2019年度活動レポート(一般公募コース)第365号
超高齢社会に求められる基礎・臨床研究
Basic and clinical researches required in a super aged society
新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野
井上 誠さんからの報告
新潟大学歯学部では、2020年2月13日から19日まで、フィリピン・マニラセントラル大学より1名、タイ・タマサート大学より1名、タイ・マヒドン大学より1名(他来日経験者1名)、タイ・コンケン大学より4名、インドネシア・ガジャマダ大学より3名、ミャンマー・マンダレー歯科医学大学より2名の若手歯科医師を受け入れ、現在新潟大学で行われている臨床の見学、講義受講ならびに実習を行いました。
プログラムは、全員が来学した2月13日にオリエンテーションを実施した翌日14日にスタートしました。午前中の講義では、超高齢社会において高齢者を中心とした摂食嚥下障害の現状と歯科医療が携わるべき口腔機能を起点とした臨床のあり方についての講義を行いました。午後は、臨床における咀嚼の重要性に関する講義の後に、グミゼリーを用いた咀嚼能率測定の体験実習を行いました。この日の夕方には、親睦を深めるための懇親会も開催され、それぞれの国や研究の話だけでなく、文化交流という点でも大変有意義な時間となりました。
15日午前は、痛みのメカニズムに関する講義の後、痛みのモデル動物を用いた行動学的な実験を観察・定量化する生理学実験を経験してもらい、得られた結果と痛みメカニズムの関連性を議論しました。午後は、高齢化に向かう社会の中で必要とされるヘルスプロモーションに関する講義を行いました。
日曜日の休日をはさんだ17日午前中は、病棟での摂食嚥下障害の臨床見学ならびに嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査体験をしてもらいました。嚥下を可視化する実習体験は初めてのことであり、皆が大変興味を示してくれました。午後は経頭蓋磁気刺激(TMS)実験と口腔機能低下症の検査実習を行いました。TMS実験では、自らが被験者となって誘発電位を体感してもらい、その都度大きな歓声があがっていました。夕方には、完全なバーチャルリアリティのシステムを用いた切削トレーニングとその自動評価について学んだ後、仮想患者の診断・治療計画・治療までをも体験してもらいました。
18日午前中は、主にインプラント治療と天然歯の保存について臨床的な観点からの講義、午後はインプラントに関わる生物学的研究、新規生体材料の開発、歯根膜の幹細胞等、生物学的なエビデンスに基づく補綴治療の実現を目指した研究の紹介を行いました。
最終日の19日午前は、誤嚥性肺炎の原因菌ともいえる口腔内細菌のコントロールの必要性を訴えた講義ならびに口腔内細菌数を測定するハンズオンを行いました。
その後閉講式を行い、全員で記念写真を撮って解散となりました。タイトなスケジュールの中、参加者は様々な臨床、研究分野の体験を楽しみ、また一生懸命に参加してくれたことで忙しくも充実した日々を過ごすことができました。本プログラムをきっかけとして、さらなる交流や共同研究推進への足掛かりができたと確信しています。
最後に、本プログラム実施の機会を与えた頂いたさくらサイエンスプログラム、そして本プログラムの実施を支えて頂いた多くのスタッフの皆さんに深く感謝申し上げます。