2019年度活動レポート(一般公募コース)第302号
日本とタイの高校生が共に学ぶ生物多様性と生物資源活用の未来
清真学園高等学校・中学校からの報告
2019年11月6日~11月11日の6日間の日程でタイ王国のプリンセス・チュラポーン・サイエンス・ハイスクール・ピサヌローク (Princess Chulabhorn Science High School Phitsanulok)から高校生4名と教員2名(自己資金での招へい者1名)をさくらサイエンスプログラムの支援で招へいしました。
同校は、タイに12校ある王女立の科学教育を重視する全寮制の中間一貫校の1つで、SSH校である本校とは2016年に科学教育を通しての学術交流を図る提携を結んで以来、教員と生徒の国際交流を行っています。タイの教員と生徒が本校で交流するのが4年目となる今年は、一昨年から生物多様性について、今年からは生物資源を有効活用するリサイクルシステムについての共同研究始めたこともあり、生物多様性と生物資源活用が科学技術とう繋がっているかを体験できるプログラムとしました。
初日
タイ王国のピサヌロークから4名の高校生と2名の教員が成田空港へ到着しました。午前中には学校でのオリエンテーション、午後には本校生徒と一緒に音楽鑑賞会に参加して、初日を終えました。
2日目
本校教員による授業に参加しました。午前中は、本校教員がSTEM教育として「ゆっくり、正確に落ちるパラシュート製作コンテスト」を両校の生徒がチームを組んで競い合いました。また、ICT教育のひとつとして情報の授業で行われているプログラミングの授業に参加しました。
午後には、高校1年生の授業に参加してもらい、日本とタイの科学技術や文化を両校の生徒がそれぞれ発表しました。本校生徒は、タイの生徒の発表能力の高さに驚くと同時にタイが豊かな自然環境を持つ国で文化的にも日本と共通点があることを知ることができ、タイの生徒にとっても同じく、日本といえば、車や電化品などが第一に出てきましたが、日本の文化は歴史があることや豊かな自然にも恵まれていることを知ることができ、双方共に学び多き有意義な時間を過ごすことができました。SSH校である本校で週1回行われているSSHゼミ活動にも参加し、共同研究グループの本校生徒達と研究内容や実験手法について議論をしました。
3日目
筑波大学の研究室と研究施設を訪問し校外学習を行い、「藻類バイオマス・エネルギー・システム」について吉田昌樹准教にプログラムを組んでいただきました。生物学的観点から資源をどこから見出してどう活用していくかという内容に始まり、システムをどう構築していくと有効的に機能していくかという講義にタイの生徒は熱心に耳を傾け、講義中にもたくさんの質問をしていました。
講義の後は、研究所内の施設での実物を見ながらの説明を受けました。タイの生徒たちは、先端技術が実用化に向かっていること、藻類からエネルギーだけでなく化粧品も作ることができることを知り、生物資源の有効活用には科学技術が不可欠であることを実感していました。タイでは藻類バイオマスはまだ発展途上ではあるものの、タイの生物多様性が生物資源を有効活用する可能性が十分にあるとの説明を受けたことで、将来は科学の分野で社会に役立つ研究がしたいという生徒たちにとって未来への展望となる体験をすることができました。
4日目
本校のSSH中間発表会で、両校の生徒が互いの共通言語である英語でプレゼンテーションとポスター発表をする学術交流をしました。タイの生徒は「高齢者のための脳トレゲームBOX」についてのプレゼンテーションを行いました。タイの生徒のプレゼンテーションは流暢でわかりやすい英語で行われ、同じく英語を外国語とする日本の高校生にとって良い模範となるものでした。
その後のポスター発表セッションで、タイの生徒は「精油を活用したスチロールのリサイクル」というテーマでも本校生徒とSSH中間発表会でポスター発表を行いました。今後、この「精油を活用したスチロールのリサイクル」というテーマで、本校との共同研究を行う予定です。
タイの生徒たちは、実際に作製したゲームBOXを実演して説明したり、再生したスチロールの実物を見せたりと、発表だけにとどまらず具体物を見せることができる程まで科学研究を行っており、発表を見に来た来場者にとても好評でした。発表技術の上手さだけでなくテーマも日本の生徒とは異なった視点から研究されており、タイの生徒の科学に対する学ぶ意欲と関心の高さを伺える発表会となりました。
午後は、茶道部の協力による茶道体験を行いました。タイにもお茶を飲む習慣はあるものの、茶道には礼儀作法もあることに、タイの生徒たちは日本文化の深さを感じたようで、本物の茶道を日本で体験できたことにとても喜んでいました。
5日目
それぞれのホームステイ先のホストファミリーと生活体験・文化体験をして科学技術がどのように生活に関わっているかを体験する日にしました。日々の生活の中のあらゆる所で科学技術の恩恵を受けていることや産業にまで発展することが生活力向上に結びついていることなどタイの生徒は多くの学びを得たと感想を述べてくれました。また、古くからの伝統や文化を継承し、また新たな文化が融合して現在の日本を構築しているかをも感じ取ることができた1日となりました。
6日目
「科学が導く未来」というテーマで日本科学未来館を訪れるプログラムを組みました。5日目までのプログラムは科学技術の過去から現在ということが中心でしたが、日本科学未来館では、科学技術のもたらす社会の全体の流れを捉え、未来を考えるという体験をすることができました。タイの生徒たちは科学についてより高い関心と意欲を持ち、より深く学んでタイの未来に繋げたいと頼もしく抱負を語ってくれました。
プリンセス・チュラポーン・サイエンス・ハイスクールでは、「科学をどう社会に役立てるか」「環境にどう配慮するか」「地域社会に貢献できるか」を科学研究のテーマに必ず入れるようにしています。どのような生物からどのように環境に配慮した製品を作ることができるかという研究は、数年来取り組んできており、「精油を活用したスチロールのリサイクル」という課題で、今後は本校との共同研究として取り組んでいく予定です。
タイ王国のプリンセス・チュラポーン・サイエンス・ハイスクール・ピサヌローク校との国際交流は共同研究を開始したことでこれまでより深い交流をすることができました。プログラム実施にあたり、「さくらサイエンスプログラム」をはじめ、ご協力して頂いた関係機関・関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。