2019年度 活動レポート 第254号:宇都宮大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第254号 (Cコース)

インドネシア、モンゴルの学生が木材科学における最新技術を学ぶ

宇都宮大学農学部からの報告

2019年10月13日から22日の10日間、さくらサイエンスプログラムの支援の下、インドネシア・ガジャマダ大学(教員1名、大学院生3名、大学学部生2名)、及びモンゴル・モンゴル科学技術大学(教員1名、大学学部生4名)からの教員・学生計11名を招き、木材科学に関する技術研修を行いました。

前日までの台風19号の襲来により、成田空港への到着便の欠航・遅延が心配されました。モンゴルのグループは予定通り到着したのですが、インドネシアのグループの到着が非常に遅れ、結局、宇都宮–成田空港間を2往復する羽目になりました。

2日目

午前に、オリエンテーションとキャンパスツアーを行い、午後に、日本の森林・林業・木材産業に関する講義を行いました。また、受け入れ研究室の大学院生が、自分の研究に関するプレゼンテーションを行い、各研究に関して、来日参加者との議論を行いました。

3日目

午前に、農学部長を表敬訪問し、その後、キャンパス内にあるバイオサイエンス教育研究センター及び図書館を見学しました。午後には、木材化学及び木材強度・木材組織学に関する実験を行いました。殆どの学部生は、この様な実験を行うのは初めての経験であり、皆、興味深く実験に取り組んでいました。

4日目

朝、宇都宮市から大学のバスで約1時間かけて農学部附属船生演習林へ移動しました。演習林では3日間、農学部森林科学科3年生26名と一緒に、実習を行う事を計画しました。到着後、直ぐに製炭実習に取りかかりました。金属製ストーブ型の小型製炭機をセッティングし、釜内に木材を投入後、着火しました。その後、演習林内の伐採現場の見学を行いました。また夜には、演習林宿舎で製炭に関する講義を行いました。ガジャマダ大学の大学院生1名が、木材の熱分解に関する研究を行っていたため、実習中、非常に熱心に製炭に関する質問をしてきました。

活動レポート写真1
農学部附属船生演習林での製炭実習

5日目

演習林の近くにある栃木県林業センターを訪問しました。ここでは、栃木県の森林・林業・木材産業に関する講義を受け、その後、木材及び木質壁の実大強度試験を行いました。当センターは、関東圏内でも屈指の木材強度試験設備を有しており、日本人学部生を含めて、参加者全員、初めて見る実大強度試験に興味津々でした。一方、強度試験で木材を破壊する際、非常に大きな衝撃音(特に引っ張り試験)が生じるため、殆どの参加者が手で耳を塞ぎながら、試験を観察していました。

活動レポート写真2
実大材強度試験

6日目

午前、隣町の那珂川町にある、シイタケ菌床栽培工場を訪れ、見学しました。当工場を所有する会社は、シイタケ種菌及び菌床栽培資材の販売において、国内有数の会社です。そのため、この工場では、新しい種菌の栽培試験を行うと同時に、市場での販売用のシイタケも栽培しています。ここで、菌床の作製、菌床の滅菌、菌の接種、菌糸蔓延用の培養、子実体発生、きのこの収穫、きのこの品質・等級毎の選抜、出荷用の包装・梱包、菌床の廃棄までの一連の流れを見学しました。
多くの参加者が、非常にシステマティックなシイタケ栽培に興味を示していました。最後に、お土産として、収穫したばかりの生シイタケを全員が頂きました。このシイタケは、その日の演習林宿舎での夕食(焼き肉)の食材となり、皆、おいしいと味に満足していました。

活動レポート写真3
シイタケ菌床栽培工場の見学

午後は、同じ那珂川町にある、プレカット工場を見学しました。この工場は、主に住宅用部材を製造しており、設計図のデータをコンピュータに入力すると、最新鋭の工作機械が自動的に接合部等の非常に多様な加工を行います。留学生は全員、その最新鋭の機械が加工する様子を、興味深く見入って、何枚も写真に撮っていました。

活動レポート写真4
プレカット工場の見学

7日目・8日目

週末には日本の歴史・文化体験をして頂きました。土曜日の午前中は、那珂川町にある広重美術館で浮世絵を鑑賞してもらいました。浮世絵の独特な構図や色彩に、非常に感銘を受けていたようです。また、この美術館の外装及び屋根は、遠赤外線燻煙熱処理を施したスギ材が使われており、その説明も行いました。

その日の午後は、同じ那珂川町にある小砂子焼きの製陶所を訪れました。小砂子焼きは、水戸藩主、徳川斉昭が殖産興業政策として始めたもので、独特の金色を有する味わい深い陶器です。製陶所の若い当主に、一連の製陶の流れを現場で説明して頂きました。特に、釉薬の説明を丁寧にして頂き、参加者は、金色の基となる金結晶釉薬の不思議さ(元の色は金色ではなく赤色)に感銘を受けていました。見学後、小砂子焼きが気に入ったのか、多くの参加者が販売所でたくさんの陶器を購入していました。

日曜日の午前中、世界遺産に登録してある日光東照宮を見学しました。世界的に有名な観光地であり、また、日曜日だったので、早朝にも拘わらず、非常に多くの観光客(日本人、外国人ともに)で溢れていました。迷子が出ないように、気をつけながら付き添って説明を行いました。東照宮の中で特に有名な陽明門は、修復が終了していたので全容を見ることが出来ました。皆、その煌びやかさに魅了されていたようです。

午後は、東照宮の近くにある、日光田母沢御用邸記念公園を訪れました。御用邸は、広大な木造建築物であり、内部も非常に多様な装飾や加工が施されており、参加者は皆、日本の伝統的な木造建築技術の粋を学ぶことが出来ました。

9日目

午後に、ラップアップミーティングを行いました。参加者一人ずつに、今回の研修で一番印象に残ったテーマを一つ選んでもらい、パワーポイントによるプレゼンを行ってもらいました。その後、修了証の授与式を行いました。参加者一人ずつに修了証を渡し、記念写真を撮りましたが、皆、満面の笑顔でした。このことから、今回の研修に参加者全員、満足してくれたものと、受け入れ側として安心致しました。

活動レポート写真5
修了証授与式

最後になりましたが、今回の研修の機会を与えて頂きました、「さくらサイエンスプログラム」に御礼申し上げます。