2019年度活動レポート(一般公募コース)第341号
フィリピン若手研究者との木質バイオリファイナリー技術開発に関する共同研究プログラム
静岡大学からの報告
2019年11月5日から25日までの20日間の日程で「さくらサイエンスプログラム(B.共同研究活動コース)」の支援のもとに、フィリピン共和国マリアーノ・マルコス州立大学より1名(大学教員)を、静岡大学農学部に招へいしました。
マリアーノ・マルコス州立大学は、1978年に設立された総合大学で、農学、生物学、林学の中核開発センターとして認定されており、フィリピン全土でも数少ない農学・水産学教育のための国立大学として選ばれています。静岡大学とは2018年11月に大学間協定を締結しています。
本プログラムの目的の一つは、フィリピンでは非常に高く評価されている将来を嘱望された若手研究者の一人を招き、静岡大学農学部で実施している「バイオエネルギー生産に向けた木質バイオリファイナリー技術開発に関連する研究研修」を行う事でした。また、本招へいをきっかけとして静岡大学とマリアーノ・マルコス州立大学間での国際共同研究の可能性を探る事も目的の一つでありました。
研修の中では、静岡大学が保有する様々な分析設備(核磁気共鳴装置、電子顕微鏡、次世代シーケンサー、種々の質量分析装置など)を見学した後に、木質バイオリファイナリー技術開発に関連する様々な実験手法を、実際に実験を行いながらレクチャーしました。20日間のプログラムの中で、大きく2つの実験の研修を行いました。
まず、木材主要成分の分析法や、有機溶媒を用いた成分の抽出、TLCや各種クロマトグラフィーによる成分分析、精製方法などの研修を行いました。招へい者がフィリピン国内で実施している実験との違いは大きくなかったかと思いますが、小さな事まで余さず習得しようと熱心な姿勢が伺えました。
また、木材腐朽菌の遺伝子組換え技術など、様々な分子生物学的実験手法についても研修を行いました。この実験技術については初めての経験であったようで、大変興味深く研修を受けている様子でした。今回の研修で身につけた技術を帰国後も利用していって貰えるものと期待しております。また、フィリピンのような熱帯における木材腐朽菌の研究は、温帯〜寒帯の木材腐朽菌と比較すると進んでおらず、今回のプログラムが共同研究に繋がることになれば、熱帯性木材腐朽菌の研究が大きく進展する可能性があります。
プログラム終了後も、招へい者とはしばしば連絡を取り合っており、研究テーマなどについて議論を行うなど、継続的な研究者間交流は続いています。また、マリアーノ・マルコス州立大学の学長が静岡大学に訪問された際に、来年度以降も本プログラムを利用した研究技術研修を継続したい旨を提案されるなど、静岡大学と大学間協定の活性化につながる招へいプログラムであったと考えており、今後の継続的な相互交流が期待されます。
最後に、このような有意義な国際交流の機会を与えていただいた「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。