2019年度活動レポート(一般公募コース)第246号
香川で確立した学際的な生活習慣病の予防・管理戦略を学ぶ
香川大学からの報告
アセアン諸国では生活水準の向上に伴い、生活習慣病、特に糖尿病や肥満の急激な増加が問題となり、その治療・予防・改善の重要性が認識されています。一方、香川では「チーム香川」として地域が連携して、問題解決に早期から熱心に取り組み、顕著な成果を挙げています。こうした香川の成果を広くアセアン諸国に還元するため、2019年12月1日から7日にかけて、タイのチェンマイ大学、カンボジアの健康科学大学、ブルネイのブルネイ・ダルサラーム大学、マレーシアのプトラマレーシア大学、およびベトナムの175軍病院から、若手教員、医師、看護師および大学院生合計10名を招へいし、生活習慣病克服のための研修を実施しました。
1日目
到着後、ホテルにて、和田医学部国際交流委員長が、本プログラムのオリエンテーションを行い、併せて日本留学や日本での研究活動の意義と魅力について講義しました。
2日目
午前中に香川大学医学部において、上田医学部長臨席のもと開講式を挙行しました。引き続き午後には、参加各国の生活習慣病の現状と取り組みを相互に紹介し、論議するカントリーレポートを実施しました。論議は大いに盛り上がり、研修員が結束する絶好の機会となりました。参加各国共通の問題と、各地域の固有の問題の双方について認識することができました。なお、このレポートはビデオ収録されており、本プログラムの講師等の間で共有され、研修内容の最適化に活用されています。
その後、循環器・腎臓・脳卒中内科学の河上助教による、香川における家族性高コレステロール血症のマス・スクリーニングに関する講義を受講しました。本講義に対しては特に研修員の評価が高く、全研修中で最も印象に残った講義であったとの声が寄せられています。
さらに、香川大学内の様々なラボを見学する機会を得ました。希少糖に関連する顕著な成果を挙げている内分泌代謝・先端医療・臨床検査医学講座、多様なシミュレーターやトレーニング設備を擁し香川県の地域医療支援・生涯学習支援事業の一環として県内のメディカルスタッフにも開かれているスキルスラボを見学し、さらに医用化学講座のラボでは栗原助教からバイオマテリアル開発に関する説明を受けました。日本の大学の最新の研究教育現場を実際に訪問することで、日本留学や共同研究への意欲が大いに喚起されたように思います。
その日の夕刻には、丁度同時期に開催されたブルネイ・ダルサラーム大学医学部学生を対象とする冬季医学セミナーとの、合同での歓迎パーティーが開催され、学内の関係者と密に意見交換する機会を持ちました。
3日目
香川大学医学部において、本学衛生学講座の鈴木助教から、日本の生活習慣病の現状と取り組みの概要に関する講義を受けました。さらに、内分泌代謝・先端医療・臨床検査医学講座のLyu博士から、「D-Allulose functions in endocrinology: What we have known?」と題する、最先端研究を紹介する講義を受けました。前日のラボ見学と併せて、香川大学医学部における医学研究の水準の高さを理解頂けたと思います。午後には、本学附属病院医療情報部の横井教授から、「Medical Informatics」と題して、K-MIXに代表される香川が先導する最新の医療情報システムに関する詳細な講義を受けました。
夕方には遠隔医療機器を開発している香川発ベンチャー企業である、メロディインターナショナルを訪問し、胎児心拍モニター等のシステムの概要や今後の事業展開に関する説明を受けるとともに、製造工程を見学しました。
4日目
香川大学幸町北キャンパスに場所を移し、国際戦略・グローバル環境整備担当副学長の德田雅明教授を表敬訪問しました。徳田副学長から香川大学の強みや今後のアジア各国の大学等との連携に関する戦略が紹介され、研修員と論議が展開されました。引き続いて徳田副学長から、「Raresugars, Functional Sweetners Chaning Our Life Style」と題して、希少糖の生理機能と食品等への応用に関する講義を受けました。香川で生まれた希少糖が多様な食品に応用されている状況に皆感銘を受けたようです。
さらに医学部衛生学の宮武准教授から、「Physical Activity and Health」に関する講義を受講しました。その後、希少糖を活用した和菓子を製造・販売している地元の菓子店を訪問し、和菓子を試食した後、香川県予防医学協会を訪問しました。大谷所長から検診の流れと設備の説明を頂きました。大谷所長には事前に予習用資料を提供いただいていたため、研修員は十分理解できたようです。
5日目
バスで広島県に移動し、宮島にて昼食後に原爆ドーム、平和記念公園、広島平和記念資料館を見学しました。研修員は厳粛な気持ちで静かに見学しておりました。
6日目
午前には、医学部長に加えてブルネイからの留学生も交えて成果発表会および修了式を実施しました。参加者それぞれが今回の研修で学んだ内容について発表を行い、特にカントリーレポートで示された個々の達成目標に対して十分な成果を得ることが出来たか、熱心な討論が展開されました。修了式では、研修員全員に医学部長から修了証が手渡されました。
修了式後ではありますが午後に、香川リハビリセンター病院を訪問する機会を得ました。生活習慣病と血管合併症等について河井副院長から講義を受け、さらに理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法師の方々から、それぞれの役目を解説いただきました。さらに機能回復訓練の現場を見学しましたが、研修員の多くは多様な職種間の効率的な連携に驚いていました。
最終日
栗林公園にて昼食を取り、夕方帰国の途につきました。
わずか1週間のプログラムでありましたが、研修員は香川における生活習慣病対策に大きな関心を持ったようです。一部の参加者から、是非香川を再訪してもっと深く学びたいとの声が寄せられています。貴重な機会を与えてくださったさくらサイエンスプログラムに深く感謝致します。