2019年度活動レポート(一般公募コース)第307号
持続的な都市発展と良好な都市環境形成のための計画技術を学ぶ
横浜市立大学グローバル都市協力研究センターからの報告
横浜市立大学グローバル都市協力研究センターまちづくりユニットでは、インドネシアのハサヌディン大学工学部都市地域計画学科より学生10名、教員1名を招へいし、「持続的な都市発展と良好な都市環境形成のための計画技術を学ぶ」をテーマとする活動を2020年1月26日から2月1日にかけて実施しました。
「さくらサイエンスプログラム」による招へい学生10名のほか、同大学からさらに学生5名が参加し、本学からも計15名の学生が代わる代わる参加しています。本学では、2019年8月にハサヌディン大学において、まちづくりに関する国際学生ワークショップを実施しており、今回は同ワークショップに参加していたインドネシアの学生を招へいし、同じく同ワークショップに参加していた本学学生が日本滞在をサポートする体制となりました。
東南アジア最大の人口を有し、経済成長を続けるインドネシアではインフラ整備や都市のマネジメントが追いつかず、さまざまな都市問題が生じています。都市発展と経済成長が重要視されるために、都市の居住性や緑地環境、快適な歩行者空間といった都市のアメニティへの配慮が十分ではないといった問題もあり、ハードとソフトを総合する政策・計画技術をもつ人材が都市計画分野において必要となっています。本活動では、こうした都市問題の解決を担っていくこととなるインドネシアの学生を招へいし、持続可能な都市づくりと良好な都市環境の形成に寄与する技術・計画・活動を学ぶ機会を提供することを目的として、講義と実地見学を組み合わせて行いました。
活動は到着第2日目より本格的に始まりました。この日は横浜の都市デザインについて講義を受けたのち、講義の内容を確認しながら関内地区を中心に視察を行いました。
第3日目は横浜市内の金沢シーサイドタウンを訪れ、良好な環境をもつ住宅地形成について学ぶとともに、超高齢化・人口減少に伴う日本の社会問題、産官学民が連携したエリアマネジメントについて講義を受けました。ニュータウン内の視察では、緑地や駐車場の配置、低層集合住宅群からなるヒューマンスケールに強い印象を受けた様子でした。
第4日目は、横浜黄金町地区のアートを通した地区再生とみなとみらい21地区の公共空間の形成・活用、歴史遺構の保全等について学びました。いずれの地区でも、地域の良好な地域・都市環境形成において民間の果たす役割がきわめて大きいことにインドネシアとの違いを見出していました。
第5日目は、大手町・丸の内地区を訪れ、多主体協働による東京都心の空間整備とマネジメントについて学びました。大丸有地区におけるハードとソフト両面の取組みやエリアマネジメントの仕組みについて講義をうけた後、地区内を歩き、オフィス街に確保された緑地空間、歩行者空間の整備・活用の状況、歴史的建造物の保存・復元等の事例を視察しました。
第6日目は鎌倉を訪れ、日本の伝統文化や造園にふれるとともに、歴史的環境保全のための都市計画上の規制を学びました。その後、活動成果をまとめるワークショップを行い、5日間の学びを通して考えたこと、各々にとって最も印象的であった都市の風景について発表しました。
本プログラムでは、中心市街地、再開発地区、住宅地、歴史的地区といった多様な都市部をめぐり、講義と視察を行いましたが、学生の感想からは、多主体協働による都市管理手法、公共空間創出への民間の協力、人間にとって心地よい環境の創出、地区の歴史性に配慮した都市開発等、見聞きするものそれぞれに学びがあった様子が伺えました。特に、プログラムを通して、座学だけではなく、その実践の現場を見学できるようなアレンジをしたことがよりよい理解と刺激につながったようでした。
昨夏のインドネシアでのワークショップに次ぐ再会となったインドネシアの学生と本学学生の間では友情も深まり、きわめて有意義な国際的な学術交流の機会になったと実感しています。ご支援いただいた「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。