2019年度 活動レポート 第336号:長崎大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第336号

空間生態疫学技術の具体的な習得を目指して

長崎大学からの報告

2019年10月26日から11月4日までの10日間、「さくらサイエンスプログラム」の支援により、マレーシア・サバ大学(UMS)の医学・保健科学部の大学院生12名、教員1名を長崎大学・大学院熱帯医学グローバル・ヘルス研究科(TMGH)に招へいしました。

プログラム初日

UMSはマレーシア国サバ州コタキナバルにあるマレーシアの9番目の公立大学で、10の学部と幾つかの研究所からなる総合大学です。サバ州で唯一の国立大学として、サバ州で求められている教育・研究に特に力を入れています。長崎大学とは2017年にMOUを締結し、研究者および学生の交流を続けている実績があります。本交流計画の対象となった医学・保健科学部は、特に公衆衛生学や家庭医療学の分野ではマレーシアを代表する教育研究機関のひとつで、本学部の教育・研究水準の向上は地域の公衆衛生・家庭医療水準の改善に大きく寄与すると言えます。

本プログラムでは、「空間生態疫学技術の具体的な習得」をテーマとして、長崎大学の東城文柄助教による統計プログラミング言語を使った疫学解析(検定)から、データハンドリング、効果的なデータビジュアライゼーション、統計プログラミング手法などのデータサイエンスに関する実践的なノウハウに関する講義を提供しました。他にも、RS(リモートセンシング)とGIS(地理情報システム)を用いた環境解析・データの空間分析・視覚化(疾病主題地図作成)や、熱帯医学研究所の星友矩助教による最新のフィールド調査テクノロジーに関する講義など、グローバル・ヘルス研究の課題に即した様々な実践的技術が提供されました。

3Dプリンターを使った調査機器(蚊トラップ)作成の様子
ODK(Open Data Kit)を使ったペーパレス質問票調査のトレーニング

他にも「特別講演」として、熱帯医学研究所の研究者も多数参加して、「人獣共通感染症である猿マラリアの国際共同研究状況」をテーマとしたワークショップが開催されました。熱帯医学研究所のRichard Culleton准教授による基調講義「Zoonotic Malaria」他、聴衆(招へい者)を交えた最新の研究成果報告と活発な議論が長時間にわたって行われました。このプログラムを通して、招へい者に対して「(国際)学術交流をより実践的に経験」し、「具体的な研究の取り組みを見聞できる」教育的機会を提供しつつ、今後のTMGHとUMSの間の研究・教育交流を一層強化することができました。

ワークショップ参加者一同による記念撮影

文化体験では、招へい者に長崎の歴史及び文化に関する理解を深めてもらうために、長崎原爆資料館、平和公園、長崎歴史文化博物館、眼鏡橋、長崎孔子廟・中国歴代博物館、大浦天主堂、グラバー園、等の見学を行いました。TMGHにおける本プログラムは今回が初めてですが、招へいしたUMSの大学院生たちは皆日本の科学技術と文化に対する関心を大きく深めながら帰国していきました。本プログラムがきっかけとなって、再来日を含め今後の長崎大学とUMSの研究・教育交流は一層高まっていくことでしょう。

招へい学生によるプレゼンテーション