2019年度 活動レポート 第258号:芝浦工業大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第258号

大連理工大学の研究者5名とのマイクロチャンネル製作と可視化実験

芝浦工業大学工学部機械機能工学科
教授 小野 直樹さんからの報告

2019年11月17日(日)から30日(土)にかけて、大連理工大学のHe教授およびHe教授の研究室のポスドク研究員1名および博士課程の学生3名を招へいし、流れの可視化実験用のマイクロチャンネル製作に関する共同研究を行いました。

研究室のメンバーと共に

He教授と筆者は長年に渡る親交があり、He教授は数年前にも連携研究で筆者の研究室に短期で滞在していただいたことがあります。筆者の研究室には、フォトエッチング法を用いてマイクロチャンネルを製作するプロセスがあり、マイクロ混合技術に関する研究や可視化実験を行ってきました。He教授は動脈瘤での血液の流れなどのバイオ流体の数値シミュレーションやモデル実験を行ってきており、今回は複雑な形状の毛細血管などの流路を共同で製作し、流れの可視化実験を試行するという内容でした。小野の研究室からは、ポスドク研究員1名と大学院生2名、学部4年生1名が対応して共同作業を行いました。

マイクロチャンネルの製作および可視化実験までには多くの作業が必要で、通常下記のような作業の流れになります。
①流路設計→②マスクフィルム作成→③フォトレジストを用いたエッチング法による型の作成→④シリコンゴムによるキャスティング→⑤ガラスへの貼り付けおよび流路ターミナルの付与→⑥流路系および光学系の設置→⑦トレーサーを用いた可視化実験→⑧PIV法(粒子像追跡速度計測法)を用いた流れ解析

マイクロチャンネルの製作風景1

このように多くのステップを踏むため、ゼロからスタートしていては滞在期間の2週間では可視化実験までに到りません。従って来日前から連絡を取り合い、毛細血管を模擬した数種類の流路パターンの図面を送っていただき、マスクフィルムの作成を前倒しで実施しておきました。1週目の半ばから、実際の作業に移り、実験室でのマイクロチャンネルの製作を一緒に行いました。大連理工大学の研究員および学生達は皆大変熱心で、教える立場にある芝浦工大の学生達も感心し、彼らの熱意に引かれる形で連日熱心に共同作業が進んでいきました。

マイクロチャンネルの製作風景2

血液の流れは、赤血球との固液二相流でもあり、大変複雑な様相を示します。しかしその複雑な流れに起因した各種の症例が報告されており解明が急がれます。He教授は流体数値シミュレーションを中心に研究をされていますが、それを補完する意味でもマイクロチャンネルで模擬した毛細血管の実験での可視化研究は重要です。ここに我々の連携の意義があります。2週目からは、いくつか完成した流路を用いての可視化実験に移り、基礎的な可視化に成功しました。今後は連絡を取り合い議論を深める予定です。

可視実験の様子

また大連理工大からは動脈瘤を模擬した樹脂による血管模型を持ち込んでいただき、PIVを用いた三次元的撮影にも挑戦しました。PIVの三次元撮影は、筆者の研究室で今後活用する予定の技術であり、今回このサンプルを用いて試行できたことは、芝浦工大側の撮影技術の向上にも大きく役立てることができました。

このようにお互い得るところが多く、大変有意義な2週間でした。上記以外の他、もちろん週末には東京都内を見学するなど、学生主導での文化交流も深めました。

たこ焼きに挑戦

今後も継続して別プログラムで人的な交流も含めて連携研究を続ける予定です。