学に関する研究における交流がさらに進展することを希望しています。