2019年度活動レポート(一般公募コース)第273号
スリランカの若手大学教員を招き保健学最先端研究の体験型演習を実施し、
日本とスリランカの将来構想を共に考えた
新潟大学大学院保健学研究科
国際交流委員長 佐藤 拓一さんからの報告
新潟大学大学院保健学研究科では、2019年12月10日からスリランカのトップ校であるペラデニヤ大学(保健学部)の若手教員10名(および引率として保健学部長)を招へいし、保健学最先端研究の体験型演習プログラムを実施しました。
6日間の来日期間中、当大学院保健学研究科に3日間滞在し、集中的に、日本の保健学研究の最先端を体験してもらうプログラムで、日本の大学院博士(後期)課程への留学機運を高める狙いがあります。これはアジアからの博士課程への留学生が主に若手大学教員である一方で、当大学院保健学研究科への留学生数は4名と伸び悩んでいる現況へのテコ入れ(留学推進)の意味合いもあります(なお、2010年の大学間交流協定締結以来、学部レベルの留学生は、総計50名以上と堅調に推移しています)。
本体験型演習プログラムでは、ペラデニヤ大学保健学部の若手教員の専門領域に合致するように、当大学院保健学研究科の検査技術科学、放射線技術科学、看護学分野の最先端研究をテーマとして選定しました。すなわち、超迅速臨床検査法、医学物理士教育、CTを用いたAutopsy Imaging、食支援・スキンケアに関する生体医工学的検証モデルを用いた実技演習、さらには人工知能(Artificial Intelligence)を用いた病理診断の可能性についてミニ講義を実施しました(全て英語で)。何れも博士(後期)課程留学生の受入れが可能な研究室によるものであり、研究交流(留学)の促進を狙いとしています。
特に、POCT(Point-of-Care-Testing)用として、日本のメーカー(パナソニック系PHC社)によって開発された迅速臨床検査機器の体験型演習や日本のArtificial Intelligenceについての講義、医療画像診断技術・CTを用いて死因を究明する、死亡時画像診断(Autopsy Imaging)についての体験型演習が参加者にインパクトを与えた様子でした。
また、新潟大学滞在期間中に、当大学院保健学研究科が主催する、国際シンポジウム(第4回GSH国際シンポジウム)に参加してもらい、保健学研究の最先端を垣間見る機会を提供し、見聞を広めてもらいました。GSHとは、Gender / Generation - Specific / Sensitive - Healthの略称で、当大学院保健学研究科が近年、精力的に取り組んでいる、性別・年代に着眼した、最先端のヒト健康科学・保健学研究領域の一つです。
また、この国際シンポジウムにおいて、引率として来日した保健学部長に、当大学院保健学研究科との国際交流の歴史および将来について、講演していただきました。海外渡航や国際学会参加経験が豊富とはいえない、ペラデニヤ大学保健学部の若手教員らに、国際シンポジウム参加経験を提供できた点も、今回の参加型演習プログラムの意義の一つであったと思われます。来年度以降も、第5回、第6回・・と、GSH国際シンポジウムを継続して盛会に開催できたら、と考えております。
今回、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、新潟大学大学院保健学研究科において、英語による体験型演習プログラムを円滑に実施することができ、学位(博士号)取得に必要な単位を英語で取得できる体制であることを、ペラデニヤ大学側に周知・再認識してもらうことができたと考えております。
また、このプログラムの実施を契機として、新潟大学(大学院保健学研究科)側としても、その体制強化の必要性(例:より多くの教員の英語力・プレゼンテーション能力の向上、文部科学省国費留学生奨学金制度への積極的な応募など)を再認識し、日本とスリランカの保健学研究の将来構想・方向性を考える良い機会となりました。
さくらサイエンスプログラムならびに本体験型演習の実施を支えて下さったプログラム協力者の皆さま方(総勢40名超)に厚く御礼申し上げます。