2019年度活動レポート(一般公募コース)第347号
中国の若手研究者と大学院生が千葉大学の疾患バイオマーカー探索技術を体験
千葉大学からの報告
さくらサイエンスプログラム(科学技術体験コース)の支援を受け、2019年12月1日(日)~7日(土)の日程で、中国・曁南(ジナン)大学・生物医学転化研究院の研究員5名、大学院生5名と教授1名が千葉大学医学部の疾患バイオマーカー探索技術を学びました。対象となる疾患は癌、脳梗塞、心筋梗塞であり、これらは中国でも深刻な病気となっています。そこでこれらの疾患について、特に抗体マーカー探索において、世界で最も実績のある千葉大学大学院・医学研究院を訪問し、その技術を学ぶことを目的としました。
2日目
最初に脳神経外科の日和佐隆樹特任准教授からオリエンテーションと研究室の説明がありました。北京中医科大学の杉本一男副教授から、マーカー探索のための発現クローニング法の説明があり、工程1のシミュレーション実験を体験しました。
3日目
杉本講師の指導の下、発現クローニング法の工程2の実験を行いました。その後、抗体レベルを測定するアルファ法のプレーティングと試薬添加実験のシミュレーションを行いました。午後には脳神経外科の堀口健太郎医局長の案内で、千葉大学医学部附属病院の外来棟、病室、及び検査室等を見学しました。
4日目
午前中に埼玉県久喜市の藤倉化成株式会社開発研究所に到着し、黒田英行部長から疾患バイオマーカーを用いた診断キットの作製の技術と設備について説明を受けました。午後には和光市の理化学研究所を訪問し、光量子工学研究センターの中野明彦副センター長から説明の後、世界最先端のライブイメージング技術を見学しました。
5日目
杉本講師の指導の下、発現クローニング法の工程3の実験を行い、アルファ法のデータ測定を行いました。その後、医学研究院の設備機器の見学を行いました。
6日目
アルファ法のデータ処理と統計解析を体験しました。李淑洋大学院生から疾患マーカーについての研究発表があり、質疑応答を行いました。夕刻から、脳神経外科の岩立康男教授を交えて送別会を開催しました。
総括
今回の招へい者全員は初来日であり、過密な日程ではありましたが、朝夕の時間や埼玉県訪問の際には日本の生活や文化の一端を垣間見ることができたのではないかと思います。
上記の体験により、計画通り、疾患マーカー探索のために必要な技術、設備、及び試薬を学ぶことができ、当初の目的が達成されました。曁南大学の研究体制は日本の大学とほぼ変わらず、すぐにでも探索研究を始めることができそうです。これまでも、このような技術と人事の交流があり、翌年1月には曁南大学第一臨床医学院と千葉大学医学研究院は部局間交流協定を締結する運びとなりました。今後はさらなる情報交換や共同研究などの交流を経て、大学間交流協定に発展させ、中国と日本が協力して病気の制圧に寄与できるものと期待されます。
本さくらサイエンスプログラム事業にご助力頂きました科学技術振興機構、千葉大学、理化学研究所、及び藤倉化成株式会社の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。